2
やっと手に入った。
素直に嬉しくて何もなかったと思って欲しくない。でも覚えているのかな。
高揚した気持ちと不安で連絡が出来なかった。
突然のハプニングから、
1ヶ月過ぎた頃だろうか。
会う術を作り出し当たり前と感じられる時間が始まる。
「どこまでした?見られてないよね?」
連絡できずにいたら、
彼から連絡が来た。
「見られてないよ、やりすぎたね」
ふざけた内容だ。
「断片的にしか覚えてないけど、現実だよね?」
謝られると思ったけど、そうではない。
「記憶あったんだ。」
「ある。」
この続きは見ていいものなのか、理性を保つ。
「夢だったかもね。」
「じゃあ、夢の続きを見たい。」
これまたふざけた内容だ。
そんな事言われたら、拒否する勇気も理性も私にはなかった。
「今度、作戦会議しよう。」
次会うときが、本当の始まりになるかもしれない。
引き返すことが出来ないかもしれない。
この時は高まった気持ちに吸い込まれるように、あなたとの時間を求め始めていた。
どうか、もう一度と願った。
2人の時間は昼間。
ダラダラと過ごす時間のために、お互い何かを犠牲にしていた、気づかないふりをして。
彼はウチに来る。
いつも缶酎ハイを持って。
隔週の会える日を常に求めていた。
将来の話はしない。する必要がなかったね。
それよりも今一緒にいれる時間が大切だった。
「会っている時は1番好き。」
こんな言葉でも嬉しくて、ただ私は好きとは返さない。
だって、気持ちが止められなくなるから。
認めてしまえば心が崩壊する。
ネトフリ、YouTube、TVer。
お酒を飲みながら。
雰囲気になれば愛を交わし合う。
普通の恋人と同じ、雨の日デート。
私たちはいつも雨。
快晴・曇天も気にしない。真昼間の日差しが差し込む1LDKの部屋で。
雨が終わる日は、来ない。
「俺は、一緒にいるだけでいいよ。」
何度も言ってくれたけど、嬉しさで微笑みながら困り顔だった私の顔が自分でも分かる。
2人が素直にいられたのは、
重なり合っていた時のリズム・言葉・感覚。
絶頂に快楽を感じられた。
この快楽は、離れられない理由のひとつだった。
回数を重なる度に、チューニングが合っていく。あなたを独り占めしている快楽を、ずっと味わっていたかった。
1人になると恋しくて堪らなくなる。
四六時中あなたの温もりを感じていないと、私の存在が消えそうで怖かった。
まだ消さないでと。
「好きって言って。」
無邪気な子供みたいな顔をして、伝えてくる。
愛おしい。
私は心に秘めていたかった気持ち。
だから、言わない。
あなたはいつまでも人間らしい愛情が強い人だった。
辛い気持ちがあなたと過ごす度に、何度も切なさに変わる。隣にいても。
あなたの愛情に触れる度、もっと知りたくて。
全てを独占したくなって。
拒絶もしないで受け入れてくれることも分かってた。
それでも醜い塊になりたくない、
あなたの前では、強くいたかった。どんな扱いをされてもいいから。
楽なやつ、軽いと思われても2人の時間を作ってくれるのなら。
そんな日々は障害が押し寄せても、続いた。
2人が決めていた事。
何も言わなくても2人とも考えていた。
ラインを超えないように、セーブをして完全にハマらないようにする。
それがお互いが求めていた事、
だから綺麗な思い出に出来たのかな。
よく言ってたね。
運命の悪戯だと。オフィシャルじゃないから愛おしさが増して一緒にいたくなると。
「この関係だから、上手く行ってるよ。」
そうだったかもしれない。
「そんな事ないよ。私たちなら大丈夫だよ。」
とは言えなかった、言いたくなかった。
言えるようになったのは、甘い世界の魔法が解け始めた時だったね。
最初から素直に言えていたら、何か変わっていたかな?
そんな事はない。
望んでいないことだから。
皮肉にも、閉ざされた2人の時間で満足していた。
生活の隙間に感じられればそれで良かった。
それが、2人の決め事だったから。
何度も縋りたくて、
同じような曲を何曲聴いたかな。
何の答えなんか出ない。それでも似たような人と想いの内を明かしたように、被害者になれることが出来た。
もっと早く会えたら。
あなたと知り合えたら。
2人の歩幅を合わせられたのかな。
有名な曲。
どうしてコントロール出来ないのだろう。
2人の歩幅は揃っていた。
ただ交わることのない時間軸で。
そう感じている、きっとあなたも。
星のない夜空に願いを込めて。
誰にも言えない思いを乗せて。
毎年会えない織姫と彦星が会う事を願えない曲。
どれだけ願っても、叶えてくれる星がなければ願いは叶わない。
一瞬訪れる流れ星を、願っていたよ。
何かに縋っても、
何も変わらない。
時間と季節が何もしてなくても過ぎていく。
存在が消えていくのも、
あっという間。
2人の時間が続いていくことだけが、たった一つの儚い願いだった。
そう思ってしまうくらい、私の中であなたの存在が大きくなってしまっていることを気づいた。
気づいた時には自分を制御して押し殺して、それでもあなたといたかった。
深愛 @ek_mk
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