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「1番だよ。」

その言葉がずっと欲しかったんだよね。

でもなぜ悲しくて涙が流れるのだろう。

それはきっと、周りから見たら1番ではないから。想いは伝わってる、それでも素直に受け入れない。受け入れたくないだけかもしれない。

一緒にいる時間は2人だけの大切な時間。

誰にも邪魔されたくなかった。

独占。支配。孤独。

全て揃っていたよね。

充実。未来。安心。

これが見えないから怖かったのかな。

ただ時間だけが流れていくほど、想いは強くなる。




近くもなく遠くもなく。

同じ時を過ごしても、これは変わらない。

距離がずれてしまったら、崩壊していたかな。


永遠なんてない。

よく聞く言葉。

本当に納得ができる。

唯一無二の存在だって、時が経って環境が変われば移り変わる。

永遠を求めれば求めるほど、苦しくなるのは自分だと気づいている。

だから、あなたをずっと欲していられたのかもしれない。

その苦しささえも、愛おしさと感じることが出来てしまった。

麻薬と同類の感覚を実感してしまい、お互いに自分を傷つけていたかもね。

明確なスタートがないから、ゴールも見えない。

ゴールがないマラソンは、どこまで走り続けてコースも決められる。

遠まりしたいのなら、寄り道をする。

急ぐのなら、近道を探すまで。

2人は、2人のゴールを作りたかったのかもしれない。

それが可能と、周りが認めてくれるのならば。

それとも、

2人でマラソンを走り続けたかった。

ゴールを決めてしまうと、終わりを受け入れないといけないから。

終わりを決めたくないと思ってしまったことが、蜜のように甘く、針のように尖った時間の始まりだった。


大人になると、子供のように無邪気な大胆さは消えてしまう。

本当にそうだろうか。

消えていくけども、大人には大胆になるための手段は沢山ある。

お酒。タバコ。薬物。男。女。ギャンブル。

2人とも、大人だから大胆になるためにお酒に頼って愛を求めた。

きっかけは、よくあるお酒の席。

強いお酒を大勢で飲み明かす。

周りに目を配りスリルある中で、

一瞬で、2人の世界を作ってしまった。

曖昧な記憶と確かな感覚。


夢の続きを見たくて、見てしまったら夢の中から覚める事が出来なくなると気づいていたの。


出会った時から、

手に入れたい存在で近くにいながら想いを見せずに隠して接してきた。

周りが飲んで潰れて笑って歌って。

騒がしい飲み会。

あぁ、酔っ払ったなぁ。ふとあなたを見ると近づきたくなる。でも駄目と分かってるから、隣にいるだけ。手に届く距離なのに。

お酒飲んでふわふわして、トイレに駆け寄った。頭は相変わらずふわふわして、いい気分。

学生の頃はよくこういうタイミングで、誰かがイチャつき始める。大人数だと抜け駆けする2人が出てくるのも分かる。だって欲に負けるガソリンが入ってるから。

スッと出てきて、一緒に飲み会にいた女の子と裏のキッチンカウンター越しで会話した。

「大丈夫?やばいよねー」何気ない会話も楽しくて笑える。

トイレの前のカーテンを潜って先に戻ろうとした時に、現れた。

(あっ、ナイス。)心で何となく思った。

でも2人じゃないし何もできないかぁ。

欲に負けそう。

すれ違いの時に体触れる。

酔っ払ってテンション高い彼。

きっと覚えてないから、後ろから触れてみる。

トイレ側を向きながら、ふざけてお尻を当ててくる。その絡みにぎゅっと後ろから答えた。

テンション高いながらも男の顔をした彼が振り向き、あっという間に流された。

気づいたら、濃厚に唇を交わしていた。

我慢して欲しかった温もりを感じた。

カウンター越しにいる女の子からは見えてない。やばい、見られたら飲み会が中断しちゃう。濃厚なひとときを断ち切ってみんなの元に戻る。

やっと触れられた。場の楽しさに流されながら自然と笑みが溢れるが、バレないように馴染む。まぁきっと覚えてないだろう、と少し安堵していた。


彼が戻ってきてから、2人の世界を続けようとする。

今宵のターゲットになったのか、嬉しいような複雑な気持ち。いや、その時は嬉しくてたまらなかった。

場を2つに分裂しながら続きを作り出そうとしてくれた。

小人数でソファに倒れ込みながら戯れる。

そのワンシーン、ワンシーンでもう一度唇を交わした。周りに見られないように目を盗みながら。

お酒の場を良いことに、わちゃわちゃとソファに寝転ぶ子たちの隣で、2人の世界はエスカレートする。接吻から下へと要望がくる。

薄暗く誤魔化せる雰囲気に負け、その要望に応えてしまう私。

あぁ、スリルを感じて高揚してる自分が止められない。

ソファの上に乗っている人たちと交代し、あなたと私が横たわる。

他の女の子が、邪魔に入りながらも横に倒された私は、そのままあなたがまた上にのしかかるのを、陽気なフリをして待つ。

始まりそうな、ここでは唇を重ねてお互いに触りあい、快感を得そうなところで終わった。


そろそろ、あなたの門限の時間。

あなたは潰れたフリで私を呼び戻そうとするけれど、踏み込みすぎる訳にはいかない。

だから、あなたを置いて周りと帰路に着く。

タクシーに乗り家に向かっていると、

「戻ってきて。」

一言だけ通知が来る。

今すぐに戻りたい。

もっと濃厚に重なり合いたい。

そこに踏み込む事が出来ず、そのまま帰宅した。

惜しいなあ。

ただ門限を破った後に恐れる事が多く冷静に、満たされながらタクシーから降りずに余韻に浸った。

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深愛 @ek_mk

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