第一話:魔法使いと春風の聖霊 ③

◆明るい夜と謎のアプリ①◆

 智也は、リビングのソファーに座りまったりとくつろいでいた。

 学校の宿題、夕食、そして入浴も済ませている。

「はぁ~さっぱりした」

 テレビを見るか動画を見るかと考えていると、テーブルの上に置いていたスマホから通知音が流れた。

「誰からだろう?」

 スマホを手に取り画面を点けると、メッセージアプリに暁から連絡が入っていた。 

「暁からだ」

 見るとそこには驚きの画像と内容が書かれていた。

 >見てくれ!

 >超常事件が発生したぞ!

 >公園に行ったら遊具が曲がってた!

 暁から送られてきた画像は、ぐにゃりとねじ曲げられた公園の遊具が映っていた。

「わっ、またか……」

 智也はため息をつきながら、画像を見ていた。

 智也が「また」と言うように、ここ最近おかしな事件が頻発している。

 あまりにも不可解なそれは【超常事件】と呼ばれている。

 例えば電柱の上に立派なリンゴの木が生えたり、スーパーの商品が勝手に浮いたり動きだしたり、道路標識や公園の遊具がねじ曲げられたり。

 どれもこれも人間の力では不可能とされる現象ばかりで、しかも智也が暮らす【新都心:喜志間ニュータウン】とその周辺でしか発生していない。

 SNSでもその様子の画像がツイートされる度にバズり、この現象はすっかり全国区になっている。

 智也は画像を拡大してじっくりと見つめた。

 公園の遊具がまるで巨大な手でねじ曲げられたかのように歪んでいる。

 その光景は、明らかに人間の力では説明できないものだった。

 誰が見ても【超常事件】としか思えない光景だった。

(どうしてこんなことが……一体何が原因なんだろう?)

 智也が考え込んでいると突然、外が明るくなった。

「え?」

 智也は驚いて立ち上がり、急いでベランダに出た。

「何が起こってるんだ……?」

 オフィス街の方向からまばゆい強い光が放射されている。

 夜なのに、その光はまるで昼間の太陽のように周囲を照らし出していた。

 智也は呆然とその光景を見つめた。

「何だよアレ……」

 光は徐々に収束していき、再び夜の静寂が戻ってきた。

 突然の出来事に智也と同じように外に出ていた近所の住民たちも、近所迷惑にならないように小さな声で何事だったのかと話しはじめていた。

「一体、何だったんだろう」

 智也は何が起こったのか理解できず、ただその場に立ち尽くしていた。

 


 智也は自室のベッドで横になっていた。

 ゴロゴロしながら考えいるのはあの光のことだ。

 つい先ほどまで暁と通話アプリでそのことを話をしていた。

(あの光も【超常事件】の一つなのかな……?) 

 そんなことを考えているうちに、時間が経ってきて智也は段々眠気を感じ始めた。

 あくびも出てきて、まぶたも重くこれ以上持ち上げ続けるのは難しい。

「もう遅いし、寝るか……」

 智也は部屋の電気を消すとゆっくりとまぶたを落とし、深い眠りに落ちた。


 深夜二時を過ぎた頃。

 智也のスマートフォンの画面が突然光り出した。

 その光で智也は起きることはない。

 深い眠りについている。


 ヴォン

 

 スマホが低音を発し、次の瞬間、謎のアプリがインストールされた。

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