第13話 勇者パーティー……あれ?
マジか……マジか。
ベルファーの奴、まさか遺体を消すなんて。
俺はイライラしてしまうも、そんなこと、勇者パーティーには通用しない。
「なに叫んでるんだよ! ついにおかしくなったのか?」
「おかしくなりそうなのはこっちだよ」
「……なんか大変そうだけど、死ねっ!」
「死んでたまるか」
ユキムラは気にせず剣を叩き付けて来た。
完全に俺を殺しに来ている。
流石に冗談じゃない。こうなった以上、こっちも自棄だ。
「な、なにっ!?」
「さっきも使った盾だろ」
俺は
正直、勇者? かどうかは一旦置いておき、ユキムラの剣は盾座の力で防げる。
つまり、ユキムラの通常攻撃は、俺に通用しない。これは圧倒的に俺の優勢だ。
「糞っ! おい、ゴライアス。お前も手伝えよ」
「しゃあねぇな。止めて置けよ、
ゴライアスはユキムラに構わず突っ込んでくる。
仰々しい技だが、一体何をしてくるんだろう?
両拳を縦にして、クワガタみたいに突き進んできたが、まあ、避けられなくはない。
「喰らいたくないな……ちょっと退けてくれるか?」
「はっ、退ける訳ないだろ!」
「ユキムラだっけ? お前、死ぬ気なのか?」
「魔王を殺すためだ。それくらいの覚悟……」
「バカか!
あまりにもバカ過ぎる。魔王を殺すために、自分の命を犠牲にするなんて、流石に狂っていた。
そこまでして魔王は倒さないとダメなのか? 正直、俺には分からない。
呆れてしまいそうな程真っ直ぐな勇者道に、俺は楯突いた。
手のひらをかざして魔法を唱える。
とりあえず、当たり障りのない定番技をドンドン使う。
そう、例えるなら、焼き肉に行って最初にタン塩を頼むように。
「な、なんだ。あ、熱っ! 熱い、うわぁぁぁぁぁ」
「ゆ、ユキムラ!? ぐへっ」
俺の手から出て来たのは、メチャクチャ熱そうな炎の塊。
ど定番の火炎攻撃を試してみると、意外にも効いた。
特にユキムラは直火で炙られたので、あまりの熱さに腕に酷い火傷痕ができ、突っ込んできていたゴライアスにもたれかかりながら転げて落ちた。ゴライアスは可哀そうに、せっかくの巨体とパワーがまるで活かされない。
「あ、熱い!」
「主よ、我が祈り捧げ、聖なる光でかの者を癒したまえ—
転げ回っていたユキムラだったが、後衛の女神官の手により、回復魔法をかけて貰う。
一瞬で最適な魔法を判断すると、ユキムラとゴライアスを癒す。
淡い光が注がれると、怪我も火傷も全部治ってしまった。
「ま、マジか……」
「助かったぜ、ミュシェル。よし、フュルレ。最高火力の魔法で、魔王を焼き払ってくれ!」
「仕方ないわね。そう言うこと、もっと早く言いなさいよー」
「悪かったよ。ゴライアス、俺と一緒に時間を稼ぐぞ!」
「しゃあねぇな。今度は合わせるぞ!」
「任せてくれって。
急に動きが良くなった。ミュシェルと呼ばれた女神官が最適な動きをしたせいか、それが潤滑油になっている。
パーティーとしての連携が、一段とまとまりを見せると、俺に再び攻撃を仕掛ける。
「水の刃? しかも射程距離が伸びてるのか」
ユキムラの手にした剣に、冷たい水が纏わり付く。
剣身自体に魔法をかけたらしく、並々と溢れ出ている。
これが冬水の一閃。大したこと無い魔法だと油断したが、全然違う。
剣が水のせいで伸びていて、射程距離が広がっている。
「くっ、盾座の……」
「そう何度も同じ魔法が通用すると思うな!」
今度はゴライアスが踏み込んできた。
攻撃を防ごうとする俺の動作にドンピシャで合わせる。
懐に飛び込まれると、ナイフのように鋭い拳が飛んで来た。
流石に避けないとマズい。
俺は無理な体勢で攻撃を躱そうとするも、目の前からユキムラとゴライアスがほくそ笑んだ表情で射線から外れた。
(なんのつもりだ? いや、まさか!)
頭の中で、点と点が繋がった。
忘れてはいけなかったのだ、ユキムラとゴライアスはあくまでも時間稼ぎ。
後ろでスタンバイしている魔法使いのフュルレが放つ大魔法が解放された。
「全員下がって、バーニング・デストロイ!」
ユキムラとゴライアスが俺の前から消えた。
直後、視力を簡単に奪ってしまいそうな程、眩しい光が俺を襲う。
「うっ、これは……」
声も出せなくなるほどの熱だ。
宣言通り、俺のことを焼き尽くそうという気満々らしく、全身を覆い尽くす程の炎が襲い掛かる。
もちろん避けられる訳もない。
範囲も広く、簡単に炎の罠に包み込まれてしまうと、俺は蒸される肉まんのように逃げ場を失ってしまった。
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