2-5 同接の力!

ホフゴブリンは少女へと狙いを定め、その筋肉質な腕で棍棒を振り下ろさんと迫っていた。


「はっ……はぁっ……」


 ルナはボロボロだ。

 先ほど木に叩きつけられた衝撃で、身体中が悲鳴を上げている。

 それでも、配信中なら力が湧くはずだと信じ、必死に少女を庇おうと前へ出る。


「絶対に……通しませんにゃ……!」


 少女は涙目で震えながら、か細い声で叫ぶ。


「もういいです!私を置いて逃げて……!」


 だが、ルナは首を振る。


「みにゃさんが見てくれてる限り、私が負けるわけにはいかないですにゃ!」


 コメント欄が慌ただしく動き出す。


にゃん民: ルナちゃん頑張れ!

にゃん民: 今拡散してきたぞ!もっと人が来るはず

にゃん民: ヘイト派も巻き込んで同接増えれば何とかなる!


新規にゃん民: お?噂の異世界配信ってこれか?

新規にゃん民: どれ、見に来てやったぞ

新規にゃん民: ほんとに強さ上がるのか試してやるわ


 徐々に視聴者数が増え、ルナのステータスを支える同接補正が上がっていく。


 100、150、200……

 画面隅の同接カウンターが増え続ける。


「……何だろう、さっきよりホフゴブリンの攻撃が軽く感じますにゃ」


 ルナはかすかに手応えを感じていた。

 同接が増えるほど、彼女の攻撃力と防御力が底上げされる。

 先ほどは歯が立たなかったホフゴブリンも、今なら少しは対抗できるかもしれない。


 そして、ついに同接が300を超えた瞬間、VTubeスタジオから通知が響く。


「……ん?通知が来ましたにゃ……?」


 目の前にウィンドウが浮かび上がる。


---------------------


【スキル解放!】


同接300到達により、新スキル『にゃんこ百烈掌』が使用可能になりました。


---------------------


「にゃんこ百烈掌……!?」


 コメント欄が大興奮で沸き立つ。


にゃん民: 来た来た新スキル!

にゃん民: にゃんこ百烈掌とか胸アツ!

にゃん民: それでぶっ飛ばせ!


「はい、みにゃさん!いきますにゃ!」


 ルナは息を整え、両手を構える。

 拳に力を込めると、淡い光が無数の残像となり、手元で踊り始める。


「にゃんこ百烈掌、発動にゃっ!」


 矢継ぎ早に繰り出される拳の雨が、ホフゴブリンを一気に包み込む。

 無数の打撃が衝撃波となって相手を揺らし、苦痛の唸り声が森中に響く。


「はぁああっ!」


 ルナが最後の一撃を叩き込むと、ホフゴブリンは宙に浮き、ドサリと地面に倒れ込む。


 魔物は霧散し、その場には大きめの魔石が落ちている。


「魔石(大)を手に入れましたにゃ!」


にゃん民: やったあああ!

にゃん民: スゴい、ホフゴブリン倒した!

にゃん民: 同接パワー最高!ルナちゃんナイス!


 ルナは魔石を握りしめ、少女を振り返る。


「大丈夫ですかにゃ?もう安心ですにゃ!」


 少女は呆然としながらも、ルナの姿に感謝の笑みを浮かべる。

 にゃん民たちの声援と、魔石という戦利品が、ルナに確かな達成感を与えた。


「みにゃさん、ありがとう……みんながいてくれたから、勝てましたにゃ!」

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