呂布カルマのツイート
あるラッパーが、どこかにあるピンク色に塗られ美少女キャラクターの絵が描いてある駅の写真と共に「何だこの駅…気持ちわりぃ…」というツイートをして炎上していた。
発言したのはラッパーの『呂布カルマ』という方だ。最近、色んな番組だったりメディアに出てるからたまに目にする。タレントとラッパーを兼業してるのかな。
まぁ、正直言いたいことは分からんでもない。駅とか公共施設とかに萌え絵のパネルが置かれたり描かれたりしているのを見ると「気持ち悪いかもなあ」と思う時がある。「気持ち悪いかもなあ」と思うと同時に、「そんなことしていいの?」という疑問も浮かぶ。
だからこの呂布カルマさんのツイートに対して、俺は賛同はしないけれど不快感も覚えない。
でも、この炎上全体に対しては「間違っているなぁ」と思う。炎上してからの呂布カルマさんの発言だったり、呂布カルマさんに意見する人の発言だったり、この一連の流れ全てにそう思う。
俺は、誰が何を思っていても自由だと思う。SNS上でそれを発言するのもある程度自由だと思う。もちろん明らかに他人を攻撃するような発言は御法度だけど、「○○に対してこう思う・こう感じる」とか「○○に賛成・反対」と発言することは自由だ。
言うなれば、それはエモだ。「ある物・人物に対して私の心はこんな風に動きました(エモーショナル)」ということを発言する場こそがSNSだと思う。
なので、呂布カルマさんが「何だこの駅…気持ちわりぃ…」という発言したことに関しては別に何の問題もない。ただ、この発言はただのエモーショナルであり、批判でも、ましてや批評でも無いという事を誰も分かっていないと思う。
エモーショナルに理屈など無い。論理も無い。それらが無いからこそエモーショナルだ。しかし、呂布カルマさんに返信している人たちはそこに『理屈・論理』というものを求めてしまった。そして、呂布カルマさんもまるで自分の発言に『理屈・論理』があるかのように振舞った。これが間違いだと思う。
みんなは呂布カルマさんに対して、「あなたは○○という点で間違っている」「あなたは過去にこういうことをやっていたじゃないか」といったことを言う。それに対して呂布カルマさんは色々と反論することで議論が始まっている。
しかし、この議論に終わりはない。何故ならどちらも理屈や論理を持ち合わせていないからだ。「○○が好き・○○が嫌い」という感性には理屈なんてない。俺はセロリが嫌いだし犬が好きだ。そこに理屈は無い。「犬が好きだ」という俺に対して「いや、あなたは犬が好きではない。議論をしましょう」なんて言ってくる人はいない。何故なら「犬が好き」というのはただのエモであって理屈がないから。理屈が無いところには議論は発生しない。
だが、「気持ちが悪い」というエモに対してみんなは理屈を求め、呂布カルマさんはまるで理屈があるかのように振舞っているから何故か議論が行われている。
全てが間違っているな、と思う。
ただ、俺が思うにエモと理屈・論理の関係性には例外がある。それは『ある程度専門性を持った人物が同じコミュニティに属す人たちを評価する場合』だ。
呂布カルマさんはラッパーなので、HIPHOPの世界にいる。ラッパーである呂布カルマさんが他のラッパーに対して、「あなたはHIPHOPではない」というのは成立すると思う。この場合、「HIPHOPじゃない」というのは呂布カルマさんのただの心の動き(エモ)であるわけだが、呂布カルマさんはHIPHOPに関してはある程度の専門性と実力を有しているので、この評価は成立すると思う。エモを発端とする「HIPHOPじゃない」という発言にもある程度の理屈・論理が生まれているわけだ。
俺が好きなレゲエの世界でも「お前はラガじゃない」というような言い回しがある。意味は違えど、意図としては「HIPHOPじゃない」と同じようなものだ。他にも小説の世界だったら例えば「この作品は純文学じゃない」というような評価もある。こういった評価はエモであると同時に理屈や論理を持ち合わせている。例外的なエモによる評価だ。
呂布カルマさんがアニメや駅、観光に関してある程度の専門性を有しているのであれば今回の「何だこの駅…気持ちわりぃ…」という発言にも理屈や論理が生まれただろうけど、呂布カルマさんはただのラッパーだ。この発言に理屈や論理がある筈がない。
そういうわけで、理屈も論理も無いただのエモによる発言に本来生まれるはずがない議論や理屈を持った返信が生まれてしまっていることに対して、
俺は「間違っているなぁ」と思う。
日々思ったことを不定期にまとめるエッセイ 藻野菜 @moyasai
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