極上の声

第1話

「はぁ……」



日本でも有数のオフィス街の一角。



某大手文房具メーカーの経理部デスクにて、小野寺 夢は本日何度目かの溜め息をついた。



(またダメだった……)



まさに昨日、一ヶ月付き合った彼氏と別れたばかりなのだ。別れた、というより、フラれた。



ー夢は…さ、本当に俺のこと好きなの?正直、一緒にいても楽しそうに見えないよ……



とても優しくて魅力的な人だった。人間的にも尊敬できる男性だった。



それだけに、28歳女子のコンプレックスの核を突く言葉は深く刺さって、傷を作る。



この年になると結婚を意識しない訳ではない。それは夢も例外ではなく、順調に交際が続けばいつか…と多少の焦りのような気持ちもあった。

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