君によく似た女性

Wildvogel

第一話 雨が降りしきる街で

まないな……」 



 六月のとある土曜日、雨が降りしきる天候の下、僕は傘を差し、街を歩いていた。


 どこまで行こうか、と考えながら歩を進める。


 しばらくし、目の前に信号機が。丁度赤信号に切り替わるところだった。僕は横断歩道の前で歩を止め、信号が変わるのを待つ。


 二分後、信号が青に。僕は水たまりを避けながら横断歩道を渡る。点滅する前に渡り切りると、僕は道なりを左へと進む。


 すると。



「あれ……」



 僕はそう言葉を漏らし、足を止める。僕の視線の先に映ったのは、水色の傘を差す一人の女性。

 


「あの女性ひと……」



 車のタイヤが水たまりを踏む。それからすぐ、僕の頭の中に一人の女性の顔が浮かぶ。



「あの子に……」



 僕の目に映る女性は正面を見据え、歩を進める。



「よく似てる……」



 その言葉と同時に、僕の横を通り過ぎる。こちらへ視線を向けることなく、正面を見据えたまま。そして道なりを進み、その姿は見えなくなった。


 僕は女性が通り過ぎたカフェの看板を見つめる。



「本人なのかな……それとも……」



 その言葉からすぐ、雨脚がやや強まる。僕の耳には車のタイヤが水たまりを踏む音と傘の小間こまを叩く音が。


 それらは一体、何を示しているのだろう。

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