第8話
真夜の大陸にある、ヴァルの居城。
体を引きずるようにして戻って来た彼は、自室のベッドに体を投げ出した。
無茶な方法で【眠りましょう】の睡眠毒を中和した反動で、体調は最悪。
加えて【流れる星の光】による傷は深く、オマケに【閃雷】のダメージも残っている。
絵に描いたような満身創痍だが、それでも彼は生きて帰った。
悔しさと苦しさを噛み締めながら、ヴァルが回復に努めていると――
『手酷くやられたようだな』
備え付けられた鏡から聞こえたのは、リーダー格であるユーノの声。
正直なところ、今は少しでも休みたいヴァルだったが、弱みを見せたくないプライドが体を起こす。
「別に、この程度どうってことねぇよ」
『それだけ強がれるなら、心配はいらなさそうだな』
「うるせぇ。 そんで? 用件は何だ? まさか、本当に俺様の心配をしてた訳じゃねぇだろ?」
『いや、それも嘘ではないが。 確かに、本題は別にある』
「そうかよ。 じゃあ、サッサと言え」
酷い頭痛と吐き気、体中の痛みを押し殺して先を促すヴァル。
彼が無理していると察したユーノは、望み通り手早く済ませることにした。
『例の計画を実行に移す』
「……! やっぱり、それしかねぇのかよ……」
『あぁ、魔王様の為には手段を選んでられんからな』
「くそッ! 俺様がしくじらなけりゃ……」
『自分を責めるな、切り替えろ。 お前のお陰で、イレギュラーの新たな手札も判明したことだしな』
「イレギュラーの?」
『そうだ。 もっとも……奴と正面からやり合うのが危険だと、改めて思わされた訳だが』
「……詳しく教えろ」
『無論だ』
その後、ユーノから話を聞いたヴァルは声を失った。
はっきり言って、でたらめ過ぎる。
だが、ユーノが嘘を言っているのではないとわかっている彼は、自分を落ち着けるように深呼吸して言い放った。
「なりふり構っていられねぇな」
『同感だ。 最早、奴は我らから見ても化物。 まともに相手にするべきではない』
「だな。 それでも『輝光』さえ殺せりゃ、俺様たちにも充分可能性はあるぜ」
『あぁ。 今後はこれまで以上に慎重に、それでいて動くときは大胆に行くぞ。 その為にも、今は体を休めろ』
「……わかったよ。 じゃあな」
ユーノに自分の状態が筒抜けだと悟ったヴァルは、素直に答えて通信を切った。
新しくわかった、シオンの能力。
それは強大な力を持つ『魔十字将』ですら、畏怖するもの。
しかし、彼らは諦めない。
その身は既に、魔王に捧げているのだから。
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