第23話

「あ、おかえり!萌!爽くん!」


「萌ちゃーん!爽ー」



私たちの母親が昇降口奥の木の下にいたようだ。



「お疲れ様〜」


「うん」


「ただいま」



爽だかは怒らせたくないのに、どうしよう。絶対によくない選択をしてしまった気がする。


私が今からできることなんてそうそうないよ…。


はぁ、どうしよう。本当にどうしよう。



「萌?」


「…あっ。なに?」


「なに考え事してたの?」


「い、いや、なんでもない」



爽に話しかけられていたことに全く気が付かなかった。


そして今は母親たちは喋ることに集中していて、私たちのことは眼中になさそうだ。



「なに、考えたの?」


「いや…その」


「その?」


「えっと…」


「…」


「…」


「…母さん。車の鍵貸して。荷物重いから」


「あ、はーい。これね」


「萌もはい」


「あ…うん。ありがと」


「行くよ」



そう言って握られた手首。


痛くはないけど、逃げ出せそうにない。

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