第16話

ちなみにだが、多一の将来の夢とされているのは、今、香が職にしているもの。


香の選んだ道が間違っていたとは言わないし、思わない。だけれど、なんで、

多一はその職に就きたいのか。わからない。



「ねぇ、多一」



私は朝食をとり終わった多一に話しかけた。



「なあに?母さん」


「多一は、なんであの職に就きたいの?」


「僕は、父さんのように守りたいものを守れるようになりたいんだ」


「守りたい、もの」


「うん、そう。守りたいもの」


「好きな子でもできた?」


「まさか、そんなわけないじゃん。僕は、父さんのように、母さんを守りたい」


「えっ?でも、私は」


「知ってる。父さんを愛してる。僕のことは子として愛してる。そうだよね?」


「う、うん」


「それでもいい。それでも僕は2番でいられてる。僕はそのポジションを保っていたいんだ。それに好きな異性なんていないんだ」


「そう、なの」


「うん。だから見ててよ。僕のこと」


「、、、応援してる」


「ありがとう、母さん」

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