来客者

第7話

「ちょっと恵梨〜」


「もーなに、お母さん」


「あんたにお客さん来てるわよ」


「今行くから大きな声出さないでよ」



一体誰なの。今はもう夕方の5時だってのに。



「はい。どちら様ですか」


扉を開けると同じ学校に通う男子生徒がいた。


「こんばんは」


「あ、こんばんはって松崎くん。どうしたの?」


「勉強を教えて、ください」


「え!?勉強!?」


「うん。勉強」


「どうしたの?いきなり」


「俺、文章問題がほんとにダメなんだよ。ほんとに」


2度言ってくるのだから相当なのだろうと思う。



「お家の人は大丈夫なの?」


「あ、うん。親はほとんど仕事で帰らないんだよね。それに今日は帰っても来ない日だから」


「そっか。じゃあどうぞ入って」


「ほんとに押しかけてごめん」


「いーよ、さ、入ってよ」


松崎衣千夜{まつざきいちや)は、私とは中学で知り合った。彼も私と同じ高校へ行くと知った時は驚いたことを覚えている。まぁ彼は音楽のことを学びながらマネージャ的存在になるためにも勉強したいらしい。普通科ではないあの高校は学びたいことを深く学べるので意外と人気だったりする。



「おかあさーん。衣千夜来たよ〜」


「あら!衣千夜くん!いらっしゃい!今日もご両親いないの?」


「はい。すみません。夜に押しかけてしまって」


「いーのよ、衣千夜くんだもの。さ、まずは夕飯でも食べなさい?用はその後に2人で済ませればいいわよ。それに今日は泊まって行くといいわ」


「え、いいんですか」


「いいわよ、遠慮せずゆっくりしていってね」


「ほ、ほんとにありがとうございます!」


「それじゃあ荷物でも置いてきてからもう一度きなさいね」


「はーい、行こ」


「うん」

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