第9話

そして鞄は呆気なく地面に落とされ、私の両手は簡単にからの片手に収まってしまった。



「先輩、僕のこと、ナメてるんですか?僕の思いが、そんなに軽いものだと思ったら大間違いですよ。今日は抱いたりしないけど、そんな馬鹿なこと言うなら、少し行動に移してあげますよ」



と言えば、もう片方の手で私の制服を肩から少しずらして、見えるか見えないかのギリギリのところに唇を近づけたと思えば、私の知らない痛みが走った。



「っ!?」



私の悲鳴は声にもならないようだった。


そうして私の身体には彼からつけられた赤い痕。



「いいですか?先輩。僕、惚れたら、大変ですからね?覚悟しておいた方がいいですよ。男と喋ってみてください。そいつ、消しますから」



なんて恐ろしいことを言えば、鞄を拾い上げ、私をまた引き始めた。

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