この時代に生まれた小説家、について
鈴村ルカ
処方箋①~この世に小説なんて必要ない
この世に小説なんて必要ない。
こんなことを言えば、多くの人が反感を覚えるだろう。少数の人は「なるほど、たしかにそうかもな」と口では言うかもしれないが、心の底ではまったく納得していないだろう。
だから、そもそも、の話をさせてもらう。
今のこの世の中、娯楽が溢れかえっている。
スマホを開けば、YouTube、インスタグラム、TikTok。
テレビを点けたら、ネットフリックスなどのサブスク。
電子媒体以外なら、格安航空券などの普及もあって、旅行やバカンスなど。
スポーツの種類だって増えた。野球やサッカー以外にも、様々なものがある。
他にも色んな娯楽はあるが、まあ、この辺にしておこう。
それで、だ。
こんな情報過多、コンテンツ飽和の時代に、小説なんて読まれると思うか?
たしかに小説は素晴らしい。俺だって小説が大好きだ。
学生の頃も、同級生がソーシャルゲームをずっとポチポチしているかたわらで、俺はシャーロックホームズの冒険を読んだり、司馬遼太郎の時代小説を読んだり、スマホでも異世界転生ジャンルの小説を読んだりしていた。
多分、生まれ変わっても、俺は小説を読んだり書いたりしていると思う。
けど、冷静になって考えてみれば。
もう、小説に「役目」なんてないんだ。
もう、この時代は無限に暇つぶしできるから。
もう、文章なんて目で追いかけなくても手軽にコンテンツが手に入るから。
もう、他のコンテンツで充分に感動することができるから。
そんなことを言ったら、終わりじゃないか!
投げやりでクソみたいなニヒリズムをぶつけるなよ!
自分の作品が売れないから、いじけてるだけだろ!
と、罵声をぶつけたい方はいるだろう。
違う、これはもっと根源的な話だ。
俺は、小説の立場が「変わった」と思っているんだ。
芥川賞や直木賞を受賞する作品はたしかに素晴らしいが、それで娯楽の天下を取って、人気者になって、夢が叶う……という時代は遠い昔なんだ。
誤解を恐れずに言うなら、今のコンテンツ飽和の時代に、芥川龍之介や太宰治などが生まれたとしても、きっと誰もが知る「文豪」にはなれなかっただろう。
優秀な一人の作家というレベルで終わるか、それとも、もっと手前で筆を負って、自殺しているだろう(服毒か入水か、それはこの際置いておく)。
その前提に立って考えると、
「まず自分は、何を書きたいのか」
もっと言えば、
「まず自分は、本当に小説を書きたいのか」
と、自分に問いかけて、答えを出した方が良い。
その答えがなければ、きっと俺のように何も目的意識を見出せず、何作品も筆を負って、何年もの時間を無駄にしてしまうことになる。
そしてついには、自分がわからなくなってしまう。
そんな、以前の俺のように、ならないでほしいんだ。
俺(あなた)は、本当に、何がしたいのか?
人気者になれなくても、
作品に対する賞賛がもらえなくても、
金がもらえなくても、
PVがまったく伸びなくても、
それでも。
それでも、自分はこれを創りたい。
無条件に「書きたい」と思える。
だったらやるべきだ。書くべきだ。
それが正解だ。あなた(俺)が正しいと思うことなら、やるべきだ。
あなたが小説を書くことを、世界中のどんな人間も、止めることはできない。
家族や配偶者も、親友も、アンチも、総理大臣も大統領も、悪の組織も。
周りの人間には、あなたを止められない。
途中で止めてしまうのは、いつだってあなた自身だ。
もし今後、また心が折れそうになったら、
いつでも、このページを読みに来てくれ。
劇薬として、小説家のあなたを奮い立たせるか。
それとも。
毒薬として、小説家のあなたを殺すか。
どちらかだ。
鈴村ルカ
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