第4話 席替え!

「それじゃ、席替えを始めるぞー。」


担任の高田が、一限の開始と同時にそう言うと、みんなの目の色が変わった。


「今回は、平田の意見を採用してくじ引きでやっていこうと思うが、異論はないよな?あってもめんどくさいからそのままくじ引きで押し通すけど。」


それ聞く意味ないじゃねーか!クラスのみんなの意見が一致した瞬間であった。


「それで、肝心のくじを引く順番についてだが、今回は平田の方からアイデアをもらっていてな、それを採用することにした。あとの説明は任せるわ、じゃあ俺は職員室戻ってるから…」


高田はそう言うと、そのまま教室のドアを開けて職員室へと戻っていった。


「…こほん、それでは気を取り直して、ボクの方から今回の順番についての説明をさせてもらうよ。今回は、出席番号が最初の人と最後の人にじゃんけんしてもらって、勝った方の番号から順番にくじを引きに来てもらうよ。文句はない?」


怜がそう聞くと、クラスの方からは

「その方法なら変に揉めることもないから問題ないかなー」

「あなた、絶対に勝ちなさいよ!?負けたら私が怜様の隣に座れる可能性が減るんですからね!?」

「いやー、俺責任重大だなあ…」

などの声が聞こえてきたが、概ね問題なさそうだ。


「よし、大丈夫そうだね。それじゃあじゃんけんで決めてねー、せーの!」

「「じゃんけん、ポン!」」


「じゃんけんの結果として、今回は出席番号が早い人から引くことになったよ。じゃあ、引きに来てねー」

「ちなみに、ボクは最後に残った一枚を貰うことになってるから、そこはよろしくね。」

最初はどうなることかと思っていたくじ引きだが、思っていたよりもあっさりと全員引き終わった。


「じゃあみんな引き終わったし移動してー」


ガチャガチャガチャガチャ…


「はい、じゃあ今回の席替えは終わりねー、次回は来月やるから、他の方法がいいって言う人は遠慮せずにボクに言ってねー!」

そう〆ると、怜は自分の新しい席に戻っていった…私の斜め後ろの席へと。


「なんであの男と席が近いんだよー…」

「愛しの怜様を後ろから眺めることが出来ますわ…!」

「いやー、席遠いから宿題とか見せてもらいにくいじゃないかあ!」

「あの男…ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ」


くじ引きの結果だから本当にたまたまなのだが、怜と私の席が近いせいで、何故か一部のヘイトが元より仲が良かった私へと降り注いでいる…理不尽だ!


「おや、亜鈴席近くになったね、よろしく!」

「こっちこそよろしくねー。ところで…私に何故かヘイト向いてるんだけどなんとかならない…?」

「アハハ…頑張って!」

「にゃあ…」


私と怜が席で雑談をしていると、同じく怜と私の席の近くになった女の子が声をかけてきた。


「えっと…私…橋本玲奈って言います…平田怜さんと…小鳥遊亜鈴さんでしたよね?

これから一ヶ月間、不束者ですがよろしくお願いします…」


怜の隣だからと言うのもあってか、ガチガチになっている…


「そうそう、私は小鳥遊亜鈴って言いますー。よろしくねー」

「改めて自己紹介させてもらおうかな。ボクの名前は平田怜、橋本さん、よろしくね。」


「ヨヨヨ、ヨロシクオネガイシマス」


「もうー、怜がかしこまった言い方したからさらに緊張しちゃったじゃん!」

「ごめんごめん…橋本さん、大丈夫?」


「あ…大丈夫です…!気にしないでください!」


そうは言っているが、やっぱりすごく緊張してるような感じあるなぁ…少し怜がいなくなった時にでも話しようかな…


私は怜を少しだけ寄せると、

「悪いんだけど、少しだけ席を外してもらえないかな…ちょっと落ち着くように私が話してみるよ。」

「…うん?別にいいけども…」


そう言うと、怜は

「ごめんね、ちょっとだけ席を外させてもらうね。」

そう言うと、怜は少し離れた席にいるグループの方へと向かっていった。


私は橋本さんへと振り返ると、


「ごめんね、やっぱり怜ってなんかモテすぎるからさ…周りの人の目線とかもあって緊張しちゃったよね。」


「…はい。気を遣っていただきありがとうございます。改めて、私の名前は橋本玲奈と言います。よろしくお願いします!」

「よろしくー。私のことは好きに呼んでもらっていいよー」

「じ、じゃあ、亜鈴さんとお呼びしてもよろしいでしょうか?」

「全然大丈夫だよ、よろしくね、橋本さん!」

「よ、よろしくお願いします…私のことも、出来れば玲奈と呼んでいただければ嬉しいです!」

「そう?じゃあ玲奈さんって呼ばせてもらうね。よろしく、玲奈さん!」


そうして話をしているうちに、怜が向こうの席から戻ってきた。


「ただいまー…あれ?随分仲良くなってるじゃん。何話してたのー?」

「普通によろしくーって話してただけだよ。ねー玲奈さん。」

「は、はい!亜鈴さんとよろしくお願いしますって話してただけなのです!」

「…ふーん。」


怜は何故か一瞬、よく見ないと気づかない程度に不機嫌な表情をしたが、一瞬で普段の王子様系の憎たらしいほどかっこいい表情に戻って、


「仲良くなったなら良かった良かった。ボクも玲奈さんって呼んでいいかな?よろしく、玲奈さん。」

と挨拶をしていた。


「は、はひ、よろしくなのです!」

玲奈さんはやはり少し緊張しているようで、私と話している時よりも若干硬い…


やっぱり我が親友、あまりにも女たらしがすぎないか?亜鈴さんは怜の将来が心配です!


登場人物紹介

・小鳥遊 亜鈴(たかなし あべる)

 主人公。親友がやたら女性にも男性にも好かれているのを見て、将来とんでもないタラシにならないか心配している。


・平田 怜(ひらた れい)

 亜鈴の親友。誰にでもモテる完璧超人な王子様。実は秘密を抱え込んでいたりするのだが、今のところ誰にも悟られていない。


・高田 武(たかだ たけし)

 担任。ホームルームの時間を席替えにし、怜に全ての作業を放り投げた後で、職員室に戻り眠っていた。何故か誰にも注意をされていない。


・小鳥遊 小糸(たかなし こいと)

 亜鈴の妹。重度のロリコン。本人の癖がすごいせいか、友人も軒並み個性の塊。

亜鈴が知らないところで怜と仲良くなっている。


・橋本 玲奈(はしもと れな)

 亜鈴のクラスメイト。比較的内向的な人間。何故か、少し怜に警戒されているが、玲奈本人も周りもそのことに気づいていない。天然。



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