第2話 高校生活初日!
「じゃあ次は平田ー」
「はーい」
怜は返事をして立ち上がると教卓に向かった。教卓に向かっている最中にも周囲からは声が途切れることはなかった。
「やっぱり怜様かっこいい…」
「あのルックスで頭もいいとかずるいだろ…」
「聞いたか?あいつ歴代最高点で首席合格してたらしいぜ…」 「いいよなあ…何でも持ってるやつは…」
ヒソヒソ…ヒソヒソ…
少し気まずそうな顔で怜が私の前まで来たため、とりあえず私は元気づけようと思い、
「あんなの気にしない気にしない、頑張れー」
と小声で話しかけた。
それが聞こえたのかどうかは知らないが、気まずそうな顔が一転、憑き物が取れたかのような晴れやかな顔で教卓に立つと、自己紹介を始めた。
「こんにちは、僕のことをすでに知っている人は多いかもしれないけど改めて自己紹介をするね。ボクの名前は平田怜。写真を撮るのが趣味で、休日何もない時は写真を撮るために外に出かけたりすることが多いよ。得意な教科は、強いていうなら数学かな?苦手なものとかは特にないかな…これから一年間、仲良くしてくれると嬉しいな。皆よろしく!」
そして綺麗なお辞儀をすると、クラス中からは歓声が巻き上がった。
席に戻る際に私の前を通り過ぎた時、ぼそっと私にだけ聞こえるような声で
「…ありがとう」
そう声を掛け、そのまま自分の席に戻っていった。
気のせいかもしれないが、私の励ましで顔立ちが変わってたような気がしたし、あれで少しでも楽になってくれたのであれば私としては幸いだ。 そして自己紹介の時間が終わり、HRの時間になった。あと少しで初日の授業が終わると思っていた矢先に、高田がとんでもない爆弾を落とした。
「今日はもう解散だが、明日は席替えするぞー。席替えのやり方はお前らに一任するから、明日俺が来たらどうするのか教えろよー。じゃあ今日は終了ってことで…」
それだけ言うと、高田は大きな欠伸をしながら教室を出て行った。
案の定と言うべきか否か、高田が出て行った瞬間、教室は大騒ぎになった。
「マジか!俺らで決めていいのか!」
「キャー!私絶対怜様の隣座るー!」
「ズルい、私も私も!」
「お前ら下がれ!あいつの隣に座るのは俺や!そして勉強教えてもらうんや!」
「あ…えっと…うんと…」
そんな喧騒を尻目に、私は怜のところに向かった。
「予想はしてたけど、相変わらずモテモテだねー怜。」
「勘弁してくれ…」
怜はこめかみを軽く抑えながらそう答えた。
「でもどうするの?このままだと収拾つかなさそうだし、怜が仕切るしかないんじゃない?」
少しニヤニヤしながら聞くと、怜はこめかみを抑えたまま、
「だよねえ…皆、ボクのために争わないで!って叫ぼうかな?」
「それは漫画の読み過ぎじゃないか…?」
「まあ流石に冗談だよ、普通にくじ引きとかを提案するさ。ただ、提案をする以上くじの作成とかはボクがやらないとね…」
「変に真面目だよねー怜…
分かった、それくらいなら私も手伝うよ、どうせ暇だしね!」
私がそう言うと、怜は顔を輝かせ、
「本当かい!?助かるよ!流石亜鈴、優しいね。」
と言ってきた。
「いや、友人が困ってるならこれくらい当たり前じゃないか?」
そう私が言うと、
「友人…そうだよね…」
何か思い詰めたような表情で一瞬呟いたが、すぐに普段の明るい表情に戻り、
「じゃあその言葉に甘えようかな。
ちょっと待ってて、先にあれを鎮めてくるから。」
そう言うと、怜はギャーギャー騒いでるクラスの奴らの方に向かっていった。
そして喧騒の中に入ると、
「はい皆そこまでー!ボクのことで揉めてくれるのはちょっと複雑な気分にはなるけど、これだけ揉めるなら公平性を期すためにくじ引きでいいんじゃないかな?
くじの方はボクが作成するからさ!」
そう言った。
するとクラスの奴らも、
「残念だけど、このまま言い争うくらいならその方がいいかもね…私は私の運命力で怜様の隣の席の座を勝ち取って見せる!」
「正直収拾つかなくなってたから助かったよー」
「くっ…怜様が自分で作るのであればくじの方に細工をして、私が隣になるようにするなんてできないじゃない…!」
「お前そんなこと考えてたのかよ…」
となっていき、少しずつ落ち着いていった。
一方その頃、一人残された私は、
「いやー、あそこまでモテる人間は大変だねえ…」
そうしみじみと呟きながら、人数分のくじの作成をしていた。
怜が騒動を収めて戻ってくる時には、8割がたくじの作成は終わっていたため、怜が席に戻ってきた時に、
「おかえりー、くじの方は8割がた作成終わってるから、残り少しを早く作って私たちも早く帰ろー。」
というと、怜は少し驚いた顔で、
「ありがたいんだけど、亜鈴、もうそんなに作れてるのかい!?」
と言ってきた。
「そりゃあそうよ、だって怜があっちに向かった時には作り始めてたもん。」
「でも、ボクの意見が通らない可能性だってあっただろ?」
「確かにあったかもしれないけど、怜ならやってくれるって信じてたからね!」
「君ってやつは…」
言葉とは裏腹に、少し嬉しそうな顔でそう言うと、
「よし、じゃあ後少しだけど作ろっか!」
そう言って二人で残りのくじを作成し始めた。
程なくしてくじを作り終えて、
「作り終わったけど、このくじどうする?学校に置いとく?」
そう私が尋ねると怜は、
「いや、もし取られたりしたら面倒なことになりそうだし、ボクが持って帰るよ。」
そう言うと、怜は作成したくじを袋に入れて、自分のカバンにしまった。
「じゃあ今日は終わりだね、ボク達も帰ろっか!」
「そうだね、よーし帰ってからゲームするぞー!」
「相変わらずゲーム好きだねー亜鈴は…」
そうして私の高校生活初日は幕を閉じたのであった。
その時はクラスの喧騒や作業に気を取られて私も怜も気づいていなかった。
騒ぎに参加することもなく、かといって早く帰るわけでもなく、私と怜をただひたすらにじっと観察している者が居たことに…
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