小鳥遊亜鈴の愉快な日常
鈴音
第1話 小鳥遊亜鈴の愉快な日常
*この作品はスピンオフです。
これは、幼女パンデミックにより小鳥遊亜鈴が幼女になる前の話である。
「遅刻だ遅刻だー!」
時間は午前8時、大凡の学校の始業時刻である。そんな時間に、自転車を全力で漕いで道を急ぐ少年の姿があった。
「不味い、非常に不味い!流石に今日遅刻するのは流石に不味い!」
何があるのかその少年は、鬼気迫る表情で道を急いでいた。
キーンコーンカーンコーン
ガラガラガラガラー!
「ハァ…ハァ…よし…ギリギリセーフ!」
「アウトだよこのおバカ」
チャイムと同時に教室に駆け込んで来た亜鈴に冷ややかな声をかけてきたのは、道をすれ違ったら誰もが振り返ってしまいそうな金髪の美青年であった。
「まぁまぁ、そんなこと言わないでよ怜ー、チャイムが鳴った瞬間には間に合ってたんだしセーフセーフ!」
こういう私に対し、怜と呼ばれたその青年は、
「そうだね、これが入学式が終わったあとじゃなければ何も問題はなかったかもね?」
律儀にツッコミを入れてくれた。
この怜と呼ばれた青年、フルネームを平田怜というが、こいつは私の無二の親友である。
頭脳明晰、運動神経抜群、ビジュアルもモデル顔負けと、非の打ち所がない完璧さを持っている。正直私にはあまりにも不釣り合いにも感じてしまうようなハイスペック人間である。
それはさておき、私こと小鳥遊亜鈴が急いでいた理由、それは今日が記念すべき高校の入学式だからなのであった。
「大丈夫大丈夫、まだ入学式、誰が誰とか皆分かってないし顔も覚えられてないから!」
「一体何が大丈夫なんだ…?それはさておき、初日からこんなことやらかしたなら、それで覚えられたりするんじゃないかい?」
怜はそう言ってくるが、流石にこんな一般人を覚えるような物好きはあまりいないと信じたい。そう思って教室をチラリと見ると、
「あいつ誰だ?」
「なんで私の怜様とあんなに親しげに話してるんだあの愚民…許せませんわ…」
「入学式の日から遅刻してくる奴初めて見たわ…」
なんか一つ変な言葉が聞こえたような気がしなくもないが、概ねドン引きされてること、そして変な注目を浴びてしまったことだけは分かった。
「…ひょっとして詰んだ?私」
「だから言ったのに…」
そう言って怜はやれやれと言わんばかりに首を振る。
「いや、お前が私に突っかかってきたのも原因じゃないか!?」
「いや、ボクのせいにされても困るが…」
逆ギレとは分かっているが、それでも何かのせいにしたい亜鈴少年なのであった。
「…まぁいいや、このくらいなら何も問題はないでしょう!とりあえず私の席まで案内してくれないー?私入学式遅刻しちゃったから席の場所分からないんだよねー」
「全く、お前って奴は…亜鈴の席はそこだよ」
怜はそういうととある席を指差した…一番前の列のど真ん中の席、つまり教卓の目の前の席を。
「…マジで言ってる?」
「マジで言ってるよ、どんまい!」
輝くような笑顔をしてきやがった…この悪友が…!
変にコソコソ動いても仕方がないので堂々と席に向かい座ると、呆れ顔で教卓に立っていた担任と思われる教師がため息一つつき、いかにも面倒臭いというような雰囲気で話し始めた。
「と、いうわけで…初日から遅刻してきたアホがいたがホームルーム始めるぞー」
あまりにもあんまりな言い方をされたが、事実なので何も言い返せなかった、悔しい。
「それじゃあ今日は自己紹介からやっていくぞー。まずは俺から自己紹介するが、俺の名前は高田武。この桔梗高校の教師だ。担当は倫理、趣味はレース鑑賞だ。よろしくなー、はぁ…めんどくさい…」
そうめんどくさそうに自己紹介を終えると、続いて
「それじゃあ次はお前らも自己紹介やっていってなー。先ずはー…」
そしてクラスメイトたちの自己紹介が始まった。
「亜田ですー。趣味はー…」
「近藤ですー。特技はー…」
自己紹介は滞りなく進み、いよいよ私の番となった。
「じゃあ次は小鳥遊ー。」
担任に呼ばれたため、私は一息ついて席から立ち上がった。
「私は小鳥遊亜鈴と言います。趣味はゲームで嫌いなものは勉強。意外かもしれないんですけど実はズボラだったりしますわ、よしなにお願いしますー」
我ながら完璧な自己紹介だ…そう思いながらぺこりとお辞儀をし、頭を上げると何故かクラスのみんながジト目で見ていた。…なんでだ?
登場人物・施設紹介
・小鳥遊 亜鈴(たかなし あべる)
本作の主人公。どこにでもいそうな普通の高校生。身内にロリコンな妹がいたり、親友はめちゃくちゃにハイスペックだったりと、周りが個性の塊すぎて少しコンプレックスを持っている。
・平田 怜(ひらた れい)
亜鈴の親友。文武両道の超ハイスペック人間。実は誰にも言えないような秘密を抱え込んでいたりする…?
・高田 武(たかだ たけし)
亜鈴のクラスの担当教師。自他ともに認める超面倒くさがり。面倒くさがりすぎて面倒臭いが口癖になっている節がある。授業自体はとても分かりやすい。
・桔梗高校(ききょうこうこう)
亜鈴たちが通う高校。実は県内でもトップクラスに偏差値が高い高校。校則は緩い。
(登場人物紹介については、新キャラが出る、または章末になるタイミングで本編後に書く予定です。)
・
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