パーキングロット
雛形 絢尊
第1話
静まり返る夜、2台の車が入って行った。
広々とした平面駐車場。
蜥蜴の尻尾のような車の影が
伸びたりに縮んだりする。
7台の乗用車がチェスボードに
置かれた駒のように交互に並んでいる。
どの車も運転手、助手席に座る者、
2人が乗っている。
前方にある一台の車がクラクションを鳴らす。
到着した2台もそれに習うように停める。
これから始まるのは
中間にいる車から1人の男が降りてくる。
正確に言うと降りるというよりも、
追い出されたような。
両手は縛り付けられ、両足が自由の状態で。
車毎にエンジンを蒸す、
ごおお、という音がする。
ぶおおおと蒸す車もいる。
一斉に燃え上がる炎のようにその音は
力を帯びていく。それはより一層強く燃え上がる。
ライトが点滅し始めて、車は円を描く様だ。
次第に走り始める。
その間も低く嘶くような
エンジンの音は鳴り響く。
1人の男を中心に車は円を描く。
その速度は徐々に上がり、
一斉に車の運転席の窓が下がる。
ショットガンのようなものを構え、
助手席に座る者は、
狙いを定めて引き金を引く。
真ん中にいる男を狙い定めて。
ショットガンの反動で後ろへ倒れそうになる。
そのうちの1人が彼の鳩尾を当てた。
吹き出る血は車毎に照らされる。
轟音のような車の音はさながら
煮えたぎる地獄の釜のようだ。
「これで誰が殺したか分からなくなった」
そうして袋に入った砂が
一縷にこぼれ落ちるように
車はそれぞれの道を行く。
パーキングロット 雛形 絢尊 @kensonhina
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