第31話「ボドゲカフェで、待ち合わせ」

 ボドゲカフェ。

 それは、多種多様なボードゲームが置かれたカフェ、というだけではない。

 その在り方そのものが、通常のカフェとはことなる。

 そもそもカフェというものは、一人でも、いや一人であればこそ楽しめるものが一般的だ。

 静かに席に腰掛け、読書しながらコーヒーやスイーツを楽しむ。それが、一般的なカフェの楽しみ方というものだ。



 しかし、ボドゲカフェとはその逆。

 何人かが集まって、ゲームを楽しむためのもの。

 近いもので言えば、ダーツバーがそれにあたるだろうか。

 俺はダーツバー行ったことないけど。

 閑話休題。

 他にない楽しみ方をできるのがボドゲカフェのだいご味だ。

 俺はそんなことを考えながら、入り口付近で、他の三人を待っていた。



「こんにちは、おにいさん」

「やあ、春季ちゃ、ん」



 後ろから、よく知っている鈴の音のような声を聴いて、反射的に振り返り――そのまま固まった。

 春季は、いつも通りの金髪をサイドテールにして、相変わらず青いから紺をつけている。

 それは別にいい。

 多少派手だが、何の問題もない。

 ていうかひたすらにかわいい。

 問題は、その下だ。

 上に着ている臍のあたりを大胆に開けた無地の白シャツと、ヒョウ柄の、下着が見えるのではと思えるほどのミニスカート。

 あえて言おう、露出度が高すぎる。



「いやいやおにいさん、これくらいならギャルなら普通だって」

「全然普通じゃないよ!これはダメだって!」

「えー、せっかくのデートなのに」

「別に僕だけが見るんじゃないんだからさ、心配なんだって」



 露出度の高さと、春季の元々の顔の良さもあって、めちゃくちゃに目立つ。

 いや目立つのはいいが、明らかに周囲の男性は春季に対してよこしまな視線を向けている。

 別に向けるなとは言わない。気持ちはわかる。だがそれはそれとして、やはり春季をこういう状態で野放しにしておきたくはない。俺が守らなくては。

 ふと春季は、周囲を見渡して、にやりと笑った。



「もしかして、あーしのこと心配してくれてるの?」

「そりゃそうだろ……」

「んっ、ふふっ、ありがとう、そう言ってくれるのは嬉しいな」



 春季は、悪戯っぽく笑った。

 全く、果たしてこちら側の意図は正しく伝わっているのだろうか。



「じゃあ、あーしのこと、おにいさんが守ってよ」

「……そりゃ、守りはするけどさ」



 俺は、少しだけ春季との距離を詰めて、じろりと周りを見渡す。

 果たしてそれで効果があるのかはわからなかったが。



「あ、おにいさんちょっとだけあっち向いててよ」

「いいけど、何?」

「いいからいいから」



 急に何が始まったんだろうか。

 彼女の意図は、あんまりよくわからない。

 とりあえず、言われるがままに後ろを向いた。

 それから一、二分ほどたっただろうか。あるいはもう少し長かったかもしれない。



「だーれだ」

「わっ」



 細くて、しなやかな指が俺の視界を覆う。

 厳密には身長差の関係で覆えていないのだが、かえってそれがかわいい。

 つまり、春季が俺の背後から腕を回してきたんだろうとすぐに気が付いた。

 かわいらしいいたずらに俺は、苦笑しながら振り向いて。



「おお……」



 驚愕することになった。

 春季の服装が変わっていた。

 先ほどまでの過度な露出はない。

 どこから出したのか、グレーのフード付きパーカーを羽織っている。

それによって太腿以外の露出は消えていた。

 いやまあ、健康的な太腿はがっつりと露出しているのだけれど。



「あれ、もしかしてもっと見たかった?」

「そういうことを言ってるんじゃないよ。ただ急にパーカー取り出してどうしたのかなと思ってさ」

「うーん、おにいさんの友達とこれから会うわけでしょ?要するに、男の人の前でそんなおへそとか肩丸出しの格好はできないよ」

「自覚はあったんだな」

「そりゃねえ、これでもおにいさんのいやらしい視線はばっちり感じてましたとも」

「……勘違いという可能性もあると思うけど」

「あ、目逸らした。もう、おにいさんわかりやすいんだからー」



 ニヤニヤしながら、春季はつんつんと頬をつついてくる。

 ちょっとだけうっとうしい。しかして、かわいい。難しいところだな。



「…………というかなんで俺の前だといいんだよ」

「…………」



 おい、そこで黙るなよ。

 こっちも恥ずかしくなっちゃうだろ。

 ああ、メイクの上からでもわかるくらい春季の頬が真っ赤に!

 俺もつられて顔が熱くなっていくのがわかる。

 これは気まずい。



「おお、随分とイチャイチャしてるなあ」

「わかる~とんでもないバカップルがいたら知り合いだった件」

「お前らいつからいたんだよ」



 自然に会話に混ざってくるからびっくりしちゃうだろ、と俺はマルコと穂乃果に白い目を向けた。

 ともあれ、これで全員揃ったわけだ。



◇◇◇


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