【70’S 青春ミステリ】赤川次郎「死者の学園祭」
死者の学園祭 (角川文庫) Kindle版
赤川 次郎 (著)
発売日 : 2009/11/25
かわいいイラストを添えて出版されることが多いためか、児童向けの内容だとずっと思っていたので、絶望感漂う後半の展開には驚かされた。刊行年は1977年と、およそ50年の時が経っている。現代とのギャップが感じられないこともないが、少年・少女でも読みやすく工夫された内容、ミステリー特有の面白さはいまでも魅力的で、時を経ても色褪せていない。
冒頭は衝撃的。クラスメイトが呼ぶのに振り向いてみれば、その子がベランダの手すりの上に乗って遊んでいるではないか。鉄筋校舎の四階である。落ちればひとたまりもない。ヒロインの結城真知子は「降りなさい」と叫ぶのだが……最悪の結果を迎える。
精神的な傷を負っただろうと、両親の配慮から真知子の一家は大阪から東京の学園へと引っ越してくる。ちょうど父・正造がその学校の理事に就任したというタイミングも重なっていたこともあった。それにしても、真知子はあまり堪えてなさそう。自分が目撃した謎の死を、自分が解き明かしてみたいと密かに思っているなど、なかなかたくましい。
新しい学校に来てみれば、長池
しかし……。
クラスメイトが次々と謎の死を遂げていく。三人組の小野治子(メガネ)、柳田真弓(ノッポ)、細田恭子(太め)。三人は、死ぬ前に視聴覚室で、とあるビデオを見ていたことが分かっている。
当初は事故死や自殺と見られていたが、警察から殺人と思われることを盗み聞きしたり、治子から視聴覚室の話を聞いていた真知子は、不審に思い自ら捜査に乗り出すのだが……。
刊行からおよそ50年の月日が流れているだけあって、ケータイ電話はないし、インターネットもまだ一般的ではない。調べ物をするときは、中古書店で本を買わなければいけなかったり、遠くにいる友だちとやりとりするときは固定電話になる。なにかと不便な時代である。
それでも本作が時を超えて愛されるのは、友情や恋愛といった十代の興味・関心ごとがふんだんに盛り込まれているところだろう。ただ、恋人間に年の差があるのは、現代向きではないのかも。
もちろん、それでミステリ部分がおざなりになっているわけではない。冒頭の飛び降り事件は、本編の謎へと関係してくる。また、犯人の犯行動機にまつわる秘密には、驚きの人物が関与している。それでも、前向きな印象のラストシーンに救われた気持ちになるのである。
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