前のエピソード――第25話「ひとりじゃない」と感じる瞬間

長い間、完璧を目指して生きてきた。何をするにもできる限りの準備をして、間違いのないように取り組んで、それが「理想的な自分」だと思ってきたからだ。周りに迷惑をかけたくない、失敗したくない、他人から批判されないようにしたい――そんな気持ちが、いつの間にか「完璧でなければならない」というプレッシャーに変わっていた。

けれども、完璧を目指し続けることは、心にとっても体にとっても大きな負担になる。どんなに努力しても、すべてを完璧にこなすことは現実的に不可能で、うまくいかなかったときには自分を責めてしまう。そして、自分を責めるたびに、少しずつ自信を失っていくことに気づいた。

あるとき、ふと「完璧じゃなくてもいいんじゃないか」と思うようになった。完璧を求めるあまり、自分が本当に楽しむことや、自分らしくいられることを犠牲にしているのではないかと感じたからだ。完璧ではない自分を受け入れることで、もっと自然体で生きられるようになるのかもしれない、と考えるようになった。

完璧を手放す勇気を持つことで、少しずつ心に余裕が生まれてきた。失敗してもいい、間違えてもいいと思えると、肩の力が抜け、自分に優しくなれる。その余裕があると、物事に対する見方も変わり、以前よりも柔軟に対応できるようになった。完璧ではなくても、一生懸命に取り組んでいる自分を認めることができたとき、ようやく自分が本当に大切にしたいものに目を向けられるようになった。

「完璧であること」が必ずしも人を幸せにするわけではない。むしろ、不完全な部分があるからこそ、自分らしい生き方ができるし、他人とつながるきっかけも生まれる。完璧を追い求めることよりも、自分のペースで楽しみながら歩んでいく方が、人生を豊かにしてくれるように思う。

完璧を手放す勇気を持つことは、決してあきらめではなく、自分を大切にするための選択だと今は思う。これからも、無理に完璧を求めず、不完全な自分も含めて受け入れながら、心に余裕を持って生きていきたい。そのほうが、きっと自然体で自分らしい人生を歩めると信じている。