第19話◇面接◇
結局三人で食事を済ませ明子はハッピースウィーツに面接に出かける支度をした。パートとはいえ一応面接なので、着ていたブラウスとパンツの上に紺のジャケットを羽織った。山田所長に逢いに行く時はユーカリ薬局の涼子さんにアドバイスをしてもらった。頼みごとをする時は地味なスーツが良いと言った。弁護士の面接は可哀そうで困った観があった方が良いので地味な普段着で、化粧も薄化粧。装飾品はつけない方が良いと言われた。今度はわざわざ聞かなくても良いと思った。
リビングでテレビを見ていた理沙に声を掛けた。
「お母さん出掛けてくるから。八時には帰れると思う。」
理沙は振り返らず「わかった。」と言った。明子はいつものスニーカーではなく黒のパンプスを履いた。明子の家からハッピースウィーツまでは車で十分ほどで着いた。車の時計をみると約束の午後七時五分前だった。少し早かったが、明子は店の入り口を入った。店には誰もいなかった。
「こんにちは。」
声を掛けると店の奥から五十歳くらいのショートカットのかわいらしい感じの女性が出て来た。
「お電話した坂本明子です。」
明子は頭を下げた。
「坂本さんね。いらっしゃい。私は店長の清水真知子です。こちらへどうぞ。」
清水店長は名刺を渡すと店の奥に案内してくれた。店長の後をついて行くと六畳ほどの休憩室があった。
「どうぞ。座って。」
店長はお茶と店でお客さんに出しているのか小さなお菓子を出してくれた。¥¥¥¥¥¥¥¥
「履歴書です。」
明子がテーブルに履歴書を置くと清水店長は手に取って眺めていた。離婚したら苗字は変わるがいつ変わるかわからないので名前は坂本Tのままにした。
「今仕事しているのね。」
「はい薬局で午前中働いています。」
「いつから来られる?」
「雇ってもらえるのですか?」
「人手不足で困っているのよ。来てもらえるなら早い方が良いの。」
「私、履歴書にも書いてあるように薬局に午前中週四日働いているのです。それ以外なら大丈夫です。」
「そう。日曜日も出て来られる?」
「はい。用事がなければ。」
「うちはお菓子屋さんだから日曜が結構忙しいのよ。来てもらえると有難いわ。」
「大丈夫です。」
明子はなぜ働きたいかあえて語らなかった。清水店長も聞かなかった。
「そう。助かるわ。午後は何時迄はたらけそう?」
「子供が二人いて」と言いそうになって言葉を飲み込んだ。家族のことを言うと旦那の事も言わなければならない。
「夕飯の支度に間に合うまでにければよいので、一時から五時ごろまでは働けます。」
「そう。うちは午前が九時から十二時まで、午後はいちじから五時までなの。」
清水店長がシフト表を机の上に置いて見せた。
「この店は年中無休なのよ。大丈夫?」
「はい。」
「じゃあ明日から来て貰えるかしら?」
「わかりました。」
明子が応えると清水店長が言った。
「店は午後八時までなのだけれど、七時を過ぎるとお客さんはあまり来ないのよ、今から仕事内容を説明しても良いかしら。明日から直ぐ働いてもらえるでしょう。」
「はい。」
「ここはね。フランチャイズ店なの私が店長なのよ。」
「はい。」
「仕事はね。お菓子の販売。レジはケーキや焼き菓子などレジのボタン通りに押してもらうと入力できるのよ。どうぞお菓子食べて。」¥¥¥¥¥¥
「うちの店に来てくれたことある?」
「はい。」
「じゃあわかってくれているかもしれないけれど、うちの店はお客さんが来てくれたら子のトレーに冬は暖かいお茶夏は麦茶を入れてここに入れている小さなお菓子を載せて出すのよ。」
「はい。」
「わからないことはその度に聞いてもられるかな。」
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