第12話
R「やっと帰って来れたわね。」
ぐぅっというお腹の音を鳴らしながら、結構な距離を歩いて拠点まで戻って来た私は、疲れた顔をしながら床に寝転がる。
ひんやりとした冷たいコンクリートの床が、肌を伝って感じられ一瞬だけ身震いをしてすぐに起き上がる。
R「寒いわね......。」
カバンの中から急いでマッチを取り出して、焚き火の火をつけてあと、その中にサバっと缶と書かれてある缶詰を火の中に入れて中がしっかり暖かくなるのを待つ。
カンパンが大丈夫だったのだから、多分そのままサバ缶を食べても大丈夫だとは思うのだが、一応熱して置いた方がより安全な気がしたのとより美味しく食べられそうな気がしたからだ。
もちろん食べる時には、中の匂いを嗅いで少しだけ味見をして変な味がしないかどうかもよく確かめてから食べるのだけれど.....まぁより安全に食べるためにも火の中に入れて熱したというわけだ。
R「缶詰って、そのまま熱しても大丈夫なんだっけ?」
そんな事を入れた後にふと脳裏をよぎったのだが、たぶん大丈夫だろうという考えでそのまま熱してしまうのだった。
※缶詰の容器である金属缶は、密封容器として保存や流通を目的として設計されているため、直火で温めるのは辞めましょう。
(一般的に110~120℃以下なら金属が溶けたりせず大丈夫そうなので、今回の焚き火のような低い温度でならたぶん大丈夫なのですが、責任は取れないので直火は辞めておきましょう。)
ちなみにカンパンを食べる時に熱しなかったのは、カンパンを熱したら中身がシナシナになって美味しくなくなりそうという理由からなのだが......まぁサバ缶は熱してもそこまで味は変わらないしむしろ美味しくなりそうだから大丈夫だろう。
なんて事を一人で妄想しながら、ペットボトルの中の水を見つめて溜め息を付いて立ち上がる。
私はそのままかまどの上に置いたままの凹んだ鍋と空のペットボトルを持って暗くなってきた都市の中を急いで公園まで行ってきて水を汲みに行く。
今日の探索で、作った水も結局ほとんど飲んでしまったし、今も喉が渇いているため、まだ少し明るいうちに水を汲んで飲める水を作っておきたかったのだ。
公園まで辿り着くと、先ほどまで温かかったはずの気温も、いつの間にか肌寒くなってきており、水を汲み終えた私は身震いしながら急いで拠点まで戻ってきた。
R「はぁ......はぁ......。」
水が入って重くなった鍋を急いで持ってきた事で、息切れをしながら帰って来た私の口元からは、白い息が出てきており気温が下がってきている事が見て取れる。
拠点の中は、焚き火の火をつけたまま出てきた事もあり、外の気温よりも暖かくなっており、身震いする身体を暖めるため焚き火の火に近づいて温まる。
それから、水の入った鍋を急いでかまどの上に置いた私は、焚き火の火の中から、木の枝を使って先ほどからずっと熱され続けている缶詰を急いで取り出してやっと一息を付く。
R「あっつ.......。」
缶詰を火の中から取り出した私は、見た目ほど熱くなさそうな缶詰を見て何も考えずに触ってしまい、そのまま少しだけ火傷をしてしまう。
R「そりゃ、熱いわよね。」
普段だったらこんなミスをしないはずなのに、疲れすぎていたのとお腹が空いてそこまで頭が回らずに、早く食べたいという気持ちが抑えられなかった私は、缶詰を触ってしまい火傷をしてしまった。火傷をした部分を急いで水で冷やしながらかまどに火を点けて溜め息を付く。
R「今日は本当に疲れたわ.....。」
R「一応水浴びが出来そうな大きな湖を見つけたのは収穫だけれど。」
R「あそこまで行くのは本当に大変だし、絶対水の中に入ると寒いわよね......。」
R「明日はこの大きなリュックサックを背負って行かなきゃなのと、向こうでも焚き火が出来る場所を作らないとね。」
私は、そろそろ冷めてきたはずの缶詰を突いて熱くないかを確かめる。
缶詰はいつの間にか触れるほどの温度になっていたため、缶詰の蓋をゆっくり開けて中身を確かめてみる。
缶詰の蓋を開けた瞬間、缶詰からは白い湯気が出てきて、魚の良い匂いがしてくる。
R「っあ......箸が無いわ......。」
今更ながら、こんな廃墟しかない場所に箸なんてあるはずもない事を思い出して何か使える物が無いかを辺りを見回して、ふと一昨日見つけたフォークを思い出して、それを鍋の水とスポンジで綺麗に洗って使えるようにする。
やっと、今日初のご飯を食べられる事に感動しながらも、まずは缶詰の味がおかしくないかどうかを確認する。
口の中にサバの切り身を入れると、醤油とサバの味が口の中に広がってホロホロと砕けていく。
R「美味しいし、味も大丈夫そう!」
パサパサする物以外の美味しい物を久しぶりに食べたからか、頬が少し引きつり、自然と笑みが零れてしまう。
R「はぁ......これで私以外にも人がいれば文句なんてないのに......。」
一人で食べる食事に少し寂しいと感じながらも、ゆっくりと缶詰を味わいながら食べていく。
明日は、またあの湖まで行って何日ぶりなのかは記憶がないから正確には分からないけれど、水浴びをした後にそのまま付近を探索して、物資を回収しながら人の痕跡を探そう。
そのためにも、一杯飲み水を作っておかないと行けないし、早めに寝て体力も温存しておかなきゃいけない。
今日はこのまま日記だけ書いて、早めに寝ようと思う。
<寝る前にノートに書いた日記>
- 4日目 -
今日は、雨も降ることなく存分に探索する事が出来た。
朝からかまども作って、飲み水を作って、それから探索にも出かけたりって感じで、朝から夜までずっと体力ばっかり使う事していた気がするわね。
明日は、今日見つけた大きな湖で水浴びが出来そうで嬉しい。
実はずっと身体を洗えない事を気にしていたから.......。
こんな廃墟しかない場所だし、資源も有限だから我儘なんて言ってられないのだけれど、やっぱり気にしちゃうわ。
明日も少し大変になっちゃうだろうけれど、その分水浴びが出来るから楽しみでもあるの。
それから、今日も缶詰を開けて食べてみたわ。
サバっと缶とかいう名前の缶詰を開けて食べてみたのだけれど、サバ缶って思ったよりも美味しいのね。
最近は、パサパサした物ばかり食べていたからか、サバ缶を食べた瞬間、ホロホロと口の中で砕けて醤油と魚の味が広がってきて......新鮮な感じがしてとても美味しく感じたわ。
また、サバ缶を見つけたら食べたいわね......。
まだ、フルーツ缶とか今日見つけたみかんの缶詰とか、もし賞味期限が過ぎてたらヤバそうな食べ物がいっぱい残ってるけど......この前食べた2014年の一番古い缶詰が大丈夫だったからたぶん大丈夫よね.....。
まぁ、一応いつもみたいに匂いチェックや味チェックもするつもりでいるから、お腹を壊す心配はないと思うけれど......。
やっぱり病院だったり薬だったりがない今は、食べるときはいつも不安なのよね。
今は、考えたって仕方のない事だけれど、なるべく怪我や病気にならないようにしなくちゃね。
それじゃぁ、明日は遠くまで行かないといけないとだしもう寝るわ。
<制作物>
焚き火場 (石で囲んだだけ。)
拠点の扉 (陳列棚を組み立てて置いただけ.....ただ、それだけでも拠点に熱が少し籠るようになった。)
かまど (タイルと石で積み上げた簡易的なかまど(?))
<持ち物>
巨大なリュックサック
in[ノート1冊、筆記用具(シャーペンと消しゴムのみ)、水の入ったペットボトル1本、栄ヨーバー2本、マッチ1箱。]
空の缶詰:2缶
栄ヨーバーの袋(ゴミ)
サバイバルナイフ
汚れたバターナイフ2本
汚れたフォーク1本
綺麗になったフォーク1本 New
汚れたスプーン3本
マッチの箱1箱:42/50 (使用中)
バスタオル1枚 (使用中)
タオル2枚 (使用中)
懐中電灯:0/500
スポンジ:2個 (未開封)
スポンジ:1個
スコップ:1個
1缶:賞味期限:2028/08/11 カンパン100g (未開封)
1缶:賞味期限:2023/01/01 フルーツミックス! (未開封)
1缶:賞味期限:2025/12/01 ウマっとコーン (未開封)
1缶:賞味期限:2027/08/20 カンパン50g (未開封)
1缶:賞味期限:2025/04/08 牛缶 (未開封)
1缶:賞味期限:2017/02/10 缶みかん。 (未開封)
1瓶:大きな瓶に入ったお酒?1000/1000 (未開封)
※ラベルが剥がれているためお酒っぽいという事しか分からない。
水の入ったペットボトル1本:100/100
水の入ったペットボトル1本:43/100
※飲み水を作ってペットボトルに入れたため、増えています。
空のペットボトル1本:0/100
キッチンを美しく!:???/80
綺麗な凹んだ小さな鍋:0/193
錆びたバケツ
in[錆びたハサミ2個、錆びた針12本]
大量の木の枝
段ボールの束
現在時刻:夜(?)
外の天気:晴れ。
気温:寒い(?)
健康状態:健康。
本作の主人公:R =
ライゼの終末探索日記 白ウサギ @SnowRose0
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