第5話

周りをよくよく見渡すと、道路にもいろいろな物が落ちている。朽ち果ててペシャンコになっている車や、陥没した場所に沈んでいる車、根っこの方から折れてしまっている街灯に、木々が絡み付いているフェンスに、ゴミやガラクタ等、今まで背景に同化していて、あまり気に留めていなかったのだけれど、よくよく目を凝らしてみるといろいろな物が落ちている。


R「って、そんな使えない物を呑気に見ている暇なんてないわ。」

R「さっさと探索しないと夜になっちゃう。」


まだまだ外は明るいのだけれど、先ほどよりも若干気温が少しだけ下がっているような気がして来る。

それに、昨日の夜に壁の穴を塞げるような物を探せば良かったというのを後悔していたことに、今更ながら思い出して、壁を防げそうな物で軽い物を探してこないといけないという事を思い出す。


R「陳列棚......。」


ふと、お店の床にいくらでも転がっている陳列棚の事を思い出す。

ただ、あれを外に出すのは大変だし、分解して持ってくるのも大変なので、出来れば軽い物で簡単に開け閉めが出来るような物を探したい。

理想としては、ベニヤ板くらいに薄くて軽いそれでいて、頑丈な物が望ましいのだけれど、そんな物なんてあるのだろうか?

鉄は錆びてそうだし、木の板は心もとない.......。

まぁ、そんな板が都合よく見つかるわけも、板自体を見たわけでもないからただの妄想にすぎないんだけれど。

こんな廃墟の都市に、そんな都合よく物があるわけがないし、あんまり期待できなさそう。


R「でも何故か今のところ私が欲しいなって言った物が見つかるのよねぇ。」

R「私ってもしかしてラッキーガール?」


そうやって自分を励ましながらも、溜め息を付いて進んで行く。


R「は~ぁ.....疲れたなぁ。」


少し奥の方まで歩いてきた私は、歩いてきた道のりを振り返って少しだけ後悔する。


R「帰るときは、またこの距離戻るのよねぇ......。」

R「まぁ取り敢えず、この辺で何か探しましょうか。」


近くの崩れた建物の中に入り、辺りを見回す。


R「ちょ、え!?」


入った建物の瓦礫の下から、水色の何かぶよぶよした物が動いた気がして、目を凝らしてよく確認して見る。

気のせいかなって最初は思っていたのだけれど、はっきりと動いた瞬間を見た私は、驚きのあまり後ろにこけてしまった。


ガラガラ(瓦礫が崩れる音)

R「いった~い!」

R「もう!」


立ち上がった私は、汚れを掃ってからその生き物?をよくよく目を凝らして観察してみる。


R「.......Slimeスライム?」


昔、学校の理科の時間に作ったような水色のぶよぶよした物体がゆっくりではあるものの、少しずつ少しずつ動いている。

真ん中に丸くて赤い石みたいなのがあるんだけど、それを水色のぶよぶよの物体が囲むようにぐるっと覆っていて少しずつだけど動いていて、何処かちょっとだけ可愛く見える。


R「えぇ......なんなのぉ......。」

R「これ、スライムよね?」


今まで見た生物は、何処か見たことあるような生き物と生き物を掛け合わせたような見た目の生き物だし、生きてるって感じの生物だったのだけれど、それとは違って生きているのかさえ不明な物質?物体?というか何これ的な物が出て来て困惑している。


R「さ、触ってみようかしら?」

R「攻撃されないわよね?」


近くに落ちてあった錆びた鉄の棒を手に取り、スライムに向けて突っついてみる。見た目通りのぶよぶよっとしていて、可愛いし鉄が溶けたりもしていない。


R「ふふ.......。」


夢中でツンツンしていると、スライムが嫌だったのか分からないのだけれど、私から離れるように少しずつだけど移動している。


R「あ、ごめんね。」

R「って、言葉分かんないよね......。」

R「喋れそうにもないし。」


一応、触っても大丈夫かだけ確認したかった私は、スライムに指をそっと近づけて、突いてみる。

ひんやりとした感覚が手に伝わり、ぷよぷよのボディが、私の指を包み込む。

特に何か溶けるとか、痛いとかいう感覚は全くなく、取り敢えずこの未知の生物は安全そうでホッとする。

それに臆病な性格なのか分からないけど、必死になってゆっくりゆっくり私から離れて行っている。


R「取り敢えず良かったわ。」

R「もし、危険な生物だったら安心して夜も寝られないもの。」


こんなぶよぶよなボディで、瓦礫と瓦礫の隙間を潜り抜けてやってくる生物なのだから、もしもこの生物が危険な生き物だったら安心なんて出来なかったけど、無害そうで安心する。


ガラガラ(瓦礫が崩れる音)

R「危ないわね。この建物......。」


奥に行くほど、だんだん天井が下がっており、床も天井から落ちてきたであろう瓦礫でいっぱいの建物であるため、急いでこの建物を離れる。


R「収穫無しっと......。」

R「というか、危なすぎて瓦礫の下なんて見れないし、奥の方にも行けなかったわ。」


あんまり中を探索する事が出来なくて溜め息を付いた私は、来た道を戻りながら、途中途中の安全そうな建物がないかを確認して見る。

何処もガラスが割れていたり、床と天井に穴が開いていたりしているのだけれど、不思議な事に入れないほど崩れている建物は少ない。


R「この植物が支えてくれているのかしら?」


建物に根を張っている大きな木を見上げながら、少しだけ感動する。

帰る途中で、そこそこ綺麗な建物かつ中にいろいろ物がありそうだったため、取り敢えず中に入って探索してみる事にした。

相変わらず、綺麗といっても物が散乱していたり、壊れていたり.....。


R「何の建物なのかしら?」


ゆっくり辺りを見回して推測を立ててみるのだけれど、良く分からない。

本のような物が置いてあったり、錆びて壊れているハサミや、包丁等の日用の製品に。

それから何かに踏まれてしまって粉々になっているボールペンや缶詰や瓶。

ペットボトル等のプラスチック製品もいっぱい落ちているのだけれど、穴が開いていたり溶けて原型が保てていなかったりぐしゃぐしゃになっていたりしている。


R「コンビニ?」


ふとそんな言葉が思い浮かぶ、いろんな日用品や雑誌が売ってあって、食料品まで何でもある"コンビニ"、統一性が無い反面いろんな物が買えるためとっても便利なのである。

しかし、業務用の冷凍ショーケース等は置いているような気配はないし、床には陳列棚と商品しか転がっていない。


R「う~ん.....。分からないわね。」


取り敢えず、何のお店かは分からないけど、缶詰があるってことは食料が置いてあったという事なのだから、いろいろ見て回って見る。


ガラガラ(漁る音)

R「みっけ!」


奥の方の瓦礫の下を探索してみると、缶詰が2個綺麗な状態で見つかった。

更に、未開封の状態で瓶に入ったお酒も見つける事が出来た。

まだまだ探せば、出てきそうな気がしたのだけれど、リュックサックを持ってきていない私は、これ以上持って帰る事も出来ないため、一旦拠点に帰る事にする。


R「うんしょっと。」


立ち上がった私は、ポケットに缶詰を詰め込んで、瓶を両手に持って慎重に運んでいく。床はこんな有様だし、外もアスファルトが凸凹であるため、実は毎回こけそうになっているのだ。というか恥ずかしい話、なんかいかつまずいてこけている。

その度に、軽く擦りむいたり打ち付けたりするのだから、とっても痛いのである。


慎重に慎重に一歩一歩進みながら拠点にやっとの事で戻って来た私は、溜め息を付いて座り込む。


R「疲れたわ。」

R「でも、まだ頑張らないと。」


急いで向かいの建物に向かい、倒れた陳列棚を起き上がらせ、押してゆく。


ドン(ぶつかる音)

パリパリ(ガラスが落ちる音)

R「っひゃぁ。」


上から、ガラスの破片と埃が降って来て、私は急いでその場から離れる。


R「やっぱり、このまま運ぶのは無理よね。」


重いと言えば重いのだけれど、持てないほどの重さじゃないため、このままでも押しながら運んでいけるかもと安易に考えて、押していたら、ドアの上の部分にぶつかってしまい、上の方についていたガラスを割ってしまう。

一度陳列棚を倒して、止めてあるビスを一個一個外していく。

一つの板になったら、一枚一枚拠点の方に運び入れ、ビスも無くさないようにポケットの中に仕舞う。そして一つ目の陳列棚を運び終えた時には、すっかり夕暮れ時になってしまっていた。運んでいる内にあったかくなっていて気が付かなかったのだけれど、肌寒くなっている。

急いで昨日のように、木を簡易的に作った焚火に入れて火をつけて明かりを灯す。


R「ふぅ......。」


その後は、さっき分解して運び入れたばかりの陳列棚作りが始まってしまった。

ドアにしたいわけだし、通気性もよくないといけないからそれを注意しながら、ビスとビスをハメて一枚の板にしてみる。ただ、穴の開いてる部分は決まっているため、結局は真ん中と上に板が入っていない状態の大きな陳列棚?というか、箱みたいなのが出来てしまった。


R「おいしょっと。」


その大きな箱を立てかけて、開いている壁の穴を塞ぎ壁を作る。ただ、上の方は隙間も出来ているし、横と下も小さな隙間が出来ているのだけれど、これで動物のような大きい生物は入って来れないし、通気性も良いため一安心。

それに心無しか先ほどよりも部屋が暖かくなったような気さえする。

やり遂げた私は、水だけ飲んでそのまま寝てしまったのだった。


<日記>

-2日目-

(疲れて寝てしまったため何も書けていない。)


<持ち物>

巨大なリュックサック

in[ノート1冊、筆記用具(シャーペンと消しゴムのみ)、水の入ったペットボトル1本、栄ヨーバー2本、マッチ1箱]

栄ヨーバーの袋(ゴミ)

サバイバルナイフ

汚れたバターナイフ2本

汚れたフォーク2本

汚れたスプーン3本

マッチの箱1箱:47/50 (使用中)

※1回火を点けるのを失敗したため一本消費。

バスタオル1枚 (使用中)

タオル1枚 (乾かし中)

タオル1枚 (未開封)

懐中電灯:0/500

1個:賞味期限:2014/06/23 カンパン100g (未開封)

1個:賞味期限:2028/08/11 カンパン100g (未開封) New

1個:賞味期限:2023/01/01 フルーツミックス! (未開封) New

1個:賞味期限:2028/09/12 サバっと缶 水煮 (未開封)

1個:賞味期限:2025/12/01 ウマっとコーン (未開封)

1個:賞味期限:2027/08/20 カンパン50g (未開封)

1瓶:大きな瓶に入ったお酒?1000/1000 (未開封) New

※ラベルが剥がれているためお酒っぽいという事しか分からない。

水の入ったペットボトル1本:70/100

空のペットボトル1本:0/100

匂いのヤバイペットボトル1本:0/100

キッチンを美しく!:???/80

錆びたバケツ 

in[錆びたハサミ2個、錆びた針12本]


現在時刻:夜(?)

外の天気:曇り。

気温:寒い(?)

健康状態:健康、とても疲れてる。

本作の主人公:R = Reiseライゼ

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