神話の森に移住した伝説的なクラフター〜追放悪役令息と精霊さんのチートで怠惰な世界樹ダンジョン菜園〜

西園寺若葉

第1話 何もしてないのに追放された

ーside カルム-



「--カルム!お前を追放する!」

「違うっ!俺はやっていないよ!信じてくれ!」



 先ほど俺は、フェーン王国の第二王子エリックより追放を宣言された。本当は聖女が行った悪行の濡れ衣を着せられ、悪人にされてしまったのだ。


 

「じゃあ、私がやったというんですか?」



 --ウルウルウル

 相変わらず聖女エリーゼはか弱そうな見た目だ。泣きそうな目で俺を見ている。

 これじゃ完全に俺が悪者だ。

 

 

「こんな可愛い女の子をいじめるのかお前は……」

「いや、そういう問題じゃ……!」

 


 エリックはエリーゼに惚れていて、エリーゼのことになると周りが見えなくなる。はっきり言って無能である。



「……」



 クラフターとして、この国に尽くしてきた。

 俺のおかげで物作り大国として、この国は大国から一目置かれる存在になった……と思う。だけど俺の待遇は変わらず、平民として搾取される日常を送っていた。

 病気の両親と妹を治すため、他国からのお話は全て断った。先日両親と妹の病気が治ったばかりだった。

 やっと、幸せになれると思ったのに。

 もう……限界だ。



「もういいです。わかりました。この国から出て行きます」

「はっ……!分かれば良いのだわかれば」

「なんて無能なんだこいつ」

「あっ?」

「なんでもないで〜す」

「……?」



 もうこの国知らない。

 俺のおかげでしっかり豊かになった第二王子は最大の功労者である俺に嫉妬したのか、どうしても追放したいらしい。

  聖女もあんなだし、この国のことはまあいいか。

 


 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢

 


「ただいま」

「カルム!」



 母親のレミーと父親ラルクは心配そうに俺を見つめる。ついこの前まで、病気で大変だったのに、随分回復した。



「追放されたんだってな!こんな国捨てて、俺たちと他国へ行こう」

「……!いいの?」

「当たり前じゃない!母さんたち、ちょうど国を出ようと冒険者になってこの2週間くらいお金を貯めていたの」



 そうか。てっきり、両親は人質の代わりにこの国に置いていかなきゃいけないと思っていたけど、そんな事なかったのか。なんて無能なんだ、この国の王族は。最高だよ。



「俺たちのことは自分でなんとかする。だから、お前は自由に生きなさい」

「うん、うん……ありがとう」

「ちょうど、お母さんの親戚がウェーメン王国にいて、先ほど手紙がきたから頼ろうと思うの」

 


 こうして、俺たち家族はウェーメン王国へ行くことにした。



 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



 ウェーメン王国に行くためには、冒険者ギルドで護衛を雇わないといけない。まだ戸惑っているが、とりあえず俺はそしてその足で、冒険者ギルドに行った。

 仕事柄、冒険者ギルドにもよく顔を出す俺は、顔馴染みの冒険者の受付嬢に挨拶をする。

 


「カルムさん。聞きましたよ!?追放されたのですか!?」

「うん」

「はあ……あなた程の人材を追放するとか、今の国王陛下はなんと無能でグズでバカなのでしょう……」

「い、いや」



 そこまで言わなくてもよくない?

 ボロカス言ってらっしゃる。



「それで、隣国への護衛ですね」

「はい」

「それなら、あたしが引き受けるわ」

「アイリスさん!」

 


 聞き馴染んだ声。

 彼女はこの国で2人しかいないSランク冒険者である。

 昔武器を作ってあげたのだ。



「俺もいく」

「レオン!」



 彼もこの国で2人しかいないSランク冒険者だ。

 同じく昔、武器を作ってあげたことがある…

 ーーバチバチバチ


 

「あたしだけで十分よ」

「お前だじゃ不安だな」



 そしてバチバチのライバル同士である。

 


「ありがとう。悪いけど、君たちを雇えるほどのお金ないよ」

「じゃ、俺たちとパーティを組まないか?」

「こいつと意見が合うのはなんか嫌だけど、それはいいわね」

「えっ!」

 


 2人がパーティを組むなんてそんな大事あるのか?それにそんな簡単に決めるなんて……。



「それはいいですね!」

「受付嬢さんまで」

「ささ、パパッとパーティ結成してしまいましょう」

「パーティ名はカルムが決めてくれ」

「それがいいわね」

「えっいいの?」



 2人はうんうんと頷いている。

 いいから早く決めろと言う感じだ。

 何にしよう、この2人の共通点か。

 


「じゃあ、最高の冒険者で」

「おお良いですね、この3人に相応しい」

「いや、俺へ別に冒険者ではないんだけど……」

「何を言ってるんですか?冒険者登録されていますが?」

「えっ……」

「ああ、宮廷クラフターだったので、王国が管理していたから知らないのですね。カルム様は現在Aランクの冒険者として登録されています」



 そうだったんだ。

 どうやら、その手の情報は全て王国が管理しているらしい。

 給料の大半も冒険者ギルドから王宮に送られる際にピンハネされていたようだ。



「そんなことが……」

「冒険者のギルドカードも持っていませんよね?もしよろしければ発行しましょうか?」

「お願いします」



 Aランクの冒険者ギルドカードだ……。

 ミスリルでできているカードを貰う。

 すごい、こんな高いランクのギルドカード、初めて見た。



「よしっ!そんなに時間もないし、さっさと国を出ようぜ!」

「そうね」



 こうして俺たちはあれよあれよと言う間に国を出たのだった。

 

 

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