第50話 告白

 翌日、またお昼休みに俺と有栖は生徒会室に来ていた。碧唯さんには見張りをしてもらっている。


 有栖が放課後どうするかを聞いてきた。


「今日も幸子さんのところで勉強するでしょ? 公園行かずに直接行く?」


「いや、公園に立ち寄ってくれ。少し話したいことがある。大事な話だ」


「大事な話? じゃあ、ここで話す?」


「ここでもいいけど、ちょっとな……公園は俺と有栖の場所って感じがするし。やっぱり、そこで話したい」


「そっか……うん、わかった」


「そんなに時間はかからないと思う」


「うん、わかった……じゃあ……えっと……そろそろいいかな……」


「え?」


「昨日言ったでしょ。また、なでてくれるって」


「そうだったな……」


「お願い……」


「わかった」


 俺は有栖の頭をなでだした。有栖は頭を突き上げるような感じで顔を上げ、気持ちよさそうだ。結局、碧唯さんが時間を告げるまでずっとなでていた。


 生徒会室からは昨日と同じく、碧唯さんと二人で教室に戻る。


「……白木君、もしかして、今日、告るの?」


「うん。そのつもり。やばい、もう心臓ドキドキしてる」


「まだ早いって。でも、がんばって。絶対うまくいから」


「そうだといいけど。有栖はそういうの全部断ってるって聞いたぞ」


「そりゃ、他の人はそうだけどね。白木君は大丈夫でしょ」


「軽く言うなあ」


「ふふ、結果、楽しみにしてるね」


 碧唯さんは小走りで先に教室に戻っていった。


◇◇◇


 放課後になり、公園で俺は有栖を待つ。今日居た猫は白猫と茶トラのいつもの二匹だ。いつも通り、猫をなでて待っていると有栖が来た。


「たっくん……」


 有栖も緊張している顔をしている。ベンチに座り、俺を見た。


「早速だけど、話って何かな?」


「うん。俺たちの関係についてなんだけど……」


「うん……」


「俺と有栖ってかなり仲良くなってきてると思うんだ」


「うん……」


「お互いの家に行ったり、頭なであったり、ハグしたり……」


「うん、そうだね……」


「ここまで来たらちゃんと関係を確認しておきたいと思って……」


「確認?」


「うん……有栖、俺は有栖のことが好きだ。付き合って欲しい」


「たっくん……」


 有栖はうつむいた。あれ? これは……


「えっと……私もたっくんのことは大好きだよ。付き合いたいってずっと思ってた。でも、いざそうなると、ちょっと恐いって言うか……だって、別れたりするでしょ? 友達のままならそういうのが無いかなって……」


「それはそうだけど……」


「私、たっくんと絶対別れたくないんだ。今、たっくんが居なくなったら、生きていける気がしないし。だから、別れるのが恐いの。もし、付き合ってしまったら、そういうのが……」


「そ、そうか……」


「と、とりあえず今は……友達のままじゃダメかな?」


「わ、わかった」


「ごめんね」


「うん、そうだな。無理言って悪かった……じゃ、じゃあ、俺、今日は帰るから」


 断られることは想定にはあったし、有栖は俺を大事に思っていることも分かった。それでも予想以上にショックを受けた俺はその場を逃げ出したくなってしまった。


「え? 勉強会は?」


「ちょっと帰って頭を整理したい。また明日な」


「え、たっくん!」


 俺は走って公園を後にした。


◇◇◇


「ただいま……」


「あれ? 今日は早かったね」


「姫菜、悪い、今日は自分で何か食べてくれ」


「え、どうしたの?」


「ちょっとな」


 俺は自分の部屋に戻り、ベッドに飛び込んだ。


 はぁー、早まったか……でも、有栖の気持ちも分かるし。決して有栖は俺を拒絶したわけじゃないんだ。居なくなったら生きていけないってまで言ってくれたし……


 今日一日落ち込んで、明日にはいつも通りにしよう。


◇◇◇


 そのまま2時間ぐらい眠っていたようだ。もう部屋の中は暗くなっていた。

 だが、目覚めても明かりを付けず暗いままにしていた。今は何も考えられず、ただぼーっとしていたい。


 しばらくすると、ドアがノックされた。


「お兄ちゃん、起きてる?」


「ああ」


 扉が開かれる。


「さすがに明かりぐらい付けたら?」


「そうだな……」


 俺は部屋の明かりを付けた。


「有栖さんと結梨ちゃんが来てるよ」


「は?」


 有栖が……それになんで結梨ちゃんまで。俺は慌ててリビングに行く。


 そこには暗い顔をしてうつむく有栖と、すまし顔でお茶を飲む結梨ちゃんが居た。

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