第25話 帰り道
「「お邪魔しました!」」
「また来てね!」
有栖の家を出て、俺と姫菜は家までの道を歩く。
「有栖さんって不思議だよね。見かけはすごく大人っぽいのに、子どもっぽいところもあって……」
「そうだな」
ただ、学校では子どもっぽいところを見せることはほとんど無い。みんなが知らない姿だ。
「お兄ちゃん、有栖さんとはただの友達なんだよね?」
「そうだぞ」
「付き合いたいって思う?」
「……付き合える可能性無いだろ。俺と有栖が」
「可能性は聞いてない。付き合いたいかどうかってこと」
「そりゃ、有栖と付き合いたくないやつなんて居ないだろうな」
「もう……他の誰かの話じゃ無いし。お兄ちゃんが付き合いたいかってこと」
「うーん、どうだろうな。あまりそう言うことは考えないようにしてたから。だって、付き合いたいと思っても無理だろ」
「うーん、ほんとひねくれてるね。素直に答えないんだから……じゃあ、質問変える。有栖さんのこと、好き?」
姫菜がシンプルに聞いてきた。
「好きだぞ、人間として。友人として」
「ひねくれ者! そういうこと聞いてないって分かって言ってるよね!」
「うっ……まあな」
「ごまかしてるってことは好きなんだ」
「……そうかもな。そりゃ、あんな魅力的な女子と一緒に居て、好きにならない方がおかしいだろ」
「まーたすぐ一般論に逃げる。要するに、お兄ちゃんは有栖さんが好きって事でいいよね」
「あー、もういいよ、それで……」
姫菜のしつこさに負けてしまった。確かに最近の俺は有栖のことばかり考えている気がするし、会えば嬉しい。あまり自覚していなかったが、やっぱり、これは好きって事なんだろうな。
「私が今日見た限りだけど、有栖さんもお兄ちゃんのこと、好きだと思うよ」
「はあ? そんなわけないだろ」
「わかんないけどね」
「お前の予想だし、あてにならないな」
「ふふ、強がってる、強がってる。嬉しいくせに」
「嬉しい……なんて」
「顔が緩んでるよ」
「う、うるせえ」
確かに、有栖が俺のことを好きかも知れないという姫菜の予想に俺が喜んだのは確かだった。だが、さらに続けて姫菜が言う。
「でも、現実に付き合えるかは微妙だな。有栖さん、あんな感じだし、恋愛慣れしてないもんねえ。お兄ちゃんは言うまでも無いし……」
「むかつくけど、まあ、その通りだな」
「現状を維持しておいて、何かきっかけが起きるのを待つしか無いねえ」
「まあ、そうだろうな」
「でも、有栖さんと友達なことすら学校では隠してるんでしょ?」
「ああ」
「バレたら大変だろうね。あんな美女と地味なお兄ちゃんじゃ大騒ぎになるんじゃない?」
「だろうな」
「いい時期が来るまでしっかりバレないように。私も結梨ちゃんと一緒に協力するから。がんばって」
「お前が俺を応援するなんて珍しいな」
いつも俺のことをからかってくるくせに。
「だって、結梨ちゃんが一緒に応援しようって言うから。私、結梨ちゃん大好きだし」
やっぱり俺よりも結梨ちゃん優先か。それにしても、結梨ちゃん、さっき部屋でそんなことを話してくれてたのか。本当に優しい子だ。
「ま、何にしろ応援してくれるなら嬉しいよ。ただ、あんまり期待はしないでくれ。正直、俺と有栖がどうにかなるとは今でも思えないんだ」
「だよね。私も」
「……応援してるんじゃ無かったのか?」
「応援はするけど、可能性は低いと思ってるよ」
「……そりゃそうだな」
俺と有栖がそういう関係になれるとはやはり思えなかった。
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