第2話 祝福の儀
僕たち三人は今日で揃って、16歳の成人となった。
幼い頃から祝福の儀は、三人一緒に受けようと約束していた。
三人の誕生日は二ヶ月ほど離れているが、約束を守るためだけに僕の誕生日まで待ってくれた。
(みんな、本当にありがとう)
何となく気恥しく思い、心の中でそっと二人に感謝の言葉を送った。
その先には、一際高く聳え立つ尖塔を戴く
外周には聖人の像が幾体も刻み込まれ、聖典に描かれている異形の怪物との聖戦の物語で装飾が施されている。
貴族や王都っ子なら誰でも知っている名
大きなアーチ状の門を潜り抜けると、
僕たちは幾度となく訪れている光景にも、今日の儀式の事を考えると、改めて祈らずには居られなかった。
三人各々が希望している魔法を司る精霊のリレーフの元で跪くと、お決まりの祝福の祝詞を口にする。
最奥にある司祭の間に入るため定額の喜捨を払って、受付の名簿に名前と儀礼の内容を書く。
この場は誕生日順で、僕が最後に記名した。
「アランティ(・フォン・ミルドレク)、16歳、祝福の儀っと」
控えの木製のベンチは横並びになっていて、記名順に腰を下ろした。
ここからは特に神聖な場所とされていて、私語は厳に慎まなければならない。
僕たちはお互いに話しかけないように、目を合わさずに待っていたが、それぞれの緊張の度合いが肌で伝わってくる。
先ずは誕生日が早いバンデルが、名前を呼ばれて司祭の間へと進み出て行った。
(いい魔法が授かれば良いな)
バンデルは二ヶ月分大人なだけあって、いつも僕たちのリーダーであり、頼れる兄貴分だ。
十分も過ぎただろうか、恭しく司祭の間の方に一礼すると、こちらに向かって小さくガッツポーズを作って見せると、
続いてアリシアが名前を呼ばれると、不安げにこちらをチラッと見ると、軽く手を振って入室していく。
横長のベンチには、僕だけが残された。
(アリシアにも、素敵な祝福が授かりますように)
僕は心から、そう願っていた。
(バンデルよりも、だいぶ時間が掛かってるな…)
やがて、静かにアリシアも司祭の間から外に出ると、僕の方を見てはにかむ様に微笑み、後ろ手にピースサインを作りながら、バンデルの待つ大広間に向かった。
「次の者、アランティよ。神前へと進みなさい」
(僕の番だ!)
緊張しながら、司祭の間に続く扉を静かに開いた。
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