悪役転生!? どうでもいいからモテさせてくれ!
ニア・アルミナート
第1章・転生及びイケメン化計画
第1話 デブ! やせろぉ!!
俺様は恋愛ゲームオタクだ。他作品に手を出すタイプじゃなくて、一作品にのめり込むタイプだがね。
現在は「くらいしす⭐︎らぶ」の真ルートの攻略を行っている。真ルート以外の全てのルートをクリアしてから、真ルートをクリアすることによる分岐がないかのチェックだぜ。
おそらく普通の人なら二回目のプレイで真ルートをクリアするはずだ。そこを、他のルートを全てクリアしてからの真ルートにする。
まぁ真ルートは2回目にプレイすることが想定されているから、分岐や特殊シーンはないとは思うが、一度やってみる気になった。
おっ、そろそろエンディングだな。エンディングの直前のロードに入った。
「あれ、ロード長いな」
エンディングシーンのロードが終わらず、白い画面はだんだんと輝きを増していく。
耐えられず目を閉じたその瞬間、俺の意識は途絶えることとなった。
◇◇◇
「くっそ、喉いてぇ……」
ひどく息苦しい感覚に、意識が覚醒していく。乾燥が原因か、喉が焼けるようだ。口開けて寝てたかな……。
水が飲みたい。
そう考えてまず上体を起こそうとすると、なかなか起き上がらない。なんというか、腹の肉が邪魔だ。俺、こんなに太ってたか?
「どこだここ……俺の部屋はこんな広くねぇし豪華じゃねぇぞ……」
ベットから周囲を見渡すと、明らかに俺の部屋ではない。少し古めかしく、アンティークとでも言うのだろうか。
アニメで見た貴族の寝室のようだ。上を見るとベッドに天蓋も着いているようだしな。
先ほどの体が違うような違和感と、見覚えのない風景。……よくある流れじゃないか? 異世界転生の!
これはもしかすると、もしかするかもしれない。
そう思って勢いよくベッドから飛び降り、先程目についた鏡の前に立ってみる。
「まいった、こいつは大ハズレだ……」
俺は頭を抱えた。
すごく、すごく見覚えのある嫌われ者が鏡に映っていたのだ。
「クソデブかぁ……」
ガイズ・ロックハート。俺がよくやっていた恋愛ゲームの中ボス。公爵家の嫡子で、いつも威張り散らかし、どのルートでもヒロインにちょっかいをかけてくる。
特に真ルートでの妨害は苛烈で、何度も戦うことになった。見た目キモいし、こいつなんか強いんだよな。ネットでの意見は散々だった。クソデブやら、史上最強のブタやらなにやら。
強さは評価されがちだが、見た目のティアは最下位である。
俺もこいつはなかなか嫌いだった。デブのくせに割と物理系統のステータスは高いし、結構回避率も高いし。おまけに魔法の才能もあったようで、全体攻撃してくるし。まぁ見た目に関しては眼中に入ってなかったから嫌いもクソもないが。
チクショウ。転生したら美形ってのが基本だと思ってたのに。なんで俺はデブなんだよ。
せっかくならイケメン主人公のヨーキ、ヒロインである王女の兄、王太子のバスターなどの美形たちの誰かに転生したかった……。
これじゃあ夢のモテモテハーレム生活が……。
もう一度鏡を見る。うむ、やはりあのめんどくさい中ボスの顔だ。
……いやしかしこいつ、顔のパーツは悪くないな。痩せれば良い線行くんじゃないか?
見たところ10歳ほどっぽいし、うまく行けば原作では低い身長も高くできるかもしれない。
……まだ俺の夢は終わってないかもしれん。
「痩せよう……まずは痩せることだ」
食生活の見直しと、運動。今の俺にはこれが必要不可欠だな。
まだ10歳ほどの子供だ。希望はある。俺はやってやる! やってやるぞ! モテモテハーレム生活のために!!
「デブ! やせろぉ!」
俺しかいない広く豪華な部屋に叫び声が響き渡った。
◇◇◇
「ねぇ聞いた? 最近ガイズ坊ちゃんが運動してるんだって」
「嘘、あのガイズ坊ちゃんが!?」
ロックハート公爵家のメイドたちの間でとある噂が流れていた。
両親に甘やかされて育った我儘ばかりのお坊ちゃん、ガイズが屋敷の外周を走ったりしていると。
「痩せたいのかな」
「まぁいいんじゃない? 最近威張らなくなったらしいし……あのガイズ坊ちゃんが普通に接してくれるならそれでいいじゃない」
元々が酷すぎたのか、それとも、努力が認められたのか。メイドからの評価が変わるのは、案外早かった。
◇◇◇
転生してから二週間が経った。毎日限界まで走り、筋トレをして、食事の量は腹八分目以下に止める。栄養バランスはメイドさんにしっかり整えさせているから、おそらく大丈夫だ。
腹筋が割れているわけではないが、タプタプだった腹がそこそこ見れるようになった。
ほっぺの肉もだいぶ減った気がする。
何やら最近メイドさんたちの態度もいい。成果が出るとやはり気分がいいな。
もともとの評価はだいぶ低かったようだが、子供故か、自らを改めた時の評価の代わりは早かった。
毎日努力を続けるために、鏡の前にたち、俺は自分に向かって言葉をかける。
「デブ! 痩せろ! そんなんじゃモテねぇぞ!」
モテモテハーレム生活。それは俺の永遠の夢。それを毎日思い出す。これだけで俺は努力を続けられる。
明日もやるぞ。モテモテハーレム生活のために!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます