とびらはいつも。

STORY TELLER 月巳(〜202

第1話

いつも、空いていたなんて。



突然扉を見つけた。


「未練がなきゃ人はこの世に居られないですよ。」


見つけて近寄る僕の背後から声がして驚く。

いや。僕にではない。


ドアノブに手を掛けた女の人。

ここからは声が聴き取れない。

オジサンがタバコ片手に背中を肩をぽんぽんと叩くと、ドアが開き。

何かがドアの向こうへ入っていったようだ。

ヒューって風が。

秋の落ち葉をかきあげて、二、三枚残し扉に消えた。



何かが消えて。

力無く倒れかけた女の人をオジサンが抱き止めると、彼女は慌てて自分を見て、オジサンの腕から慌てて離れた。


「私、ごめんなさい倒れたんですか?」

「そう。大丈夫、怪我はない?」


先程とは違う高い響く声。

女の人は頭をぺこぺこ下げて、走り去って。


ふと、オジサンと目が合ったような。

いや、藪に隠れた僕と目が合うはずがない。


息を殺し、枝を踏まないよう用心しながら僕も帰る。そろそろ、塾が終わって帰る時間だ。

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