第9話 伏線の答え合わせ。

※本編のネタバレを含みます。ご注意ください。


 ミステリー小説でなくても、伏線というのは、読者を物語の世界へ引き込むために有効です。


 例えば、現代を舞台にストーリーが進んでいたのに、突然何の脈絡もなく、ファンタジー要素が登場したらどうでしょうか?

 読者は、面食らいますよね(;^ω^)

 もちろん、ミステリー小説でも、これまで一切登場しなかった人物が犯人だった、となると読者は怒ります。


 伏線は、読者に伏線だと気づかれてもいけません。

 あくまで自然な流れの中で描写し、いざ回収エピソードを読んだ時に、あれが伏線だったのか!と、読者に驚きと納得を与えてあげましょう。


 というわけで、ここでは、本編『鬼姫は月夜に恋ふ』の伏線について、答え合わせをしたいと思います!


①天子には、言霊を使う力がある。

【伏線】

 天子さまは、言霊ことだまの力を使い、源頼光らに力をお与えになりました。

 一つは、鬼を切ることの出来るつるぎを。

 一つは、鬼の牙から身を守ることの出来る鎧を。

 一つは、どんな怪我も治してしまうという秘薬を。

 一つは、人に化けた鬼の正体を映すことが出来る鏡を。

 一つは、食べれば力が湧いてくるキビ団子を。

(※『御伽草子~源頼光と四天王~』より)


【回収】

 光彰の身体から光が溢れて、私の身体をあたためゆくではないか。

 優しくて、あたたかい光だ。それは、ずっと私が欲していたものだ。

 男の声が遠のき、私の意識は、光彰の腕の中にある肉体へと吸い込まれてゆく。

 そして、私は息を吹き返した。

 朦朧とする意識の中で、貞晃の声が聞こえた。

「……御伽草子だよ。〝天子さまは、言霊ことだまの力を使い、源頼光らに力をお与えになりました。〟って。光彰様は、その天子の血を継いでいるのだから、言霊の力が使えてもおかしくないんだ」

 まさか死人を蘇らせることが出来るとは思わなかったけど、と貞明が付け加える。その声は、少し震えていて、泣いているように思えた。

(※「第二十二話 鬼姫、伝説となる。」より)


②天宮には鬼がいる。

【伏線】

「その髪では目立つ。黒く染めていきなさい。

 ……本来であれば、鬼の妖力を使って風貌などいかようにも変えられるものじゃが……今からその術を教える時間はなかろう」

(※「第二話 鬼姫、海を渡る。」より)


(まぁ、適当に散歩でもしているフリをして帰るところを見せれば良いじゃろう。どうせ天宮に、私以外の鬼がいる筈はないからのう)

(※「第八話 鬼姫、天都の鬼に会う。」より)


「まさか……天宮に人ならざる者がいるとは……」

「いるさ。お前が気付いていないだけでな」

「まさかっ、他にもいると申すのか?!」

「さあな、気になるなら自分で探せ」

(※「第十五話 鬼姫、恋文をもらう。(弐)」より)


【回収】

「まさかこの天宮で同族に出会えるとは…………すまない。少々気持ちが高ぶってしまっているようだ」

 道仁は、目頭を押さえてしばらく黙った。私は驚いた。

「鬼に会えたのが、そんなに嬉しいのか」

「ええ、嬉しいですよ、この上なく…………私は、これまでずっと一人で生きてきたのですから」


「道仁……お主の目的は何だ。それにお前は、道仁などではないな。鬼じゃ。鬼には、姿を自由に変化させることができる」

(※「第二十話 鬼姫、求婚される。」より)


③清澄の裏切り。

【伏線】

「わかっておる。女官として天宮へゆき、花智子の死の真相を暴けばよいのじゃな」

 清澄の目に、暗い光が宿る。

「花智子を死なせた犯人は、まだ天宮にいる。私は、それが許せない。いつか必ず、犯人を見つけて、花智子の無念を晴らしてやりたいのだ」

(※「第十話 鬼姫、兄君の秘めた想いを知る。」より)


「輝夜様は、花智子の死に何か不信な点があると思われるのですか?」

「……わからぬ。じゃが、私の兄が気にしておるのだ。花智子と親しかったと」

「そうですか……兄君様というと、橘 真清たちばな の まさきよ 様のことでしょうか?」

「いや、そっちではなく次男の清澄の方じゃ。長男の真清は、たしか今、伊予介いよのすけとして伊予へ赴任しておるとか……」

 ただ話に聞いているだけで、私は顔すら見たことがない。受領の仕事は、地方へ赴任するため、長く家を空けることになるのだ。

「そうでしたか……花智子のことをまだ気にしてくださる方がいたとは……清澄様に、どうか宜しくお伝えください」

(※「第十七話 鬼姫、夜這いを受ける。」より)


【回収】

「兄様?! 何故っ?!」

 清澄は、矢が届かぬことを見てとると、弓を捨て、腰に差していた刀を抜いた。そして、壇上にいる光彰に向かって切り掛かってゆく。

 私は、どうしてよいのか分からず、その場から動けなかった。

 そのうちに清澄は、光彰の周りにいた衛士たちに取り押さえられてしまう。数人の衛士たちに抑え込まれながら、清澄が何かを叫んでいる。

「……よくも花智子をっ、花智子を殺した怨みっ! 殺してやる……殺してやるーっ! 光彰ーーーっ!!!」

(※「第二十一話 鬼姫、舞い、そして散る。」より)



 えー、大きな伏線はこんなものかしら?

 あとは、明らかな伏線や、分からなくても困らない小さな伏線ばかりかと。


 特に①は、冒頭と最終話で離れているので、忘れている読者のほうが多かったのではないでしょうか?


 源頼光と四天王たちが鬼退治に使った五つの神器は、鎧とキビ団子以外を登場させているのですが、分かりましたでしょうか?(´∀`*)


 そんなものは伏線じゃない!というご意見も全然OKです!


 いかがでしょうか?


 皆様のご見解&ご意見を参考にコメント頂けましたら、大変嬉しいです(*ᴗˬᴗ)


 次回は、登場人物と……何にしましょう(笑)。

 そろそろネタが尽きてきました。

 何か疑問点とかがなければ、あとは設定集で〆ようかなぁ~。


 最後に本編へのリンクを以下に貼り付けておきます。


📖『鬼姫は月夜に恋ふ』(本編)

https://kakuyomu.jp/works/16818093084547729539


 ご興味があれば、お読み頂けると幸いです。

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