第45話

「まだ何かがいる……」


俺たちが冒険者パーティーの亡骸を倒し、荒い息をついていたその時、リリスが周囲の気配に目を光らせた。彼女の言葉に、ノエルも弓を握り直す。


「これ……今までの奴らとは違うわね」


ノエルが険しい顔で呟く。遠くの闇の中、ゆっくりと重い足音が響き始めた。その足音は、一歩一歩がまるで地を揺らすかのような威圧感を持っている。


「来るぞ……!」


俺が刃を構えると、闇の奥から現れたのは、冒険者とは異なる異質な姿だった。全身を黒い鎧で覆ったその亡骸は、堂々とした立ち姿を保ち、右手には巨大な片手剣、左手には紋章が刻まれた盾を構えている。


「こいつ……ただの亡骸じゃない」


その姿を見た瞬間、言葉では説明できない重圧が全身を覆った。鎧の傷跡や剣の風格から、彼が生前どれほどの戦士だったかが伝わってくる。


リリスが低い声で説明を始めた。


「あれは!?……昔あった国の騎士団長よ。大昔、この世界で繁栄を誇った国があった。その国の最強の剣士として、名を馳せた人物……」


「その人が……亡骸に?」


「ええ。この階層で試練に挑んだ者が操られるなら、彼もその運命を辿ったのよ」


ノエルが苦い顔で呟く。


「生前の技術をそのまま使ってくるってことね……それも、歴史に残るほどの剣士の」


亡骸となった騎士団長は、言葉を発することなく片手剣を振り上げた。その剣筋はまるで空間を裂くようで、ただの一振りで強烈な風圧を生み出した。


「くっ……この威力……!」


俺は咄嗟に剣を構え直し、その攻撃を受け止めた。しかし、剣が激しくぶつかり合う衝撃で、腕に痺れるような痛みが走る。


「ゼラン!後ろに下がって!」


リリスが叫び、浄化の魔法を放つ。青白い光が亡骸を包み込むが、彼はまるでそれを無視するかのように動きを止めない。


「効かない……?魔法の抵抗力がこれまでの亡骸とは桁違い……!」


「それどころか、さらに速くなってる!」


ノエルが矢を放つが、亡骸は盾を一瞬で動かし、正確にそれを弾き返す。その反応速度は、生きている人間以上のものだった。


亡骸となった騎士団長は、言葉を発することなく片手剣を振り上げた。その剣筋はまるで空間を裂くようで、ただの一振りで強烈な風圧を生み出した。


「くっ……この威力……!」


俺は咄嗟に剣を構え直し、その攻撃を受け止めた。しかし、剣と刃が激しくぶつかり合う衝撃で、腕に痺れるような痛みが走る。


「ゼラン!後ろに下がって!」


リリスが叫び、浄化の魔法を放つ。青白い光が亡骸を包み込むが、彼はまるでそれを無視するかのように動きを止めない。


「効かない……?魔法の抵抗力がこれまでの亡骸とは桁違い……!」


「それどころか、さらに速くなってる!」


ノエルが矢を放つが、亡骸は盾を一瞬で動かし、正確にそれを弾き返す。その反応速度は、生きている人間以上のものだった。


「これが、生前最強と呼ばれた剣士の力か……!」


俺たちは全員で連携を取りながら攻撃を仕掛けるが、そのすべてが剣や盾によって防がれる。逆に彼の一撃一撃が、俺たちをじりじりと追い詰めていく。


「こんな相手をどうやって倒すのよ……!」


ノエルが息を切らしながら叫ぶ。リリスも、魔法を何度も放ちながら徐々に疲弊していく。


「……待って」


リリスが突然、何かに気づいたように声を上げた。


「彼の動き……何かに縛られているみたい」


「どういうことだ?」


「完全に自由に動けていない。操られている力が逆に、彼の本来の力を制限しているのよ!」


「それなら……その力を断ち切れば!」


俺はリリスの言葉に賭け、彼が動くたびに発生する奇妙な魔力の流れを探る。そして、亡骸が一瞬動きを止めた隙を狙い、刃を突き出した。


「そこだ!」


刃先が亡骸の胸元に刻まれた奇妙な紋章を貫いた瞬間、彼の体が激しく痙攣した。


俺が息を整えながら様子を見ると、亡骸の動きが完全に止まっていた。黒い鎧が音を立てて崩れ落ち、中から魂のような光が浮かび上がる。


その光は、一瞬だけ人間の形を成し、まるで感謝を伝えるかのように俺たちを見つめた。


「……操られていた彼が、やっと解放されたのね」


リリスが静かに呟いた。その言葉に、俺は剣を握り直し、亡骸だった騎士団長に一礼をした。


光がゆっくりと消え、辺りに再び静寂が戻る。俺たちは疲労を抱えながらも前へ歩みを進めた。

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