第34話

夕暮れが近づく中、ゼラン、リリス、ノエルの3人は「深淵のダンジョン遺跡」に挑むため、入念に準備を進めていた。


 この遺跡は、過去に数人しか攻略できなかったほどの危険な場所だ。


 1ヶ月分の食料、武器、回復薬、そして予備の装備を整えなければ、長期間の探索に耐えることはできない。


 リリスはまず、次元袋から保存食を取り出し始めた。


 乾燥した肉、パン、果物など、長期間保存が可能なものが中心だった。


「食料は1ヶ月分用意してあるけど、これだけあれば遺跡の奥深くまで進むのに十分だと思うわ。もし迷ったり、何か想定外の事態が起きても、最低でもこれで1ヶ月は持つはずよ」


 リリスは落ち着いた声で話しながら、次元袋の中に食料を詰め込んでいく。


 ゼランとノエルもそれに続いて、自分の分の食料を準備した。


 ゼランは保存食の袋を手に取り、軽く振って中身を確認した。


「1ヶ月分の食料って聞くと多そうだけど、戦闘中や探索での消耗を考えると、余裕を持たせておかないといけないな」


 ゼランは自分の次元袋に食料を入れながら、改めて体力管理の重要性を実感した。


 次に水の確保だ、ノエルは水袋をいくつも次元袋に詰め込みながら、周囲を見渡した。


「このダンジョンには水源があるかどうかもわからないから、多めに持っていかないとね。魔法で水を作り出すこともできるけど、魔力の消耗を考えるとそれは最後の手段にしたい」


 ノエルは自分の分の水袋をしっかり詰め込み、準備が整ったことを確認する。


 俺は頷き、彼女の言葉に同意した。


「そうだな。魔法はあくまで緊急時のために温存しておきたいし、できるだけ節約して進める方がいい」


 次に、3人は武器の確認に移った。


 俺は腰に装備した二振りの魔剣、炎の魔剣と風の魔剣を慎重に手に取り、刃の鋭さを確認した。


 彼は指で軽く刃をなぞり、その滑らかさに満足していた。


「この二振りの魔剣なら、どんな魔物が出てきても対処できると思う。炎の魔剣は強力な斬撃を繰り出せるし、風の魔剣は素早い攻撃ができる。両方をうまく使い分けることが重要だ」


 俺が魔剣を確認する間、ノエルも自分の剣を慎重に磨いていた。ダークエルフ特有の技術で作られたその剣は、非常に軽く鋭い。


「私の剣も大丈夫。ダークエルフの技術で作られているから、多少の激戦でも耐えられるわ。でも、長期戦になることを考えると、予備の武器も持っておく方が安心ね」


 リリスも自分の武器である弓をチェックしながら、魔法の巻物や魔道具も確認していた。


「弓も大事だけど、私の場合は魔法がメインだから、この巻物や魔道具が重要になるわね。特に強力な魔法を使う時は、巻物を使った方が魔力の消耗が抑えられるの。何が起こるかわからないから、準備しておかないと」


 彼女は巻物を丁寧に次元袋にしまい、さらに予備の矢も詰め込んでおく。


 ゼランは彼女たちの準備が整ったことを確認すると、自分の容量の多い次元袋を開いた。


「予備の武器は俺の次元袋に入れておくよ。容量が多いし、すぐに取り出せるようにしておく。いざという時に武器が壊れたり、使えなくなった時に備えてな」


 ゼランはリリスとノエルから預かった予備の武器を次元袋に収める。剣、弓、矢、そして予備の盾が次々と収納された。


 次元袋の容量が大きいため、余裕を持って装備を収納することができた。


「これで、戦闘中に武器が壊れても心配ないな」


 リリスが笑みを浮かべながら答えた。


「本当に便利ね、あなたの次元袋。このダンジョンは罠や魔物が多いって聞いてるから、何があっても対応できるようにしておかないといけないわ」


 次にリリスは防御用のアイテムを取り出し、ゼランとノエルに手渡した。


「このアミュレットをつけておいて。一度だけ、あらゆる攻撃を防いでくれる防御魔法がかけられているわ。深淵の遺跡では何が起こるかわからないから、絶対に忘れずに身につけて」


 ゼランとノエルはそれぞれアミュレットを首にかけ、その力を感じた。


 緊急時に役立つアイテムがあることは、精神的な安心感にもつながる。


「これで準備はほとんど整ったが、回復薬も忘れずに持っていかないとな」


 ゼランが言うと、リリスが次元袋からヒーリングポーションをいくつか取り出し、それを分けて手渡した。


「これで、戦闘中に怪我をしてもすぐに回復できるわ。深い傷や魔力の消耗を防ぐためにも、この回復薬は必須よ」


 ノエルは自分の分の回復薬を受け取り、腰のベルトに装着した。


「どれだけ慎重に進んでも、予期せぬことは起こるからね。どんな事態にも対応できるようにしておくに越したことはないわ」


 最後に、3人はそれぞれの装備やアイテムを確認し終え、リリスが深い息をついた。


「さて、これで準備は整ったわね。食料、水、武器、回復薬、すべて万全よ。あとは、しっかり体を休めて、明日の挑戦に備えましょう」


 俺は頷き、キャンプの準備が整った野営地に目を向けた。遺跡に挑む前の静かな夜。


 明日から始まる試練に備えて、俺達は体力と精神力を整えた。

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