第25話
翌朝、祭りの賑わいが終わり、エリュシアの街は片付けの風景に変わっていた。
通りには、まだ祭りの余韻が残りつつも、エルフたちが協力して祭りの飾りを片付け、広場を元の美しい姿に戻していた。
俺たちは街の人々に軽く挨拶を交わしながら、冒険者ギルドへと向かった。
ギルドの建物に入ると、暖かな朝の光が差し込む中、冒険者たちがそれぞれの活動に忙しそうに動き回っていた。
リリスがカウンターに向かい、ギルド職員に声をかける。
「依頼を無事に達成しました。ついでに素材も持ってきたので、買取をお願いします」
ギルド職員はリリスの言葉に頷き、手際よく書類を用意して受け取りの準備を始めた。
俺たちが集めた魔物の素材や依頼で回収した物を次元袋から取り出して並べると、職員の目が一瞬輝く。
「これほどの素材が揃っているとは、さすがですね。これでいくつかの高価な素材も揃いますし、ギルドにとってもありがたいです!」
「それは良かった。俺たちも役に立てたようで何よりだ」
リリスとノエルも隣で微笑みながら職員と話をしている。受け取った報酬はしっかりと確認し、今後の冒険のためにしっかりと貯めておくことにした。
「よし、これで一仕事終わりだな」と俺が言うと、リリスとノエルも頷き、満足げな表情を浮かべた。
エリュシアの街は、祭りの喧騒が終わってもなお、活気に満ちていて、冒険者としての俺たちもまた新たな挑戦を探しに行く気持ちが湧いてきた。
ギルドでの報酬を受け取り、ほっと一息ついたその時、ギルドの職員が俺たちに急ぎ足で近づいてきた。その表情はいつもと違い、何か緊迫した空気が漂っていた。
「ゼランさん、リリスさん、ノエルさん、少しお話ししたいことが……」
職員の声は少し低く、不安げな調子だった。
「何かあったのか?」俺は職員に問いかけた。
職員は頷き、ギルドの裏手にある静かな部屋へと案内してくれた。部屋に入ると、職員が切り出した。
「実は……最近、エリュシア周辺の森でアンデッドの数が急激に増えています。この報告が増え始めてからというもの、ギルドの冒険者たちも次々と出動していますが、なかなか減らせずにいます」
「アンデッドがこの辺りに?普段はあまり見かけない存在なのに……」
「それだけじゃありません」
職員は続けた。
「報告によると、過去に封印されていたリッチエンペラーの封印場所に近づくにつれて、アンデッドの数がさらに増えているそうです。この異常事態に、ギルドとしても対応を急がなければならないのですが…」
ノエルが険しい表情で尋ねた。
「封印に影響が出ている可能性があるということですか?」
「その通りです。まだ確実な情報ではないのですが、何らかの原因で封印が弱まっているか、または封印を狙った動きがあるのかもしれません」
「これは一刻を争う事態ですね」
リリスが真剣な表情で言う。
俺はしばらく考え込んでから、職員に確認した。
「アンデッドの発生源や原因について、何か手がかりはあるのか?」
「現時点では、リッチエンペラーの封印場所が最も怪しいとされています。ギルドマスターのイリオスも、この事態に対応するために動き出していますが、慎重に調査を進めるよう指示しています」
職員の話を聞き、俺はリリスとノエルに目配せをした。状況は緊迫しているが、何か行動を起こさなければならないと感じていた。
リリスが静かに口を開いた。
「この件に関わっているのがリッチエンペラーなら、私たちも協力しなければなりません。エリュシアと私たち自身にとっても放置できない問題です」
「今のところ手がかりが少ないけど、ギルドと協力して調査しよう」
俺たちはギルドからの情報をもとに、エリュシア周辺の調査を進めることに決めた。
アンデッドの異常発生の原因を突き止め、もし封印に影響が出ているのであれば、適切な対応が必要だ。
「アンデッドがこの辺りで増えているなんて……普通はこんな場所で見かけるものじゃないのに……」
リリスが声を震わせながらつぶやいた。
エルフにとってもアンデッドは異質で、忌避される存在だ。故郷エリュシアの近くでそんな異変が起きていることに、彼女は強い不安を感じているようだった。
「リッチエンペラーの封印がある場所だなんて…聞いたことがないわ。そんなところにアンデッドが湧くなんて異常よ」
ノエルも眉をひそめ、驚きと疑念を露わにした。彼女もまた、通常ありえない出来事に戸惑いを隠せない様子だ。
職員は真剣な表情で続けた。
「エリュシアの住人もこの事態を恐れています。特に、封印されていた場所が関係している可能性があるとなれば、今後の事態は非常に不安です」
「もしかすると、リッチエンペラーの封印が弱まっているのかも?でも、なぜ急に……?」
「リッチエンペラーが封印されてから長い年月が経っているはずよね?なのに、どうして今……?」
ノエルも呆然としながらつぶやく。
「リリス、ノエル、冷静に考えよう。これがただの偶然か、それとも意図的なものか、まずはそこを確かめる必要がある」
二人をなだめ、彼女たちも徐々に落ち着きを取り戻していった。
二人が頷くのを見て、俺たちはギルドと協力して、この不可解な事態の原因を突き止めることにした。
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