離島転生 異世界で『離島ブーム』が起こって観光客が止まりません
稲葉 かいと
離島転生
「ママー! 地図のここにある僕達が住んでる国から少し離れた場所にあるこの小さい土地はな〜に?」
「坊やここはね大昔に悪い事をした人がここに流されたと言われている離島『デッドアイランド』って呼ばれている場所よ。だから坊やもママの言う事聞かないと国の偉い人にここに送られちゃうかもしれないわよ〜」
「やだよ〜怖いよ〜。僕絶対いい子でいる!!」
「–––––––––––」
☆☆☆
「お〜いケイトや〜ご飯の時間じゃよ〜そろそろ釣りをやめて戻ってこ〜い」
「わかったよー爺ちゃん。今やってるの終わったら戻るよー」
ふ〜今日も大量大量! おお! これは刺身、スープ、素焼き、なんでも美味しい『クイーン・ロブスター』じゃないか!!! 今日はついてるぞー。僕も爺ちゃんもこの海老が大好物だ。今日の晩御飯はこれの刺身とグラタンに決まり! 強いて言えば味噌汁にしたいが味噌がな…。
爺ちゃんにも呼ばれてるしそろそろ家に戻るか。
「お〜いリバ〜! そろそろ戻るから、はいこれお前の好物の魔王いかのバター焼き」
「ガウッ〜♪♪」
「うまいだろ〜それじゃ俺は戻るからまた明日な」
僕の名前は《ケイト・アウレリウス》これといった特技や才能は無く、毎日爺ちゃんと幸せに暮らしている極々一般的な島っ子である。僕は360度海に囲まれている離島に住んでいて、楽しみと言えば釣りをしたり、海で泳いだり、森の中を散策したり、海の王であるリヴァイアサンの子供と海の上で遊んだりなどなんとも平和でゆっくりとした日々を送っている。
そんな平和で毎日楽しい日々を送っている僕だが実は前世の記憶があったりする。前世では都内にオフィスを構えた郵便会社に勤めていて、埼玉県にあるマンションを借りそこから毎日満員電車に揺られながら夜遅くまで目にクマを作りながら働いていた。近年では郵便だけでは会社が回らないと保険やら金融やらに手を出し、業務内容が劇的に増えその管理を任されていた僕は毎日実家のある伊豆諸島に帰省して釣りでもしながらゆっくり過ごしたいなぁと常々思っていた。激務続きの毎日についに僕の体も限界を迎え、僕は会社の食堂であじのフライを食べてる時に心臓に激痛が走り、そのまま倒れ込んで死んだ。
あぁ実家の島で獲れた新鮮な魚を食べたいな……。
そう思いながら視界が暗くなり、目が覚めるとそこは知らない天井だった。
あれ僕会社の食堂に居たはずじゃ…それになんだか体が妙に軽い気がする。
「サルファラアンスキルワカナンナ?」
英語でも日本語でもないその言語が聞こえた方を向くとそこには白く長い髭を生やしたいかにも強者感溢れたローブ姿の老人が僕に話しかけてきている。
「あのここはどこですか? それになんだか体が変な感じがして…」
あれこれ元の僕の声じゃない…それに手も足も随分と短くなってるし顔の髭だって…。
「ダラミニュサランバンゲンゴ?」
これって漫画やアニメでよくある異世界転生ってやつなのか? 老人が話す言葉は僕が生きてきた中で聞いた事もない言語、確信をついたのが老人の持っている杖が宙に浮いていた。こんな状況なのに全く焦りもしないのは、俺の住んでいた日本という国で異世界系とゆうコンテンツが充実していたからなのだろうか。
「ごめんなさい…何を言っているのか理解ができなくて」
白髭の老人は自身の杖を握り何か呪文の様な物を唱えた。
「おいお主や体は大丈夫かの? 言葉が通じない様じゃが翻訳魔法をかけた今は通じておるか?」
あれ急にお爺さんが何言ってるのか理解できるぞ? 翻訳魔法って言ってたか?
この世界魔法があるんだ!
僕はそこまで異世界とかに興味があったわけではないが流石に魔法と聞いたら少し胸を躍らせられる。
「あの…何言ってるか分かります。ここは一体どこなんでしょうか?」
「おうおうよかったわい。お主ここがどこか分からぬのか? ここはかつて罪を犯した者が流されたと言われておる離島、通称『デッドアイランド』じゃ。聞いたことは無いかの? お主が砂浜に倒れていた所を儂が見つけてここまで運んだんじゃが。何か覚えていないかの?」
僕は爺さんの言葉を聞くや否やベットから飛び出し玄関と思わしき場所から外へ出た。
聞こえてくる波の音、嗅いだ事がある様な海風、なんだか実家を連想させるオーシャンビュー。
本当にここ島だ…。まだ海に面している土地なだけって可能性もあるが、直感的にここが島である事が分かった。そしてここが明らかに僕が住んでいた世界とは違うと確定させるものを目にする。海岸線のはるか上空に宙に浮いている大地があったのである。
目を丸くし、困惑をしている所にさっきの老人が僕の所にやって来た。
「お主大丈夫か?何か思い出したかの?」
「その…実は僕…」
僕をここまで運んでくれたと言う老人に僕は前世の記憶があり、気がついたらここに居たとゆう事を包み隠さず全て話した。
「なるほどのぉ…そんな不思議な現象は長年生きてきたこの儂でも聞いた事がないのぉ。それでお主名前はなんというのじゃ?」
「僕の名前はケイトって言います」
「そうかケイトか! それでケイトやこれから行く当ても頼れる者もおらんじゃろ。どうかのお主がよかったら儂とここで一緒に住まないか?」
「え!! 見ず知らずの僕をここまで運んで来てくれた上にここに住まわせてくれるんですか? そこまでしてもらう理由がありませんよ…」
「儂はここにずっと一人で暮らしておるんじゃが、なんだか最近とても寂しくてのー。周りの島民達は皆家族がおってそれが羨ましいと思っていた所なんじゃよ。どうやらお主の見た目的にもまだ一人で生活するには幼すぎるし、儂の孫になるっていうのはどうじゃ?」
ついさっき出会ったばっかりの老人の孫になるなんて普通じゃあり得ない話だが、今は状況が状況だし…せっかくここまで言ってくれてるのに断るのも悪いよな。
「そうですね…お爺さんがそこまで言って下さるのならどうかよろしくお願いします」
「おーほんとか! そうじゃ儂は《ルシウス・アウレリウス》という名なんじゃがお主も今日からアウレリウスを名乗るのじゃ! それに儂を本当の祖父だと思い接してくれて良いからの〜。だから堅苦しい話し方はなしじゃ!」
「そうですか…あっそうするねおじいちゃん…」
「慣れるまでは時間がかかりそうじゃの。それにケイトにはこの世界の言葉を教えなくてはのぉ」
「今日からお世話になりますルシウスお爺ちゃん」
これがこの世界に来て爺ちゃんと出会うまでの経緯だ。
爺ちゃんと出会ってから早10年、今ではすっかり本当の祖父と孫の関係である。転生先が異世界の離島だったのは僕が死ぬ直前に実家のある離島に帰省したいと思ったからであろうか? なんであれ前世の激務から解放された僕はこの異世界の離島で、のんびり離島生活を謳歌していた。
「爺ちゃんこれ見て見て! クイーンロブスター釣れた!! それに鉄砲貝に紅蓮イカも取れたし今日はシーフードパーティーだよ」
「それは誠か!? 儂はケイトが作るシーフードグラタンが大好物なんじゃ。流石儂の孫、滅多に獲れない食材ばかり獲ってきよる」
「へへへ。釣りには自信があるんだよ! それに昔からずっとやってきたからさ」
「そうじゃったの〜昔からケイトは呼びに行かないと日が暮れるまで釣りに夢中だったからの〜」
「そういう爺ちゃんは魔道具作りは順調なの? 昨日は失敗したとか言って黒い煙上げてたけど」
「ケイトが言っておった電球なる物を作っておるんじゃがなかなかうまくいかなくての〜。そもそも電気を生み出すのに儂の雷魔法を使っておるんじゃが威力が強すぎてすぐに道具が割れてしまうんじゃよ。なんとかならないかの〜」
そう僕の爺ちゃんことルシウス・アウレリウスは大昔にこの世界を救った大賢者で爺ちゃんの存在を恐れた国の王族によって罪人にされ、この島に島流しされて来たとゆう。それが本当なら一体爺ちゃんは何歳なんだろうか…。いつでも爺ちゃん程の魔法使いなら瞬間魔法で本土に戻れる様だが、すっかりこの島を気に入ってしまい何千年とこの地に住み続けているそうだ。
「ん〜僕に聞かれても魔法の事はからっきしだし、電球の構造とかまでは分かんないしなぁ」
「ケイトよそもそもお主が住んでおった所には魔法自体がなかったんじゃろ?それではどの様にして電気なるものを生み出していたのじゃ?」
「ん〜それは、発電所って言って大量の電気を生み出す装置があってそこから僕達が使う分だけその装置から電気が送られてきて…。僕も当たり前のように使ってたから詳しい事はよく分かんないよ」
「なるほどのぉ。電気を生み出す装置とはのぉそれが当たり前に使えていたとは、ケイトが住んでいた世界には驚かせさせられるわい」
「それなら魔法が使えるこの世界こそ驚いたよ!僕が住んでいた世界より断然すごいじゃないか」
「何を言っておる、魔法が使えると言ってもほとんどは生活魔法の様な簡単な魔法しか使えない者しか居らんのじゃ。雷魔法のような強力な魔法を使える者はこの世界に数える程しか居らん。つまり電気なるものを当たり前に使えていたお主の世界がおかしいのじゃ」
「そうなのかな〜僕は魔法とか憧れちゃうけどな〜」
異世界転生者だからなのか、そもそも才能がなかったのか僕はこの世界で当たり前の魔法が全くと言って良いほど使えない。最初は折角魔法が存在する世界に転生したのに魔法が使えないなんてと落ち込んだが、魔法がなくたって十分幸せに暮らせているので今では全く気にしなくなった。
「そもそもどうして電球に興味持ったの? 他にも沢山色々教えたじゃん」
「そうじゃの〜電球があればこの島に住まう者達の生活をより一層豊かに出来ると思ったからの〜それにわしの店も電球があれば夜まで開けるしの」
大賢者である俺の爺ちゃんはこの名前がとても物騒な島で数少ないお店を開いている。お店といっても貨幣や紙幣はなく店に来た人との物々交換をしながら店が暇な時は魔道具の開発に励んだりと趣味の一環でやっているそうだ。なんのお店かと言ったら僕もよく分かっていない。多種多様な物が店には並んでいて俗に言う雑貨屋みたいな感じだ。それでも日に何度かは客が店の物を買いに訪れている。
「そうだね〜もし電球が普及すればこの島に住んでる人達の暮らしはガラッと変わるね〜。僕にもっと学があったら電球の仕組みとか作り方とかわかったのになぁごめんね爺ちゃん」
「良いのじゃ良いのじゃ最初から全て分かっていてはつまらんよ、失敗を繰り返して成功することに意味があるのじゃ。わしも長い事生きて来たからの〜そういう事でしか喜びを感じなくなっての〜」
何千年と生きてたらそうなってしまうのも当然なのかもな〜。僕は爺ちゃんの役に少しでも立ちたいと思い前世の記憶を必死に巡らせた。ん〜電球電球…小学校の時確か理科の授業で豆電球のキットみたいので豆電球の実験したな〜。懐かしいな〜あの時は並列と直列の違いがよく分かんなかったけな〜……あっ電池だだだだ!!。
「爺ちゃん! 今思い出したんだけど電球とかの電力をそんなに必要としない物には電池っていう物が使えて、簡単に言うと電気エネルギーを蓄えておいてそこから必要な分のエネルギーが流れて電気を使う事ができる道具の事なんでけど何かいいヒントにならないかな」
「ほう電池とはのぉそれもまた便利な代物じゃの〜。電気を蓄えておくか……。もしかしたらあれが使えるかもしれないの〜」
「あれって?」
「それはのぉこの島でしか採れない希少な鉱物、
こうして俺と爺ちゃんは光火石なる石を採りに行くことになった。
※ここまで読んで頂き誠に有難うございます。面白い、続きが読みたいと思って頂けれたらレビュー、応援、フォローの程よろしくお願い致します。連載の励みになります。
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