35話 朝食と案内
外が明るくなった頃、俺は感謝の意を込めてある物を人数分完成させた。
「カブト様!これは皆様喜びますよ!」
「チャコンさんがそう言ってくれるなら早起きして正解でした」
俺はまずチャコンさんの分を手に取る。
「これはチャコンさんの分です。ちょっと後ろ向いてください」
「はいです!」
俺はチャコンさんの髪にある物を飾り付ける。
「カブト様!コンは…似合ってます?」
「とても似合いですよ!」
「初めて殿方から贈り物を頂きましたです!コンは嬉しいです!」
「喜んでもらえて良かった。これを〈異空間収納〉に仕舞ってと…」
「カブト様、そろそろお時間なので、朝食を食べに行くです!」
「はい!行きましょう!」
俺とチャコンさんは、夕食で来た部屋に移動すると、ラルトさんが待っていた。
「ラルトおはようございますです!」
「ラルトさんおはようございます」
「チャコン、カブト様おはようございます。チャコンの髪を束ねている姿、似合ってますよ」
「ココンッ!?これは、カブト様に頂いたものです!」
「良い関係が築けているようで安心しました」
「ラルトさんの分もありますよ」
「なっ!?」
〈異空間収納〉からある物を取り出しすと、クールな雰囲気のラルトさんが、引き気味になってる。
「カブト様!それをコンに貸してくださいです!」
「はい、いいですよ?」
俺はチャコンさんに渡すと、ニヤニヤした顔で口を開く。
「カブト様、先に部屋で待っていてくださいです!」
「わかりました」
入室した後、昨日着席した席に座る。
廊下からは、チャコンさんとラルトさんの声が響く。
「チャコン、待ちなさい。自分でやりますから!」
「コンに任せるのです!」
しばらくすると、ラルトさんとチャコンさんが入室して来た。
「カブト様!ラルトの髪型見てください!」
俺はラルトさんの髪型が変わり言葉を失いそうになるが、口を動かす。
「ラルトさん、とても美しいです。まるで青バラが咲いているかのようです」
「カブト様は、褒めるのがお上手ですね…」
「自分に自信持ってくださいです!ビャビャ会長も驚きますよ!」
「朝から元気だねぇー。チャコンとラルトの髪飾り似合ってるよぉ」
俺は束の間の方に向くと、ビャビャさんが座っていた。
「もちろんわっちの分もあるかぃ?カブト坊ちゃんやぁ」
「はい!ありますよ!」
「カブト様、ワタクシがお預かりしておきますね」
「はい、お願いします。これはクルトさんに渡しといてください。袖を捲る用です」
「畏まりました」
俺はラルトさんに渡した後、ビャビャさんの隣に行き、手渡した。
「おやぁ、懐かしい…紫柄シュシュやねぇ。カブト坊ちゃんありがたく貰っとくわぁ。もし
「そうですね。昨夜方針を決めたばかりなのに、本末転倒するところでしたね」
「コンは、何も聞いてないです!」
「それは、俺が聞いていい内容ですか?」
「今は内緒やよぉ。近々わかると思うけどなぁ」
「…分かりました」
俺は、チャコンさんに黄柄のシュシュ。ラルトさんには青柄のシュシュ、ビャビャさんには紫柄のシュシュ、料理番のクルトさんには黒色の袖捲りバンドを作ってあげた。
「この贈り物は、色の意味合いも兼ねてるなぁ。まさにそのとおりやなぁ」
「バレましたか」
「コンのシュシュの意味教えて欲しいです!」
「チャコンさんは、パッとした明るさと見ていると幸福感を感じたので、黄色にしました」
「ココンッ!?コンは、嬉しいです!大切に使います!」
チャコンさんは、隣で上機嫌になり、ラルトさんは考え込みながら口を開く。
「カブト様、ワタクシの青色のシュシュですが、平静という意味で合っていますか?」
「そうですね、ラルトさんにはピッタリだと思います」
「ふふっ、ありがたく使わせてもらいますね」
ラルトさんが手を口に当てながら笑うと、髪型が相まって美しさが際立っていた。
作ってよかったなと思っているとビャビャさんは口を開く。
「さて…一旦、朝食にするかぃ」
ビャビャは昨夜と同じく、袖からベルを取り出し鳴らす。
「おはようございます、皆さま!」
クルトさんが挨拶をすると「おはようございます!」とそれぞれ返事を返す。
配膳が終わると、クルトさんは再度、口を開く。
「本日の料理は、
チャコンさんの方を見ると、綺麗に盛られている角煮と白米、豆腐となめこの味噌汁、きんぴらごぼうの胡麻和えが並んでいた。
もちろん、俺は具材の入っていない汁物のみだけど、凄く美味しい予感がする。
「では、頂こうかぃ」
「「「いただきます!」」」
俺は汁椀を持ち、蓋に空気を入れて開けると、明るい茶色をしたスープだった。
汁椀を口に付けて流し込む。
(濃厚でコクのあるスープだ。白い葱と牛肉を炒めて旨味を最大限閉じ込めて、鰹節と昆布の出汁で一晩寝かして溶かしたのか!?炒め具合によって、ここまで味が出るなんて知らなかった!昨晩の呉汁と同等に美味しすぎる)
汁椀を持って夢中に飲む俺の姿にチャコンさんは呟く。
「カブト様の和風スープ美味しそうです…コンは我慢して、角煮を食べるです!」
「おかわりあるから、たんまり腹を満たしておけよー!」
「はい」「はいです!」
「クルトの料理の腕が上がって、姉としてワタクシは誇らしいです」
「そうやなぁ。カブト坊ちゃんが来てくれて良かったよぉ」
やっぱり、ラルトさんの弟だったんだと俺は思いながら、汁物を堪能したのだった。
◇
その後、朝食を食べ終わって、ビャビャさん以外「「「ご馳走様でした」」」と言った後は、チャコンに食材を買い出しに行ってみたいと相談してみた。
「それならコンが、この村の案内をするです!」と返事が返ってきたので、お言葉に甘える事にした。
現在、クルトさん以外は古旅館の玄関前にいる。
「カブト坊ちゃんなぁ、楽しんでいってらっしゃいなぁ」
「ビャビャ会長とワタクシは、役所の方に行きますので何かあれば、昨日の場所へお越しください」
「はい、分かりました!」
「ラルトとチャコンはぁ、シュシュを着けたまま行くのかぃ?」
「コンはシュシュを着けていくです!」
「そうですね。ワタクシも着けたまま仕事をしようかと思います」
「ラルトとチャコンの雰囲気が変わって、村の者は驚くやろうなぁ」
「大丈夫なんですか?」
「大丈夫やと思うけどぉ、面白い事にはなりそうやなぁ」
「えぇ…」
ビャビャさんが目を細めて言うのは間違いないと思い、不安になるが、その際は、俺が何とかしようと思うのだった。
「それじゃあ、行ってきます!」
「カブト様と案内行ってくるです!」
「行ってらっしゃいなぁ」
「カブト様、チャコン、行ってらっしゃい」
俺とチャコンさんは、竹林道の石畳を踏みながら進む。
「チャコンさん、最初は何処に連れてってくれるんですか?」
「コンは、朝市に行こうと思ってるです!朝市とは、昼時になる前までやってる市場の事です!」
「それは楽しみです!」
竹林道は、優しい風が当たり、さわさわと笹が鳴り響き、心地よく道を通り抜けると、様々な獣人がいる朝市の入り口前に辿り着く。
「あれ?昨日の入る場所と違うような?」
「帰った後にコンが教えるです!」
「はい、お願いします」
昨日、寝る前にチャコンさんに言われた、古旅館に辿り着けないという言葉が引っ掛かる。
疑問に思いながらも、朝市の賑わう道を進むのだった。
◇
カブトとチャコンが朝市に辿り着いた頃、古旅館の厨房では、クルトさんが皿洗いをしていた。
「クルト居ますか?」
「なんだい?姉さん」
「カブト様の贈り物を届けに参りました。作業したままで良いので、腕周りに付けますね」
「ほん?」
ラルトは、クルトの腕周りに袖捲りバンドを付けた。
「おお!?これは袖を捲る用のバンドだな!これは楽だな」
「腕の締め付けは大丈夫ですか?」
「ああ、これぐらいなら問題ない」
「じゃあ私は、役所に行きます。ちなみに汁物分けてくれませんか?」
「そりゃあ、姉さんでもお断りだ!カブト様用なんだからな!」
「そうですか。カブト様の汁物で納得行かないときは、味見して私も考えてあげますよ」
「そうならないよう、頑張りますよっと!」
厨房で一人になったクルトは、袖捲りバンドのお陰で、作業スピードが上がったという。
昼前には休憩を挟んで、夕食の準備に取り掛かる余裕が出来て、クルトは上機嫌だったとか。
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