第15話 異変と挑戦者
レヴィアはいつも通りダンジョン運営をしており、映像モニターを見ている。
その間にクッションで寛いでいた俺は、早朝の出来事に悩んでいた。
ナイアに妹が出来るのかという、トンデモ質問をされた事を…。
「本日ワシは、数日間ダンジョンの変化を見てなかった故、ダンジョン運営するのじゃ!カブトの出現した件があるとは故、世界で何らかの変化が起こっている可能性が捨てきれぬ。カブトよ、ゆっくり英気を養うと良いのじゃ!」
レヴィアの言葉に甘え、俺は近くで寛いでいる。
のんびりしながらも、ナイアの妹か…と、俺は考えている。
俺はそもそも鎧だし、今は小人形で、一応上位精霊の類であるのは、間違いないと思う。
人形に装備中の俺には、生殖系の機能はないので、遊戯の神の賭けに勝ち、俺の身体を作ってもらう他ない。
特別な身体がなければ、叶わない事になるだろう。
レヴィアなら知ってそうだが、行きつく先は、
俺が戦闘する為の仮の身体なら、ナイアが作れるので、限度と言うものがあるのだろう。
やはり超越する事が出来るのは、アメモが言っていた神界に住む神だろうと俺は思う。
レヴィアは水神と言っていたが、作り出されたものを更に作り替え、上書きするは容易ではない事が想像できる。
「今すぐ考えても仕方ない。やっぱり、妹的存在か…ん…?もしかして!」
ナイアは、レヴィアに創造された眷属であり、俺たちの娘であるのは間違いない。
愛情持って接しているが、積極的に甘えられた事が無いので、内心寂しがっている可能性がある。
レヴィアも寂しがり屋だったので、親は子に似るのかもしれない。
ナイアは今、フロマとモルビエがナイアの相手をして、木の棒を投げて遊んでくれているので大丈夫だと思うが、俺とレヴィアとナイアの3人の時間を稽古以外にも作る必要がありそうだ。
心配なのは、フロマとモルビエも一緒に遊ぶのが乗り気じゃない時がありそうなので、妹的存在の確保は必要事項だ。
友達でも家族でもいいので、寂しさという感情は、家族がいるなら親をもっと頼るべきだと思う。
必要以上に甘えてこないので、俺に気を遣っている可能性が捨てきれない。
「そうと決まれば、相談するか!」
俺は、レヴィアに声を掛けに行くのだが、ダンジョン内で異常事態が発生するとは俺も予想外だったという。
◇
レヴィアの監視スタイルは、ヘットホンをしながら眼鏡をかけていた。
前世の仕事で見慣れたスタイルだった。
「レヴィア、今平気か?って、ダンジョンに
「うぬ?カブトも一緒に見るかの?今ワシは、挑戦者が珍しく来ているのを監視しておったのじゃ」
「一緒に見よう!って、タイミングが良過ぎないか?」
「そうなのじゃよ。この装置を頭に着けてみよ」
レヴィアからヘットフォンを渡された瞬間、俺のサイズに合わせて小さくなった。サイズの変更機能が付与されてるらしい。
「ヘットフォンがこの世界にあるなんてな」
「お主の異界ではあったのかの?」
「そうだな、仕事する時も、趣味で使う時も普通だったからな。レヴィアがダンジョン運営の様にな!」
「興味そそるのう。だが今は、挑戦者が来ておる。この挑戦者を監視するのも面白いと思うのじゃ!カブトよ、ちこう寄れ!」
俺はヘットフォンをして、レヴィアの太ももに誘われて座わった後、俺の見やすい位置まで、椅子の高さを変更してくれた。その上、ワンピースの布越しから伝わるレヴィアの太ももは、柔らかかった。
堪能していたのも束の間、ヘットフォンから狂人の声が聞こえてきた。
『私は、あの国を絶対に滅ぼす…その為に…アハ‥‥ハハハハッ!』
「この娘…変じゃないか?憎悪を感じるんだが…」
「十中八九、遊戯の神の差し金じゃろう。映る通り、狂暴さが異常じゃ」
レヴィアは、ジッとしながらモニターを見つめていた。
地下水路が続く迷路エリアだ。
ワニ型魔獣のバジロス(Lv58~65)達を炎属性のボール次々飛ばし、轟音を立てながら葬り去り、血の海と化していた。
「これって不味くないか?階層主が手に負えないんじゃないか?」
「ワシの階層主たちを舐めるでないぞ?カブトよりは、倍強いぞ!」
「俺の切り札よりもか?」
「…それは、お主の切り札の方が強かろう」
「不安になってきた…」
「稽古の成果として、お主が行けばよいじゃろう。切り札を使って良いぞ」
「分かったよ。見てる所の階層主を突破されたら、あの娘の相手をする。俺自身の力が、どれほど通用するか知りたいからな!」
話していく内に、彼女の身体は龍化を進め、ドラゴンの様な赤い皮膚を持ち始めた。
レヴィアは驚いた顔もしながらも、目を細めながら呟く。
「此奴…ワシの知り合いの眷属と混ぜられたかの?じゃが、眷属でも簡単にやられる奴ではなかったはずじゃ…」
「どうしたんだ?そんな深刻な顔をして」
レヴィアは、何を見て思ったのか分からないが、カブトの疑問顔を見て、ニヤリと笑った。
「お主、あの娘の龍化を止めるのに、ちょうど良い方法があるぞ?お主の〈解除〉スキルじゃ!」
「え!?〈解除〉って、装備を外す為だけのスキルじゃないのか?」
「本来はそうなのじゃが、相手に使う場合、相手の身体の何処かに、お主の手が触れておれば、全ての状態を消す事が可能なんじゃ!つまり、体術を鍛えておる今なら、丁度いいかもしれぬの」
「成程な!相手にとっては相性が悪い訳か」
「そうじゃのう。それと次の階層でお主が相手するのは、お主が生まれた森林地帯エリアじゃ。その階層主として、相手してくるのじゃ!森林エリアとボス部屋ならどっちが良いかの?」
「炎属性ぶっ放してくるなら、ボス部屋の方でお願いしたい」
「じゃあ、お主には特別に深海エリアのボス部屋を使わせるかの」
レヴィアは、キーボード操作をして、俺の名前を黒兜と階層主に登録した後、いつでもボス部屋に飛ばせるように準備した。
その間に半龍化している娘は、ボス部屋に辿り着き、前世のテレビで見たネッシーに似たボスのブレシオス(Lv80)という魔獣の戦闘中に入る。
水属性の蜥蜴と
水属性なら火属性と相性がいいが、炎属性になると水属性との相性が最悪らしい。
映像を見ていると、水蒸気が発生し、霧だらけになっていた。
視界が悪い上に、半龍化している娘の方が
霧が晴れるころには、一方的に殴られて消えてしまう。
「お主の出番な様じゃよ!ナイアも異変に気づいて、丁度戻ってきたぞ」
ナイアは扉を勢い良く開けて、フロマとモルビエと一緒に戻ってきた。
「狂暴な気配…私の出番?」「ワフッ!」「ワンッ!」
「そうじゃよ!その後は、ワシと一緒に此処でカブトの応援じゃよ!」
「フロマとモルビエには悪いが、此処を頼む。ナイア、俺の出番が来たら、仮の身体を頼む」
「うん!…任せて!」
俺は、ナイアを優しく撫でた後、フロマとモルビエに謝りながらワシャワシャして、行動に移る。
フロマとモルビエは「グルル…」「クーン…」悲しそうにしていたけど…
出番が迫っていたので、ステータスを確認して、新たなスキルを取得しようか対策を練っていたが、レヴィアの稽古により、手に入れたスキル〈威圧耐性〉〈水龍拳〉〈受け流し〉と〈解除〉で、現在の全力で戦いに挑む。
ちなみにボスらしい事をしたかったので、内緒で〈威圧〉と〈
俺が取得できるか怪しかった〈水槍〉を習得出来た理由は、前世に関係しているのだろうかと疑問を持ちながらも、戦いの準備を進めるのだった。
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