鎧になった俺の始まりは、宝箱でした

クロノヨロイ

ダンジョン編

第1話 プロローグ



 始まりは、あの世だと思っていた所へ転生した感じだ。

 仮想空間を体験しているかの様に、真っ暗闇の中、動けないでいる。

 身体は無く、狭い空間に閉じ込められており、平常心を保つのがやっとだ。

 どのくらい時間が経ったか、何に転生したのか、俺は理解していない。


 精神が不安定になりそうだった俺は、『ステータス』と唱えてみると、目の前にステータスが映し出された。

 この時、転生先は『人間でお願いします!』と願っていたが、希望観測に過ぎなかった。



【黒兜】


 種族:鎧 

 レベル:1/50

 耐久力:100/100

 攻撃力:0

 防御力:1000

 魔力:100

 俊敏力:100 

 幸運:1000

 マナ:500/500


 スキルポイント:10

 スキル:〈装着変形〉〈解除〉〈並列思考〉〈憑依〉〈自動修復〉〈自動マナ回復〉

 称号:自我を持つ鎧、転生者



よろい!?…俺は、鎧になったのかぁぁぁ!?』


 人間以外かもしれないと、薄々気づいていたが、鎧ワードが衝撃過ぎた。


『せめて…他の生物にしてくれよ…もしかして、装備する人がいないと、一生このままじゃないよな…?』


 これが、俺の始まりだった。

 

 

「あーあ。悪戯イベント失敗かな?…まあ、いっか!レヴィアがどうにかしてくれると思うしー!放っておこうーっと」


 この時、子供の姿をした人物が、別の場所から見ていた。

 興味が失せたのか、次の悪戯に手を付け始めたという。







 俺の転生前について、少し教えておく。


 名前は、世にも珍しい黒 兜くろ かぶとと言う。

 由来は、武士の家系だったという意味らしいけど、よく分からん。

 覚えていることは、30代になる前までだ。


 人間だった頃の趣味は、スマホやパソコンで、異世界ジャンルを電気書籍で読みまくる事だった。読むのは大好きだったし、物語を作れる作家にとても憧れていた。

 近場には本屋は無いので、ネット頼りだった。


 1日のルーティーンは、5時半に家を出て、早朝6時は、カフェでモーニングメニューを作り続ける。10時頃に休憩を挟んだ後は、ランチメニューを作り、13時過ぎに退勤。その後は趣味に没頭するか、小説を執筆するかの2択だった。

 気付けば、夜中の2時頃という毎日だっだ。

 休日は、その疲れを取るために寝っぱなしだったかもしれない。


 ちなみに、執筆した物語は、一作だけ。

 ある夢の中でこれだ!と思ったのがキッカケで、夢で見た内容を忘れない様に、メモ帳を近くのローデスクに置いて、起き上がったらペンを動かした。

 4畳の部屋で、何か月も時間を掛けて投稿して、スクリーンと睨めっこしながら、何度も読み直して、タイピング執筆してたものだ。…たぶん、今もどこかのサイトに掲載されているかもしれないし、データファイルに入っていると思う。


 物語は…何て書いていたのか、時間が経ちすぎて、思い出せないし覚えていない。 

 俺の記憶を呼び起こしてしまえば、駄作だったと失笑されるかもしれない。今は、心の内にしまっておこうと思う。とても充実した毎日だったと記憶しているが、黒歴史かもしれないので、思い出さないことを祈る…


 ちなみに、自分の死に際を知らないから、孤独死だと思う。







 という衝撃と共に、ステータスから目を背けて閉じてしまったが、周りが暗闇のお陰で、落ち着きを取り戻し冷静になった。


『今の状況から何か出来ないか、一旦だけど、ステータスを見るしかないよな』


 俺の目は、ステータスのスキルの部分に注目していた。

 スキルの中には、〈変形装着〉〈解除〉〈並列思考〉〈憑依〉〈自動修復〉〈自動マナ回復〉があり、その中で俺が一番気になったのは、〈変形装着〉である。


『装着できるっていう事は、種族を問わないってわけか?…何でも装備出来るなら、発動してみる価値があるかもしれない!』


 俺は、試しに発動してみた。


『〈変形装着〉!』


 意識が持って行かれ、流動性をびた液体になり、変形し始めた。意識がはっきりすると、部屋らしき空間であった。予測では、ダンジョンの部屋の中だと思われる。何に変形して装備したのか分からない俺は、ステータスを再度確認してみた。


【黒兜】


 種族:鎧 (宝箱)

 レベル:1/50

 耐久力:100/100(+0)

 攻撃力:0(+0)

 防御力:1000(+0)

 魔力:100(+0)

 俊敏力:100(+0)

 幸運:1000(+0)

 マナ:490/500(+0)


 スキルポイント:10

 スキル:〈変形装着〉〈解除〉〈並列思考〉〈憑依〉〈自動修復〉〈自動マナ回復〉

 称号:自我を持つ鎧、転生者



 種族欄に()と追加された。もう一度見ても、の文字があった…



『俺は…宝箱に装備したのか?!せめて動けそうな、ミミックにしてくれ~~~!』


 宝箱に装備してから、2度目の冷静さが無くなった俺は一旦、落ち着くことに集中した。視界が変わった先も周りが暗かったら、更に発狂していたかもしれない。

 俺が今の姿を見たら、絶対可笑おかしい事になってる気がした。    

 今は、鏡や反射するものがない為、自分の姿を見ることはできない。

 想像すると、銀色のレア箱みたいな姿をしていると想像できてしまう。

 自身のイメージと違えばいいけど… 







 俺は宝箱の中で生まれ、身動きが取れない事が分かった。

 そして、〈変形装着〉を試した結果が、宝箱の状態だった。


『動いてみようとしても…無理そうだ。宝箱だからなぁー』


 何とか移動しようと試みたが…無理だった。

 それでも今の状態を、前向きに捉えるしかないだろう。

 暗闇に閉じ込められたままより、景色が変わる方がマシだっだ。

 周りを見渡すことができるのは、大きな一歩と言える。

 

『それにしても明るいな』


 ふと見渡した所、壁にランプのような光る石が埋め込まれており、部屋は石造りになっている。扉は、両手扉で大きい。


『抜け出すには、あの扉だろうな…頑丈そうだ』


 俺の想像では、階層主のボス部屋から続く報酬部屋、或いは隠し部屋の可能性がある。誰か来ない限りは、開かないだろうと俺は思う。


『ステータスを見る限り、残りはステータスポイントだよな…』


 スキルポイントが10もあった。

 異世界ジャンルを読み漁った俺には、この世界に存在するスキル取得を行えると踏んでいる。ただ、何のスキルが取得できるか、どのくらいポイントを使うかは不明だ。

 

 鎧に関する内容であれば、スキルを取得できる可能性が大いにある。

 鎧の知識に関しては、防御系統や補助等しか思いつかないので、俺の自称ファンタジー知識を使う事にしよう。


 スキルポイントは、10しかない。

 慎重に行かなければ、長い期間をこの部屋で過ごす事になるのは、明白だった。

 俺は色々なスキル想像をしつつ、スキルポイントをどのくらい使うかわからない以上、慎重に考えた。


『まず、移動がどうしようもないから、〈浮遊〉は取りたい。あとは、エネミーを自分の物にして、動かせる系のスキルがいいかも』


 考えた結果、〈マリオネット〉という、通称操り人形が思い浮かんだ。

 対象が魔物や人で、掛った相手を意のままに操って動かせる事が可能だろう。

 自分の主、或いは依り代を見つけた後も役に立ちそうだからという理由で、スキル取得を行ってみる。


『スキル取得、〈マリオネット〉にスキルポイントを使用!』


 自身の中から失った疲労感と増えた感覚があった。

 簡単に言うと、少しの倦怠感を感じたぐらい。

 ステータスを確認すると、スキルポイント5とマナが減っていた。

 スキル欄を確認すると、無事に〈マリオネット〉が追加されていた。


『残りポイントがあるなら、スキル取得、〈浮遊〉〈マップ探知〉!』


 倦怠感を感じたので、スキル取得に成功した様だ。

 再度確認すると、スキルポイントは、0になっていた。


 ちなみに、自分の中で思い付いた作戦がある。

 習得した〈マリオネット〉でエネミーが

自身のスキル発動範囲内に入れば、〈従魔契約〉と違って、エネミーを強制的に味方にできるし、〈浮遊〉で空中移動できれば色々と楽だと考えた。その上、〈マップ探知〉を使えば、エネミーを簡単に探し出せると考えた。空中からの視界が悪かったら、エネミーに憑依すれば良いと思ってる。


 『最初は、スキルの確認からするか‥‥』

 

 その数分後の俺は、こう呟いた。

 

 『翼のない空飛ぶ宝箱…』



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2024年11月1日 19:05
2024年11月2日 00:05
2024年11月3日 08:05

鎧になった俺の始まりは、宝箱でした クロノヨロイ @TeaArce527

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