鎧になった俺の始まりは、宝箱でした

クロノヨロイ

1章 ダンジョン編

第1話 始まりは鎧?

 




 始まりは、あの世だと思っていた所へ転生した感じだ。

 身体は無く、狭い空間に閉じ込められており、真っ暗闇の中で動けない。

 俺は「どうすればいいんだ…」考え込んだ。


 精神が不安定になりそうだった俺は、仮想世界なら…と思いながら、『ステータス』と唱えてみると、目の前にステータスが映し出され、俺は目を疑った。



【黒兜】


 種族:鎧 

 レベル:1/50

 耐久力:100/100

 攻撃力:0

 防御力:1000

 魔力:100

 俊敏力:100 

 幸運:1000

 マナ:500/500


 スキルポイント:10

 スキル:〈装着変形〉〈解除〉〈並列思考〉〈憑依〉〈自動修復〉〈自動マナ回復〉

 称号:自我を持つ鎧、転生者



よろい!?俺…鎧になっちまったのか!?』


 種族欄の鎧というワードが衝撃を受けたが、動けず詰んでいる状況だと理解する。


『もしかして…装備者がいないと、一生このままじゃないよな…?』


 これが、俺の始まりだとは知らず。

 

 その時の状況を図書館と思われる場所から、少女の姿をした人物が、机の上で飛び出す絵本を開き、ホログラムで再現された部屋の中の様子を見ていたという。


「あーあ。悪戯イベント失敗かな?何も変化しなかったけど。まあ、いっか!レヴィアがどうにかしてくれると思うしー!今は放っておこうーっと」


 少女は、興味が失せたのか、本を閉じて椅子から立ち上がり、本棚に移動してジーと眺めて、次の本を選んで手に取った。

 元の場所に戻って、机の上に本を置いて座り、本のページに今後関わってくる人物を書き込み始めたという。

 

 この少女が俺をに転生させた張本人だと知るのは、少し先のお話。







 俺の転生前について、少し教えておく。


 名前は、世にも珍しい黒 兜くろ かぶとと言う。

 由来は、武士の家系だったという意味らしいけど、詳しく聞いてないので、よく分からん。

 覚えているのは、30代になる前までだ。

 見た目は、黒髪はボサボサで、眼鏡をかけたヒョロガリ男性だったかな。

 シャツと半ズボンでラフな格好で毎日過ごしていた。


 20代前半の頃の趣味は、スマホやパソコンで、異世界ジャンルを電気書籍で読みまくる毎日だった。

 読むのは大好きだったし、物語を作れる作家にとても憧れていた。

 近場には本屋は無いので、パソコンやスマホのアプリやサイト頼りだったけど。 


 ちなみに俺の1日のルーティーンは、5時半に家を出て、早朝6時にカフェでモーニングメニューを作り続ける。

 10時頃に休憩を挟んだ後は、ランチメニューを作り、13時過ぎに退勤。

 帰宅した後は風呂に入り、その後は趣味に没頭するか、小説を執筆するかの2択だった。

 

 気付く頃には、夜中の2時頃という毎日。

 休日の場合は、自身の疲れを取るために寝っぱなしだったかもしれない。


 執筆した物語は、一作だけ。

 ある夢の中でこれだ!と思ったのがキッカケで、夢で見た内容を忘れない様に、メモ帳を近くのローデスクに置いて、起き上がったらペンを動かした。

 4畳の部屋で、何か月も時間を掛けて投稿して、スクリーンと睨めっこしながら、何度も読み直して、タイピング執筆してたものだ。

 たぶん、今もどこかのサイトに掲載されているかもしれないし、データファイルに入っていると思う。

 物語は…何て書いていたのか、年数が時間が経ちすぎて、思い出せないし覚えていない。 

 自身の記憶を呼び起こしてしまえば、駄作だったと失笑されるかもしれないな。


 そして、俺が20代後半になる頃には、趣味はガラリと変わった。

 趣味が変わった理由・・・それは、ヘットギアを目に覆い被さる機器を頭に着け、仮想空間で遊べるVRRPGが発売され、異世界ゲームにハマってしまったからだ。


 俺がハマったゲームは、魔獣を倒して、武器や防具を新調して成長していくゲームだ。

 仮想空間の身体は、本格的に動かさないといけなかったので、槍使いが一番楽しかった記憶が濃い。

 協力もできるが、基本的にソロ活動をしながら、仮想空間ゲームで没頭出来たし、とても充実した毎日だったと記憶している。


 ちなみに、自分の死に際を知らないから、孤独死か急死だと思う。







 という衝撃と共に、動けない状況に、ステータスから目を背けて閉じてしまうが、周りが暗闇のお陰で、落ち着きを取り戻し冷静になる。


『一旦だけど、ステータスを確認するしかないよな』


 俺はステータスのスキルに注目した。

 スキルの中には、〈変形装着〉〈解除〉〈並列思考〉〈憑依〉〈自動修復〉〈自動マナ回復〉があり、その中で一番気になったのは、〈変形装着〉である。


『〈変形装着〉できるってつーのは、種族を問わないってか?…何でも装備可能なら、発動してみる価値があるかもしれない!』


『〈変形装着〉!』


 試しに発動してみると、意識が持って行かれ、スライムみたいな流動性をびた液体になって、変形を始める。

 意識がはっきりすると、部屋らしき空間に移り変わった。

 俺の予測では、ダンジョン部屋の中だと思っている。

 がある世界なんて、きっと異世界だろうと思ったからだ。

 何に〈変形装備〉したのか把握していなかった俺は、ステータスを再度確認する。


【黒兜】


 種族:鎧 (宝箱)

 レベル:1/50

 耐久力:100/100(+0)

 攻撃力:0(+0)

 防御力:1000(+0)

 魔力:100(+0)

 俊敏力:100(+0)

 幸運:1000(+0)

 マナ:490/500(+0)


 スキルポイント:10

 スキル:〈変形装着〉〈解除〉〈並列思考〉〈憑依〉〈自動修復〉〈自動マナ回復〉

 称号:自我を持つ鎧、転生者



 種族欄にと追加。

 もう一度見ても、の記載がされていた。



『今度は…宝箱!?せめて動けそうな、ミミックにしてくれよぉーーーーー!』



 ガタガタと動けない宝箱に装備してから、冷静に自身を分析した。

 〈変形装着〉を発動できなかったら、更に絶望してたと思う。

 今の姿がまだマシだと思いながら、今の姿はどうなのかと気になり始めたが、鏡や反射するものがない為、自身の姿を見ることはできない。

 〈解除〉を発動したら、鎧の姿で宝箱の中に戻るのが怖い…

 

 俺は今の宝箱姿を想像してみたところ、銀色のレア箱みたいな姿をだろうと想像できてしまった。

 

 イメージと違っていればいいけど…。 







 宝箱に装備した俺は、動かせる部分が無いか探していたのだが…


『動けないよなー。あー駄目駄目だ。宝箱だから無理だ!』


 それから俺は、状況を整理していく。

 暗闇に閉じ込められたままより、景色が変わる方がマシとか、周りを見渡せるとか思っていたら、照らしている光は何だろうと、俺の思考は変わっていく。

 

『この部屋は、明るいなぁ…』


 部屋を見渡すと、壁にランプのような光る石が埋め込まれており、部屋は石造りで扉の方を見ると、両手扉で大きい。


『抜け出すには、あの扉だろうな…頑丈そうだ』


 想像では、階層主のボス部屋から続く報酬部屋か、或いは隠し部屋の可能性がある。 

 今のところ、誰か来ない限りは、開かないだろうと思う。


『ステータスを見る限り、残りはスキルポイントだよな』


 スキルポイントが10と表示されていた。

 異世界ジャンル小説を読み漁った俺には、この世界に存在するスキル取得を行えると踏んでいる。

 ただ、何のスキルが取得できるか、どのくらいポイントを使うかは不明だ。

 

 鎧に関する内容であれば、スキルを取得できる可能性が大いにある。

 鎧の知識に関しては、防御系統や補助しか思いつかない。


『困ったときは前世で培った、ファンタジー小説の知識を使ってみるとしよう!』


 スキルポイント10で取得できそうなスキルをイメージする。

 慎重に行かなければ、長い期間をこの部屋で過ごす事になるのは明白。

 俺は色々なスキル想像をしつつ、スキルポイントをどのくらい使うかわからない以上、慎重に考え込む。


『まず、移動がどうしようもないから、〈浮遊〉は取りたい。あとは、エネミーを自分の駒にして、動かせる系のスキルがいいかもな』


 その結果、〈マリオネット〉という、操り人形にするスキルが思い浮ぶ。

 対象が魔物や人で、スキルに掛った相手を意のままに操る事が可能だろう。

 自分の主、或いは依り代を見つけた後も役に立ちそうだからという理由で、スキル取得を行ってみる。


『スキル取得、〈マリオネット〉にスキルポイントを使用!』


 自身の中から失った疲労感と増えた感覚があった。

 簡単に言うと、少しの倦怠感を感じたぐらい。

 ステータスを確認すると、スキルポイント5とマナが減っており、スキル欄に目線を移して確認すると、無事に〈マリオネット〉が取得していた。


『残りポイントがあるなら、スキル取得、〈浮遊〉〈マップ探知〉!』


 倦怠感を感じたので、スキル取得に成功したようだ。

 ステータスを再度確認すると、スキルポイントは、0と底を突いたのだが、取得した3つのスキルで、考えた作戦がある。


 習得した〈マリオネット〉でエネミーが、自身のスキル発動範囲内に入れば、〈従魔契約〉と違って、エネミーを強制的に味方にできるし、〈浮遊〉で空中移動できれば将来的に楽だと考えた。

 その上、〈マップ探知〉を使えば、エネミーを簡単に探し出せる。

 もし、空中からの視界が悪かったら、〈マリオネット〉に掛るエネミーに憑依すれば良いと思ってる。



 『最初は、スキルの確認からだ!』

 


 その後、数十分も経たない内に俺は、『翼のない空飛ぶ宝箱…』と呟く事になったという。

 



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