第2話 ココロの変化
目が覚めたら女の子になっているなんてどこの世界の話しなの?
何か変なもの食べたわけでもないし願ったりしたわけでもない。
原因は一体……。
僕が混乱していると
「ん……?
「僕だよ。琉夏だよっ」
「琉夏? 確かに似ているがあいつは男だぞ」
「そうなんだけど……えっと―――」
突然、女の子になりましたなんて言われても普通は信じない。
しかし今は信じて欲しい。いや、きっと信じてくれる。
僕は冬李に色々説明や僕自身だって証拠を見せた。
小学生の頃の思い出や中学の時の出来事、ついさっきまで一緒に遊んだゲームの話し等々。
「うむ、確かにそのことを知っているのは俺と琉夏だけだな。琉夏が誰かに言ったとは思えない」
「やっと信じてくれたぁ……」
「しかし琉夏が女になるなんてな。漫画とかだと宇宙人に改造されたとか薬を飲まされたとかだよな。でも全く原因が分からないと?」
「うん、全然心当たり無いんだよね。それに来週は学校もあるしどうしよう……」
「取り敢えずあいつ呼んでみるか? こういう時、変に頼りになるし女の事は女に聞けってな」
「あいつ? ってもしかして―――」
冬李は僕たちとは幼馴染の
現在時刻は午前4時になろうとしていた。小春は早朝の電話に怒っている様だ。
冬李は僕の身に起きた事情を説明してくれた。
しばらくするとボストンバッグを持った小春が部屋にやって来た。
「持ってきたわー! それで琉夏が女の子になったって本当!?」
「はい、僕が琉夏です……」
「きゃわいい! 色々服持ってきたからさっそく着てみましょっ!」
「服って女の子の!? てか今ここで!?」
「そうに決まっているでしょ? あっ、冬李は出て行ってね」
「ここ俺の部屋なんですけど……」
「覗き魔変態筋肉になりたいなら私も止めないけど?」
「すぐに出ます!」
冬李は逃げるかのように部屋から出て行った。
小春は改めて女の子になった僕の姿をじっくり見た。
まじまじ見られるとなんだか恥ずかしい。
「本当に女の子なんだね。いつもより髪長いし、それに胸も……大きいわね……」
「そうかな? でも小春は良く信じたね。僕がその……女の子になったって」
「だってあの冬李が態々あんな時間に電話で私に嘘をつく理由無いでしょ? もし嘘だったら―――ね?」
「まぁ確かに……。それでどんな服持ってきたの?」
「ふふふ……じゃーん!」
小春はボストンバッグからたくさんの服を取り出した。
元男の僕でもわかる。どれも可愛らしい服の数々。
どう見てもあまり着て無さそうな物やタグが付いたままの物もある。
僕はその中から適当なのに着替えようと手に取るとそれを小春が止めた。
「ちょっと待って。着替える前にこれ履いてね」
小春が取り出したのはタグが付いたままの女性物のパンツと布で出来たブラジャーだった。
確かに今履いているのは男性用のボクサーパンツだ。
少し緩いが脱げるほどではない。
「この壁は超えちゃだめだと思うんだけど」
「なんで? 今女の子なんだし男物履いてる方が変だと思うけど」
「確かにそうだけど……」
「ほら早く履き替えて」
僕は一線を越え何かを失った気がした。
心の中の“男”が音を立てて崩れていく……。
女性物のパンツは面積が少なく落ち着かない。それにこの布で出来たブラジャーはなんだか胸を締め付けられているようで落ち着かない。
そんなの事をお構いなしに小春は服を選び始めた。
「ん~……まずはこれね。私が昔着ていた服なんだけどどうかな? たぶんサイズ合うと思うけど」
小春は一着の服を選び僕に渡してきた。
その服は確かに昔見たことあるような気がする。
僕はその服に着替えた。
「どう? きつくない?」
「ちょっと胸がきついかも」
丈は合うが胸元がきつく服が若干伸びてしまっている。
動くにはちょっと苦しいかもしれない。
「やっぱり上は買わないと厳しいわね……」
「ねぇ、スカート短くない? スースーして落ち着かない……」
「その内慣れるわ。私服とかはあげられるけど流石にブラは買わないとダメみたいね」
「えっ? これはダメなの?」
「それはスポーツブラよ。後でサイズに合った普通のを買いに行きましょ」
「いや、でも……」
「行くのよ」
「……はい」
強制的に下着を買いに行くことになった。怒らせると怖いんだよね。
その後も僕は着せか人形のように色々な服を着せられた。
小春はこの緊急事態を楽しんでいるみたいだ。
ほぼ全ての服を着せて満足したのか小春は「じゃぁ12時に駅前集合ね」と言って一旦家に帰って行った。
入れ替わりに冬李が部屋に戻って来た。
「ようやく帰ったか。てか何だこの服の散らかり様は……まぁ大体は察したが」
「たぶん思っている通りだよ。あっ、この後12時に服買いに行くことになった」
「あいつホント勝手だよな。まぁそれに助けられているんだが。時間までゲームでもやって気を紛らわせるか?」
「そうだね」
僕は約束の時間まで冬李の家で時間を潰した。
この状態で家に帰れるわけないがいずれ何とかしないと。
お互い別々の漫画を読んでいると急に尿意を感じた。
「ねぇ、冬李」
「なんだ?」
「トイレ行きたいんだけど」
「行って来れば?」
「その、女の子ってどうやってするのかなって……」
「いやいや、俺が分かるわけねぇだろ。取り敢えず座ってすればいいんじゃね?」
「だよね。……もう我慢できない! 行ってくる」
僕は急いでトイレに駆け込み、目を瞑ながらパンツを脱ぎ便座に座り用を足した。
感覚で分かるがやっぱりアレが無い。変な感じだ。
「(はぁ……)」
なんだか罪悪感とさらに何かを失った気がする。
その後、カップ麺で昼食を済ました僕は待ち合わせ場所に向かうことにした。
「ご飯ありがとう。それじゃぁ時間だから行ってくるね」
「おぉ、いってらー」
小春が用意したサンダル急いで駅前に行くとすでに小春が待っていた。
そういえば小春と二人きりで出かけるのなんて何年ぶりだろう?
小学生の頃はよく遊んだけど中学生くらいの頃からは二人では遊ばなくなったっけ。
「小春、おまたせ」
「あっ、ちゃんと着てきたわね」
「仕方ないでしょ。僕の着てた服はサイズが合わないんだし……」
「それじゃ買いに行きましょう」
小春に手を引っ張られ駅前にあるデパートへ向かった。
建物に入るとなんだか視線が気になる。
やっぱり何か変なのかな?
僕は小春の後ろに隠れるかのようにして歩いた。
デパート内を移動していると小春はある店舗の前で立ち止まった。
「まずはこのお店からね」
「えっ、ここって」
デパートに入って一目散に向かったお店はランジェリーショップだった。
女性物の下着がたくさん売っていて男子禁制って感じの場所だ。
「さすがにまずいよ」
「大丈夫よ。琉夏は今、女の子なんだし」
「そうだけど……」
「ほら、入るよ~」
店内に入ると周りは当たり前だが下着しか売っていない。
目のやり場に困っていると小春はすぐに近くにいた女性店員を呼んだ。
「すみません。この子のサイズ測定お願いします。それと着け方も」
「かしこまりました。それではこちらへどうぞ」
「あっ、はい」
僕は女性店員に連れられ少し広い試着室へ向かった。
試着室に入るり服を脱ぎスポーツブラを脱いだ。なんだか恥ずかしい。
「失礼しますね」
「ひゃっ!」
女性店員はメジャーで胸のサイズを測り始めた。
2ヵ所ほど測られた後、女性店員は3種類ほどのブラジャーを持ってきた。
「サイズはこちらになりますね。どれか着けてみますか?」
「はい。えっと……これで」
僕は一番シンプルの物を選んだ。
その後女性店員は付け方を教えてくれた。
ただ付けるだけではなくコツや綺麗にするポイントなど。
鏡にはブラジャーをした自分の姿が写っている。
その姿はどう見ても女の子にしか見えない。
このまま受け入れていくしかないのだろうか?
僕は試着した物とさらに数着の下着を購入して足早にランジェリーショップを出た。
「もう少しゆっくり選べばいいのに」
「女の子になったって言ってもこういう場所は無理。何か失っていく気がする……」
「慣れたらまた来ましょうね」
「うぅ……」
遊ばれている気がするが小春なりに気を使っているみたい。
その後、小春は僕を服屋やアクセサリーショップに連れて行った。
すぐに買って帰るつもりだったが気が付いたら数時間経っていた。
「たくさん買ったわね。琉夏もなんだかんだで結構買っているし」
「途中からなんか楽しくてつい」
最初はあまり気分じゃなかったけど段々楽しくなって気が付いたら色々な服を買っていた。
女の子が服やアクセサリーを好きな理由が何だか少し分かったかもしれない。
最初はこのまま心も女の子になっていくのが不安だったけど冬李と小春はいつもと同じ接し方をしてくれるのが嬉しかった。
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