急に見えちゃうと困るんですが…

西野 涼

第1話


 今日も一日が終わった。


 毎日同じような生活をしているとふと考えてしまうことがある。


「まるで死ぬために生きているみたいだ」


 死にたい訳ではなく、なんのために生きているんだろうと。


 生きるには情熱がなく、なんの夢もなく。


 これでは生きる屍だと。


 そんなふうに考えこむなんてストレスが溜まっているのだろうか。


 ふと気づいたら家への帰り道では無い場所を歩いていた。


 しまったな、考え事していてどうやら道を間違えたらしい。

 幸いそんなに遠くもなく帰れそうではある。


 目の前の公園を抜けたらどうやら近道みたいだ。


 公園へと足を踏み入れたら空気が変わった。

 淀んだ…というか明らかに良くないモノが居そうな。


 そうだ、おかしい。

 たとえ夜だとしてももっと人通りがあってもおかしくないのに、何故ここはこんなにも静かなのだろうか。




「にゃ〜ん」



 色んな事を考えていると足元で黒猫が擦り寄って来ていた。

 いつのまに。


 毛並みも綺麗で飼い猫なのだろうか。


 いやそんなことより早くここから離れた方がいい気がする。

 猫を抱き上げ公園の入口へと足を向けると後ろから声が聞こえた。


““おまえにきめた””


 男とも女とも子供とも年寄りとも言えないそんな声で明らかに私に声をかけられたような気がして後ろを振り返ろうとしたら、ものすごく強い風に押されよろめいてしまった。


 その拍子に黒猫が驚いたのか飛び降りてしまって少し前を走っている。


 改めて後ろを振り返るとそこにはやはり何もいない。


 何だったんだろう。


 とりあえず今日のところは早く帰って寝よう。

 黒猫の飼い主が見つかるまでは家で面倒をみよう。


 また黒猫を抱き上げて家へと帰る途中で猫缶を買って。


 今度は何もなく家へと無事に帰れて、先程の事など忘れて就寝した。




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