第38話 聖夜のゲームコラボ、大物集まる

 チャラウェイの人脈が謎だ……!

 いや、彼ほどの人格者でベテランなら、名だたる一流配信者と仲が良くてもおかしくはない……。


 というか八咫烏もバトラも、自分の所属する箱のクリスマスだろう。

 こんなところに参加してていいの?

 えっ、自分の配信もちゃんと流してる?

 そうですか。


「いやー、緊張するー。これはあれかなー? 接待したほうがいい? やっぱり後輩としてさー」


『うおー! 初手から口プロレスを仕掛けていく主様! イケイケゴーゴー!』


『あらやるじゃないスパイスちゃん! バトラも熱くなっちゃうなあ。ところで後ろで聞こえる声が噂の魔導書ちゃん? ねえフロータちゃんASMRやってみない? 絶対に才能あると思うわ』


『えっ、フロータがASMRデビューですか!?』


「やめてくーださい! うちの魔導書を誘惑して自我を持たせようとするの禁止ー!!」


『ははは、賑やかだねー。争え、もっと争え。その間に僕がトップになる』


『気をつけろよ、八咫烏の座右の銘は漁夫の利と濡れ手で粟だからな!』


 大変賑やかなゲームイベントが始まった。

 とは言っても、半分は雑談でワイワイと盛り上がり、リスナーを楽しませるんだけど。


 なお、今回の配信はちゃんとゲーム会社から許可をもらっています。

 大人の世界は段取りが九割!!


『ウグワーッ! ぼ、僕が溜めに溜めたコインが平均的に均されたーっ!! 鬼! 悪魔! メスガキー!!』


「ふーん、八咫烏さんもそんな悲鳴を出すんだねえー」


『スパイス、末恐ろしい幼女だぜ……!!』


『あら、私ミニゲーム引いちゃった。私VS三人! おほほほほ! まとめてかかってらっしゃい!!』


「うおおおおおやるぞやるぞやるぞ」


『遺恨を忘れて共闘だ! それはそうとスパイスちゃん覚えてろよ!!』


『遺恨忘れてねえじゃん!!』


 ミニゲームで男ども三人揃って、「『『ウグワーッ!?」』』とバトラに蹴散らされたりなどした。

 全然雑談してないじゃん!!


 画面の右側へ縦一列で並んだスパイスたちの顔の画面。

 みんなずっと叫んだり吠えたり笑ったりしてる。

 頭の中にはゲームしかないね!


 うおおおおおお負けるか負けるか負けるか!!


『結果発表~! 一位は熾天使バトラ~!』


『いえーい、どうもどうもー!』


「くそー負けたー!! 八咫烏パイセンが不甲斐ないばかりに!」


『僕らが足を引っ張り合っている間に!! 次回はスパイスちゃんを真っ先に叩き潰す!』


『初対面なのになんでお前らそんなに仲良いんだよ』


 八咫烏とも相性はいいのかもしれない……。

 2時間半にも及ぶ激闘が終焉を迎え、クリスマスの夜が終わる。


 こんなクリスマスで本当に良かったのか……!?


『いやあー、でもバトラ感心しちゃったなー。あんな昼間にすっごいことしてて、夜はゲームできるとか! ちゃんとご飯食べたりできてる?』


「あっ、はーい! 夜は後輩と焼き肉食べに行ったよ! おいしかった~」


『ビールと合うもんねー』


「スパイスはハイボール派かなー」


※『えっ!!』『そんな、俺たちのスパイスちゃんがおじさんみたいなことを!』『おじさんだろw!!』『スパイスちゃんは幼女だろ!!』


「あっ! お肉どもの夢を壊しちゃう! えへへ、実はジュースでした」


※『やっぱりね^^』『それでこそスパイスちゃんだ^^』『かわいい^^』


「ありがとー。よく訓練されたお肉どもだよ」


『うんうん、リスナーとなかよしでいいねえ~。ちなみに今回のゲーム、バトラはASMRを封印していた。これがどういう意味なのか分かるかね……?』


『ま、まさか手加減して僕らを蹴散らした!? なんて女だ』


『ヒャッハー! 強すぎるぜぇーっ! だが! 必ずや俺はリベンジするからなぁーっ!!』


 大盛りあがりのうちに、クリスマスコラボ配信は終わった。

 ここからはスパイスの雑談に移りますよー。


「みんなお疲れさまー。コラボ、大物ばっかりだったねー。スパイスは緊張しちゃったよー」


※『いきなりメスガキをぶっこんでいくスタイルだったのにw』『心臓が強い』『そりゃあ、昼間に大物のデーモンをぶっ倒してるからなあ』『あれすごかった!』


「炎の魔女ねー! 強かったねー。難燃性グッズが無ければ即死だった!」


※『いやいやいやw』『難燃性グッズの威力凄かったな……』『ハイウェイが燃え落ちたとか言うニュースがちょっと流れてたでしょ』『あれ、スパイスちゃんと戦ったデーモン関係?』『よく勝ったなあ』


「ふふふー、戦いとは段取り。一通り段取りが終わってたら、勝負なんてのは九割決まってるのだよー」


 俺の元々の仕事もそんなもんだったしな。

 段取り無しで次々仕事を押し込んでくる無能な上司がいたから、苦しんでいたのだ!

 あいつが俺にとってのラスボスだったな。自分でも仕事さばききれなくて耳から血を出してぶっ倒れてたけど。


 今は自らの裁量で仕事をどうにでもできる!

 自由業最高ー!!


『主様、主様! せっかくですから!』


「あっ、新衣装? いいねいいね」


※『新衣装!?』『そんなものがいつの間に……』『あっ、魔導書を回収してパワーアップイベント!?』『そう言えばそんな設定あったなあ』


 思い出していただけただろうか。


「じゃあ年明けに新衣装やりまーす! ちょっとまってね。ちょっぱやで宣伝用のサムネ作るから」


 撮影をちょっとだけ止めて……。


「メタモルフォーゼスパイス! イグナイト!」


『ん焼結~ッ』


※『野太い声がしたんだけどw!』『スパイスちゃんの部屋に男が!?』『誰だ!?』


『炎の魔導書イグナイトは可愛くない声なんですよー。ごめんねー』


※『なんだってw』『幻滅しました、八咫烏のファンやめます』『声色から分かるキャラの濃さよ』


「はいはーい、フロッピー、いい感じで撮影して。シルエットにしてね?」


『かしこまりました。撮りました』


「はやーい! どれどれ? うんうん、いいじゃんいいじゃん! じゃあアップ! ぽちっとな」


 ドーンとアップされる、新衣装お披露目決定! のサムネイル。

 コメント欄がワーッと沸いた。


※『ちょっとだけシルエットから外れてる髪とかスカートがオレンジ色!』『新衣装楽しみー!!』『今よりもっとフリフリじゃん!』


「ふふふー、年明けを刮目して待て! スパイス、大晦日からお正月三が日はお休みさせてもらいますんで……」


 人気が出てきたら、休めなくなりそうだからな。





 

 

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