弔花
蘇芳
弔花 前編
私が知る博士は、祖国のために人生を捧げた人だった。祖国の命令で、新しい技術を得るために隣国に入り、その土地で学び続けた。
そんな博士は自らの知識と新しい学びを活かして1体の人型ロボットを完成させた。それが私、〈
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〈
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博士はよく私に話してくれた。祖国は水も自然も豊かで、また、春になると色とりどりの花が咲き乱れた、と。そんな美しい国が博士は大好きでたまらなかった。
だが、ここ最近、祖国と隣国は緊張状態になった。祖国の豊かな資源を欲する隣国が戦争を起こそうと計画し、それを知った祖国は戦争が起きてもいいように武装していた。いつ戦争が起きてもおかしくない状況だった。
そんな中、祖国は隣国から技術を得るために博士を派遣した。全ては「平和のため」だと言われた博士はその言葉を一途に信じ、祖国を出た。
博士はよく〈
「君はきっと、平和に役立つ存在だ」
博士は〈
博士は〈
いよいよ、博士が〈
その時、テレビからニュースが聞こえた。
たったいま、我国が隣国にミサイルを放ちました。
隣国の中心部は壊滅し……
ニュースを聞いた博士はテレビに釘付けになり、動かなくなった。それから灰色の映像がずっと流れ続けていた。博士はそれをずっと見ていた。
周りのものを片付け終わった〈
博士はテレビに釘付けになったまま動かなかった。毎日灰色の映像が流れるのを、博士はずっと眺めていた。
「博士、食事です」
博士は何も答えず、目から水滴を流していた。
「僕は悲しい……祖国が消えて……あの美しかった祖国が……」
博士はかすれる声で続けた。
「祖国に帰りたい……」
博士は毎日、灰色の映像を見続けていた。〈
そんなある日、博士は全く動かなくなった。
「博士、起きてください」
〈
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