あの子、

れいとうきりみ

あの子、

 古くさびれた長屋から痣だらけの少女が出てきました。その少女はよろめきながら裸足で歩き、やがて河原に着きました。するとごつごつの石の上にしゃがみ込みました。少女の陰で薄暗くなった石に水滴が落ち、表面を湿らせました。

 少女は薄い石を拾い上げ、地面に置きました。また薄い石を拾って、先ほどの石の上に置きました。しばらくこれを繰り返していると、やがていじめっ子がやってきて、石の塔を崩してしまうのでした。

 少女は泣きながら、また石を積み始めました。いじめっ子は面白がって少女と同じことを始めましたが、自分の塔より少女の塔が高いとすぐに崩してしまいます。これを数回ほど繰り返し、飽きたのかいじめっ子は帰ってゆきました。

 少女は安心したと同時に、今まで積み上げていた塔を自分の手で崩しました。そして、川に体を投げました。少女は泳ごうとはせず、流れに乗って下流へと向かうのでした。

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あの子、 れいとうきりみ @Hiyori-Haruka

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