第14話街の夜店
教会からは空間転移の魔法で、街の入口まで飛んだ
王都の中には主要箇所に転移用の魔法陣が敷かれていて、魔法で自由に移動できるらしい。使えるのは、もちろん一部の要人だけだ
夜の街の中を歩くのは初めてだ
そもそも外に出ること自体がほぼないので、期待と不安が入り交じっている
昔、お姉様と歩いた気がしないでもない…その辺の記憶は曖昧だ
記憶が薄らいでいるだけなのか、私がこの国に来てから今まで、一部だけポッカリあいた空白の記憶……
「体調はどうだ?」
「平気です。ありがとうございます」
夜の街は、夜店で賑わっていた
中心に進むと人混みもすごい
美味しそうな食べ物の店や、可愛い雑貨屋さん、アクセサリーのお店や、お洋服のお店…あちこちキョロキョロしながら歩いていると、人にぶつかり
「あっっ……すみません!」
人の流れに引かれる……
歩き慣れないので、向かいから来る人を上手く避けられない
「離れるな」
そう言って、手をグッと引かれ、懐に抱き寄せられる
「は……はい……」
返事がぎこちなくなるのは許して欲しい
ドキドキしてしまう……
「何か見たいものはあるか?」
「うーんと………」
私には全てが真新しくて、そもそも連れ出された身なので、目的がある訳ではなく…
「みさきはアクセサリーを身につけないのか?」
「はい。宝飾品に使われている鉱石は魔力の影響を受けやすいので、私には扱いが難しくって…」
「そうか…。確かに魔力の置換にも鉱石が一番相性がいい。」
「へぇ~。」
会話が終わった……。
こんな時、どんな話をすれば良いのか……
しばらくすると、夜店で賑わっている大通りの脇道を入ったところのお店に入った
カラーン
扉を開けると、取り付けてあるベルが音を鳴らす
「いらっしゃい」
店主らしき女性が声をかける
カイリ殿下はスタスタと細工の細やかなアクセサリーが沢山並んだ店内を見て回る
「どちらが良い?」
飾られたネックレスと、ピアスを眺めながら聞いてくる
「いえ。あの、どちらも………」
とてもきらびやかで、見ていてうっとりするような美しい細工が施されているが、結局私には縁のない品物だ
「本来は肌に触れているものが望ましいが…」
そう言って指輪をちらりと見やる
「あの…私何も…」
「好みはあるか?」
話はどんどん進んでいく
「いえ………」
「そうか」
短く告げると、店を出た
そのまま大通りの店を見て歩き、夜店通りの端に来る頃には、疲れてクタクタだった
カイリ陛下は私の様子をチラリと見ると、私の頬に触れた。冷たい手が優しく頬をなぞる
「そろそろ帰るか」
「……はい」
私の初めてのお出かけは無事終了した
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