第32話



百鬼きなりさん!命令違反ですよ!」



それでも僕は言い放つ。

同じ言葉を繰り返す。



「待機だ」


「しかし!このままでは、」


「責任は全て僕が取る。

君たちに責任は全く行かないように動く。

だから、──待機だ」



僕は意見を変えない。

何度言われても待機命令を出す。



「そういう話ではありません!

わかっているでしょう、ルナの処刑は、」


「くどい。知ってて言ってる。待機だ」



ルナの処刑は残酷だ。

そして冷酷無慈悲。


許可がない時にたった一言。

たとえばルナの組員の名前をたった一回外で口に出しただけでも、その処刑はまぬがれはしない。



「……待機だ」


「…っ」



隊員達が息を飲む。

僕は視線鋭く前を睨む。


裏の裏をつかれて本当に指示された場所に保護対象がいて、間に合わなかったら。

その時僕は…。


そうしてしばらく緊張状態が続いたとき。

僕はフッと笑った。



「指揮官?」


「問題ない。

僕、"こういう勘"外れたことないから」


「え?」



その時だった。






──ヴーヴー…





スマホが震えた。


僕はポケットからそれを取り出した。

隊員たちが息を飲んでそれを見ている。


着信は、秋信あきのから。




「こちら一番隊」



僕はいつも通りの声で応答した。


自分の首裏に意識がいく。

ルナは、組員全員にGPSが着いている。

それも体内に。


外すことのできないそれで居場所は常に把握されている。



つまり、僕たちが移動をしていないのも。

すでにバレている。


僕が待機命令を出したのも、どんな方法かわからないがすでに知られているだろう。




秋信の後ろから騒ぎが聞こえる。


秋信が率いているのは第二部隊。

先に指示の場所へ着いたようだ。


先にも何も、僕たちは向かっていないのだけれど。



百鬼きなりさん』



秋信が、告げる。








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