第28話
「今日も逃げられたぁ…。くぅ…っ」
僕は第一部隊の訓練を終えたところだった。
周りには屍鬼累々の仲間たち。
その上に座って、思わずポロリと痛切な声をあげた。
今日の紅との
しかし目と目が会った瞬間、
早すぎる。
この前会った時以来、徹底的に避けられている。
なぜだ。
なぜなんだ。
そんなに無理か?
生理的に無理?
僕の何がダメだというんだ。
言ってくれなければわかんないよ。
「うっ…。指揮官、…」
僕の椅子(気絶していた隊員)がうめき声をあげて起きた。
僕はそれをちらりと
「ねぇ」
「は、はい…」
「僕のどこが生理的に受け付けないんだと思う?」
「…………」
この隊員は、己の指揮官に対してそんな理由言えるはずもなく。
彼は押し黙った。
あなたの戦闘自体が見ていて気持ちが悪いです。
仲間だから
緊迫した戦場で狂ったように笑い声をあげているのはあなただけです。
…なんて正直に言えるはずもなく。
隊員は青ざめた顔で"さ、さぁ…。俺にはわかりません…"とだけ答えた。
「はぁ…。だよねぇ、わかんないよねぇ。
ひどいなぁ。
「はあ…」
「はあ、じゃないんだよ。
っていうか隙ありすぎ。
君、右脇スカスカだったよ。
訓練でそうなら本番もそうなる。癖になってる。
前回も言ったのに変わってない。
死ぬよ?」
僕は立ち上がってズボンの埃を叩いた。
そうして一人一人に指摘をしていく。
これは訓練。
強くなってもらわなければただの足手まといだ。
足を引っ張っても引っ張られても死ぬ。
隙がわずかでもあれば、そこは絶対狙われる。
自分から隙を使って誘導するのとは違うのだ。
作戦と癖は全くの別物。
実戦に役に立たないのなら、訓練生に戻った方がいいんじゃない?とすら思う。
まぁ、訓練生になんて戻してもらえないだろうが。何せ人材不足だ。
僕が入隊する前からした時まで──つまり一年前以上所属している隊員はいない。
この一年で丸ごと入れ替わっている。
それも何度も。
みんな死んだ。
僕だけが生きている。
僕は病気や寿命なんかで死にたくない。
戦闘中に死にたい。
木田に、"僕が女でガキだからみんなに守られて今まで生きてるのか"と。
ルナに入って3ヶ月ほど経った頃に聞いたことがある。
不服だった。
遠慮されて生かされてるなら。
そう訊いた僕に、木田は首を振った。
──お前がそうとうとち狂ってるから生き残ってんだよ。誰もお前を
そのあとこうも続けた。
──むしろお前は女でガキだから構われてない。周りから戦力として見られてねぇんだわ。
それなのに1番首とってくるのはお前だ。
気に食わなくて邪魔する奴はいても、
それを聞いて僕は狂喜乱舞した。
もっと邪魔してくれていいんだよ!?と言ったら木田に全力で引かれた。
それから僕の邪魔をしてきた当時の隊員たちが死んでいって、いつの間にかまた隊員がまるごと変わっていた。
新しい隊員たちは、みんな第一部隊入隊当初は女でガキの僕に不満そうな顔をする。
けれど。
一度出撃すれば、みんな黙り込んだ。
そうして僕は逆に持ち上げられるようになったのである。
訓練だって、彼らは従順に遂行する。
早く僕より強くなって殺し合おうよと笑顔で告げれば、隊員はみんな顔を
「はぁ〜あ。紅に会いたいなぁ」
僕は辺りを見渡した。
みんな弱い。
戦場の紅を思い出す。
誰よりもあの場を圧倒していた彼を。
恋は難しい。
こんなに好きなのに、なぜ伝わらないのか。
いや。
伝わりすぎてドン引きされているのか?
どうすればいいんだ…と僕は頭を抱えた。
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