第12話

「…今日はなんの仕事だ」



…やっと。

やっと声が聞けた!


それだけで胸がいっぱいになる。


低くて、深みのある声。

これが戦場で黙々と敵をさばいていた人の声なのかと思うと、また興奮する。



「……ん?仕事?」


「………」



彼はまた視線を逸らした。

窓の外なんて興味ないだろうに、ぼんやりと。


いやいや今はそんなことよりも、いや彼のことはなんでも見ていたいけれど。


いやいや、……仕事?



「待っっって。僕本当にナンパしに来たんだよ」


「…………」



反応が帰ってこないのでなんとも言えないが、こちらは弁解したい。

本当にナンパに来たのだから。


そのためにあんなに木田に頼み込んだのだ。


一目惚れの彼のために。



「ね、ね。お兄さん。

名前教えてよ」


「………」



つい、と視線がまた僕に向く。


それが嬉しくて、にこにこが止められない。

胸のワクワクも、止まらない。



「……聞いてないのか」


「何にも教えてくれなくてさぁ。

だからさ。ね、ね。

教えてよ。君の名前は何?」


「………」



つい、とまた彼の視線が窓に向く。

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