第10話

まぁそんなこんなで僕はルナにいる。


15歳だった僕1人に、

屍鬼累々になった第二部隊に、

当時の木田は頭を抱えてたのは覚えてる。



僕は異例の速さで昇進した。

17歳で指揮官まで上り詰めたのだ。


打診があったのは第二部隊指揮官。

でも僕は断った。

第二部隊の指揮官は指示がメインであって戦闘は後方からばかりしかできない。


強いやつに会えるのは、現場に一番最初に足を踏み入れた人物の特権だ。

だから、僕は第一部隊なら指揮官になると伝えた。



──第一部隊の指揮官は1年もたねぇぞ。



木田の言葉だ。

それはつまり、一年持たずに死ぬくらい、第一部隊は人の移り変わりが激しいということ。


でもそれで僕は満足だった。

それから今の僕がいる。



そして僕は今、18歳。

1年経ってもまだ生きている。

第一部隊の指揮官として。








「ねぇー。なんであの人のこと教えてくれないのさ」



僕は拗ねていた。

どうして教えてくれないのか。


僕と木田さんの仲じゃないですか〜と言うと、

所詮しょせん"そんな"関係でしかないだろ、と木田が返す。



「はぁ〜うっせぇ。仕事にならねぇ」


「一目惚れだよ?

生まれてから今まで戦闘にしかホの字がなかった僕が!一目惚れ!だよ!

応援してくれてもいいじゃん!」


「お前ほんと、うるせぇ。

わかったから黙れ」



ようやく居場所を吐く気になったらしい。


木田はスマホを取り出しカタカタと操作する。

そしてどこかにコールし始めた。



「俺だ。…あー、いや。まぁ、仕事の依頼。

いつもの場所で。…いや、こっちも1人だ。

……いや、今日は情報もいらない。1人相手して欲しい奴がいる。…あぁー話すだけでいい。

金はいつも通りに」



そう言うと、木田は電話を切った。

僕はワクワクして、キラキラとそれを見ていた。


木田がまたはぁ、とため息をつく。

本日何度目だろうか。

ハゲるぞ?白髪生えてくるよ?



「……連絡取った。

一目惚れっつうなら、見れば相手のことわかるよな?」


「わかるわかる!忘れたことないもん!」


「カフェ『樹々じゅじゅ』。あとは自分で調べろ」



そう言って木田は手を振った。

僕はるんるんで最高司令官室を出る。


やっと会えるんだ。


楽しみで楽しみで、

おかしくなりそう。






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