アフター・ザ・ダークカーニヴァル

アフター・ザ・ダークカーニヴァル

　群青色の夜空が、瞳からわたしを吸い尽くしてゆく。

　とても綺麗だ。

　静かに顔をふせれば、散らかった景色が窓硝子に反射して映った。

　両手をだらりと垂らす。

　わずかに痕を残していた体温が、はかなく消えた。

「ううっ……」

　足もとからのノイズを背中で受け止める。

　定刻よりも少し早めのハロウィンパーティーは、夕闇よりもまえに終わったはずだった。

　でもそれは、わたしの勘違い。

　邪悪な魔女は、まだ生きていた。

「た……す……け、て…………」

　完璧だった静寂が、微弱なノイズに汚染される。

　割れたカボチャが甘い煙りを吐き出すと、狂った懐中時計の秒針が逆戻りで動きだす。

　じゅう、きゅう、はち、なな……

　ろく、ごぉ、よん、さん……

　こぼれ堕ちた苺味のキャンディを踏んでも、カウントダウンは止まらない。

「や、やめ……来ないで……！」

　にぃ……いち……ぜろ……

　真っ逆さまに伸びるカラフルな包帯をよけながら、

　盛大に鳴らされたクラッカーを浴びながら、

　吸い込まれるようにして、狼少女はいたずらに噛みつく。

「かっ、コォォォ……ぐる……じぃ……」

　濡れたビー玉を上からのぞき込む。

　脈打つビートが、心地よいリズムへと変わる。

「なん……で…………あな……た……誰…………」

　水滴が流れて、光が消える。

　ノイズが消えると、今度は耳鳴りがした。

　邪悪な魔女は、こうして死んだ。

　邪悪な魔女は、あなたが懲らしめた。

　顔を上げて外の景色を見る。

　そこにはもう、なにもない。

　群青色だった夜空は、すっかりと黒く塗り潰されていた。