嘘が脱げない

国塚

第1話 私という人間は

天気が良いと不安になる。

約束した時間にいつも遅れる。

予約はあらかじめ台本を作る。

電話は鳴り止むのを待って、番号を調べる。

メッセージは返信のタイミングを逃したまま、そのうち相手に二度と会わないことを願いだす。


 私という人間は本当にどうしようもない奴なんだ。嫌なことからすぐ逃げて、無視して、とにかく視界にいれないようにしてどうにか対処できたような気になっているような。

そのくせ、そういった自分の醜い部分を人に知られたくない。ずっと優しくて、良い人だと思われていたい。だから隠す。できるだけ取り繕う。自己愛の塊だ。


 最初から誰とも関わらなければいい、と思ったこともあった。だが生きていれば嫌でも関わりは生まれる。その度に、良い人であろうとしてしまう。醜い部分を誤魔化してしまう。きっとそういう性分なんだ。


 隠して隠して、家族にでさえ嘘を吐き続けている。苦しい、どうしてもありのままを話せない。この醜さをさらけ出すことに恐怖を感じて、口が勝手にそれらしい背景を創作してしまう。だから。


 ここに、嘘偽りのない自分自身を残しておこうと思う。

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